パレッタ
まだまだ先が長く、どんどんと口数がみんな減っていき。黙々と歩き続けた。
周りはもう暗い。でも明かり遠くに見えてきた。
ネルが言っていた輸送車が動く姿も見える。自分たちより倍近く高い箱、中には人が入っているのが窓から見え、走るより少し早いくらいの速度で動いている。あれに乗れたら確かに楽そうである。
ローズはまだまだ元気そうで、常に疲れたいるネルの手を引きながら歩いている。コハクは疲れが出てきており、ずっと静かに歩いている。
「あれが『パレッタ』?」
「はい、そうですね」
「やったー、やっと着くんだ。早く行きましょうよネル様」
「引っ張るのやめてー、あなたは本当に元気ですね」
「ほんとっすよ」
ようやく『パレッタ』に到着した。
人通りがまばら、光の力の街頭で明るく照らしているため、薄暗さはあるが『ゴールディ』よりは明るく感じる。
建物はどこもかしこもお店ばかりで常に買い物している様子が見える。
ネルに先導してもらい、ある程度町中に入ったところで足が止まった。
「それでは、私はあちらで宿の予約を取っておきます。それまで町を見回ってください。特にクロウくんは面白い物が見れると思いますのでよーく見ていてくださいね」
名指しですごい含みのあることを言われた。
「何かあるんですか?」
「すぐにわかると思いますよ。終わったらここらへんで、そこの時計を目印にしてくださいね」
時計のついた建物を指さす。そちらを見ている間にネルは行ってしまった
「気になるお店あったから行ってくるね!」
ローズ手を振りながら小走りで来た道のほうへ。
「コハクはどこか行く予定あるのか?」
「俺は何もないっすね。お金もないっすし」
お金、そっちは幸いネルに渡された時のものが残っていた。
「クロウさん、結構もってたんすね」
「最初の試合のあとでネルさん渡された物だよ。そういえば、賞金ってどこでもらわないと行けなかったんだ」
「受付っすね。あの時は盛り上がっていたから……すね」
お腹をさすりながら気まずそうにこちらを見てくる。
「あの時は、流れというか、周りも盛り上がっててしょうがなかったんだ、分かるだろ?」
「あ、いや気にしてないっすから!」
なぜか変な空気、この雰囲気を続かせるのは嫌だったので話を切り替えよう。
「とりあえず、一緒に周るか。ネルさんの言ってたことも気になるし」
「そうっすね」
現在三又に分かれた道の真ん中、ネルとローズが行っていないほうの道を歩くことにした。
入った時はネルについて言ってたのでちゃんと見れてなかったが、色んな種類の店がある。食べ物から服、何か分からない物まで色々と売られているものが見える。
視線が奪われた。ネルの言っていた意味が分かったからだ。
「どうしたっすか? 目立つ看板っすね。女の子と三つ葉っすか……これって」
「アルクだ」
金髪の長い髪の女性が三つ葉のチャームを嬉しそうに持っている看板。
ネルはこれをすでに知っていて誘導していた。ならやることは一つ。
「これが、お土産屋みたいっすね」
「入ってみる」
「暴れたりとかしないっすよね」
「分からない、暴れたら止めてくれ」
「う、うっす、頑張るっす」
中に入ると「いらっしゃませ」と黒い装束を着た女性が明るい声が響く。
コハクは店の商品を見ており、自分は店員にどう話を切り出そうか考えていた。考えるのに必死で彼女をずっと見つめていることに気が付かず、声をかけられた。
「どうかなさいましか?」
「えっと、入り口の……看板。看板の女の子のことを聞きたくて」
「アルク様ですね。彼女は『黒の城』の新しい城主です。色んなことを一生懸命していく彼女の姿に感動し我々は信仰しています」
「そのアルク……様は、どんな子ですか」
「明るい方ですね。どんな時も常にいるだけでこちらも明るくなれるお方ですよ」
「この三つ葉はどうして?」
「それは、彼女が大切にしてるもので。彼女が提案して作って欲しいということでこちらの商品が作られました。そっくりな物だけは作ったらダメで……」
急に止まって眉間にしわを寄せてこちらを見ている。
しまったと思ったが、返ってきたのは笑顔だった。
「すごいそっくりですね、でもアルク様には見せないようにしてくださいね。怒りますから、きっと」
「怒る?」
「はい、友達に怒られるからダメ、だそうです」
「わ、分かりました。気を付けます」
「あなたもアルク様が好きみたいですね。最初は怖い顔だったのに、今は彼女のことを聞いたら嬉しそうで」
不意打ちに焦った。自分はそんな顔をしていたのか。ちょっと恥ずかしくなってきた。
「あ、あはは。ありがとうございます。コハク、買いたいものは決まったか?」
「俺は何もないっすね」
「じゃ、じゃあこの箱入りのを、4つ」
こうして、両手に2箱ずつ入った袋を渡される。
「ありがとうございました」
その言葉に頷くことしかできず、急いで店を出た。
「クロウさん、嬉しそうっす。今まで見たことないくらいに」
「しょうがないだろ」
「そうっすね、あの女の子はクロウさんの知ってるアルクちゃんだったんすね」
「ああ、間違いないよ」
「でも、何で4箱も買ったんすか」
「1箱だけだと申し訳ないなって、だからみんなの分を」
「ネルさんがかわいいっていう理由、少し分かったっす」
「お前、いうようになったな」
「友達っすからね」
「それは、そうだな。いったん戻るか」
「そうっすね」
戻ってくるとローズとネルが戻ってきていた。こちらに気付いたローズが手を振りながら「おかえりー! 待ってたよ!」大声で呼びながらこっちへ走ってきた。
「はい、こっちがクロウくん、んでこっちがコハクくんの」
袋を持ち換えて彼女から受け取ったのは、ブレスレットだろうか。4つのひし形のチャームがついた白色のブレスレット。コハクは黄色と色を合わせてくれているみたいだ。
「嬉しいっすプレゼントなんて初めてっす! みんな色違いってことっすよね!」」
「せっかくの四人旅だからさ、記念になるかなって」
「ありがとうっす」
「ありがとう、嬉しいよ」
「……なんかクロウくん、いつもよりなんだろう柔らかい? それにその袋は何?」
「まんじゅうだ、みんなの分で4つある」
「う、うん。ありがとう。コハクくん、ちょっと! クロウくんが怖いんだけど」
「こっちはこっちで良いことがあったっすから。とりあえずネルさんの所へ行くっすよ」
本当に今は不思議な気分だ。ネルのところへ着いたら文句の一つも言ってやろうと思ったのに、ローズのブレスレットも相まってすべてを許せそうになる。
「やっと来ましたか。クロウくんはその顔を見るところ良いことが分かったみたいですね」
「ずるいですよ、分かってたなら教えてくれたって良かったじゃないですか、もう」
「笑いながら文句を言われるのは気持ち悪いですね。推測はできても確証はなかったのですからあなた自身に見てほしかったのです。結果は問題なかったのですね」
「はい、アルクはいます。『黒の城』に」
「え? どういうこと?」
ローズはピンと来てなかった。
「いつまでも立ち話しないで、宿へ向かいますよ」
「ネル様、意味が分かってないんですけど」
悔しそうにネルのほうへ向かい、彼女に耳打ちされ「あー! よかったじゃん!」と嬉しそうにこっちを指さした。
「でも、どうして?」
「そこらへんは中に入ってからにしますよ」
「はーい」




