クロウ
「俺は、5年くらい前にバロンっていう白の頂点に連れられて『虹の箱舟』にいました」
「えっ、クロウくんはそのバロンって白の頂点が保護者ってこと?」
「うん、そんな感じになるね」
他の二人は頷いて納得しているようで話を続けることにした。
「バロンはすごい変な奴です。全身がこの義手みたいな……義体だったかな。それを纏って生活をしていました。剣を使うのが上手で、剣の使い方を教えてもらってたけど、下手だからと大剣を渡されて使うことになりました」
「えっ、何で大剣?」
「力はあるからゴリ押しできるからちょうどいいって言われたね」
「えっ? そんな理由?」
呆れるローズに同意してしまう。他の二人はバロンさんの話は余り飛びつかず、頷くばかり。
「『虹の箱舟』の生活はずっと一人ぼっちでした。あの頃は本当に話し方もわからないって感じで不気味がられてたので。バロンの話す内容も本当とウソが半分混じった話ばかりで何が本当か嘘なのかわからなくて、人間不信だったかもしれない」
「クロウくん、そんな時期があったんだ」
「今の話し方はアッシュの影響が大きいかもね」
「あぁ、最新作の子ね」
「うん。結構後になるけどね、次はアルクに出会ったあたりかな。三年くらい前かな」
急に二人が興味をわいたのか、目の色が変わった。
「気になったんだけど、コハクとネルさん。バロンにあったことがある?」
ネルさんは反応しなかったが、コハクは露骨に目をそらされた。
「少し、話したことがあるっす。クロウさんが言うように不思議な人だったっす」
「私は、頂点ですから。何度か話したことありますよ」
不自然な反応はそういうことか。ネルさんはともかく、コハクが顔見知りとは。
「それじゃあ、三年前、俺はバロンに連れられて青の頂点の私室へ。待っていたのは青の頂点。姿はネルさんが玉のようになったのと同じでした。その影に隠れてじっと見ていたのがアルクでした。その日は大変でした。興味津々でずっと眺められ、近づいてきたかと思ったら、いきなり義手を引っこ抜ぬかれたし、青の力で……あれ?」
「どうしましたか?」
「いや、最後どうだったか覚えてないなって。いきなり青の力を振るわれたのは覚えがあるんですけど。その日はそこから余り思い出せなくて」
思い出せない、切り取られたみたいに次の日からが思い出される。
「あれ? クロウくんって、いつから義手なの? いつの間にか付けてたけど」
「ああ、ずっと気づいたときには義手だよ」
「へえ、大変だったね」
「当たり前になってるからね、今更気にしてないよ。次の日からは青の頂点に怒られたのか少し大人しくなったな……ローズにも関係ある『ブレードガンナー』が流行るまでは。確か二年あるかないかくらい前だったと思う」
「そっか、もう二年経つんだ、あれから」
ローズは嬉しそうに懐かしんでいる。本人の前でこれらのことを話すのはちょっと恥ずかしいけど続けよう。
「当時、アルクとは話はするくらいの仲でした。『ブレードガンナー』が来た時、大変でした。とにかく買えなくて揉めて、荒れてました。彼女もその一人でした。それを見かねてなのか、かなり早い時期にバロンがいきなり自分に渡して、アルクと一緒に見ました。ここから共通の話題ができたって感じで仲良くなれた気がします」
いったん周りの見るとコハクは普通に聞いてる感じ。ローズは嬉しそうで笑顔隠すように口を手で追っている。ネルはなぜか不機嫌そうに爪を噛むような動作。
「ネルさん、どうしました」
「白……バロンから聞いた情報と全然違ってね、でも良かったよ。その一本は私がバロンに売ったものだよ」
「あ、それで急に。ありがとうございます」
怒るのを諦めたように少し笑い「良いのです、続きをどうぞ」と話を勧められた。
「そこからはアルクと一緒にいることが多くなって、いきなり映画の再現しようって。その日から大変でした。最初は弾を入れず、剣も木の端材で工作したのでやっていました。でも、迫力がないってことで実剣実弾をやり始めたらお互い怪我しまくり、痛みと上手くできないストレスで罵倒しか……してなかったね」
「男女とは思えない激しさですね」
「当時はそんな意識全くないですね」
ローズはさっきより笑いを抑えるのが大変そうで「ぶふっ」「ぐふっ」とか笑い声が漏れまくっている。
目が合うと「続き続き!」と煽ってくる。
「バロンにも青の頂点にもお互い怒られながら、ようやくできた時はかなり喜びましたね。そこからは……アッシュと出会った、いや衝突した頃に、一年くらい前です」
「ちなみに『ブレードガンナー リベンジ』はどうでしたか?」
「同じですよ、けがと罵倒を延々と繰り返す日々。こんなことをやってるから浮いてましたね。彼女も最初は友達がいたけど、揉めてからは見なくなったし」
「何かでもめて、それ何かありそうですがクロウくんじゃ難しそうですね」
「うーん、確かに自分では分らないです」
何か自分に原因があるじゃないかって思わせる言葉。違うことでアッシュは自分に相手の気持ちを考えろって怒られたが、そこらへんもあるのだろうか。
「アッシュとはアルクを無理やり任務に連れて行こうとしているのを引き留めたことでもめたことが最初の出会いでした。それからも何度か揉めながらも話をしていくうちに仲良くなりました」
「ふむ、一年位前か。ということはそろそろ出るわけだな『ブレードガンナー アウェイク』」
三作目、一番大変だった記憶が蘇る。
「ありましたね、最初は誘うつもりじゃなったんです。あの作品には二か所再現したいって言われて揉めてました。数日かけて片方はどうにかなったけど、このままじゃ身体が持たないと思いながら購買の近くを歩いていたらアッシュを見かけたんです。そして、彼が『ブレードガンナー』の再現グッズ買っているのを見たんです。そこから彼もお馴染みの再現に付き合ってもらいましたね。あれが一番長かったですね。10日くらいかかりましたし」
「君の友人の思い出、ほとんど『ブレードガンナー』に侵されてますね」
「ええ、細かい話も無くはないんですが、印象が強すぎて『ブレードガンナー』で埋まりますね。仕事の内容とかは言ってはいけない内容があるかもしれないので触れられませんし」
「問題ありませんよ、今回は君のことを知りたい、ただそれだけですから」
「楽しませてもらってるっすよ」
「はぁ、おなか痛い。何でそんなに『ブレードガンナー』に、あっだめ、あはっ、あはは!」
壊れたように笑い続ける彼女に呆れた視線が集まってるが無視しで続けよう。
「ここからは『ゴールディ』に来る直前になります。入り口付近でアッシュと他愛ない話をしていた時でした。急に奥が騒がしく、気になり見に行くと黒の力を纏ったアルクが。黒の力で空を飛びながら追っ手を退けように黒の力で攻撃しながらこっちを横切ろうとしていて、咄嗟に彼女の足をつかみました。掴んでいる最中に振り払おうと黒の力で攻撃されて気を失いました」
「あれ? それだとアルクって子が黒の頂点な気がするっすが」
コハクの問いに答えを出せないでいた。
最初は迷っていた、ここまで話そうかどうか。分かってはいた、そう繋がってくるだろうと。でももうすぐ会えるかもしれない、そのタイミングだからこそ、みんなにも知ってもらいたかった。
ローズも笑いが治まり、みんなこっちを見ている。
先にネルが口を開いた。
「クロウくんは、アルクちゃんに会ってどうするつもりですか?」
「助ける以外は考えてません。そのためにみんなにこの話をしました」
「どうしてですか」
「手伝って、欲しいからです。一人では『黒の城』へ行くどころか『ゴールディ』から出ることもできなかった。一方的でわがままかもしれないけど、頼りにしたいんだ」
急に静かになった。みんなが顔を見合わせている。頷きながらこっちに視線が移った。
「もちろん良いっすよ」
「うん、みんなで力を合わせてね」
「私たちはお友達ですからね」」
みんなの言葉に恥ずかしくなり「じゃあ、行くよ!」言い切って逃げるように早歩き。
「あっ、ちょっとなんで逃げるの!」
「ずるいっすよ」
「皆さん、そんなに早く歩かないでください!」




