脱出
「さあ、皆さん行きますよ、ついてきてください」
ネルが走るような動きで進みだす。走りなれていないのかかなり遅い。
彼女の様子に二人を見たが、みんな困惑の表情。何も言い出せないまま彼女について聞く。
「さて、次に、はぁはぁ」
喋ろうとしたところで疲れたのか足を止めた。肩で息をしながら平気な表情のこちらに不思議がっている。
「あれ? みなさん、速いですね」
「ネル様が遅いんですよ」
ローズは容赦なく事実を伝えた。
「走るときは地面を蹴らないと意味ないですよ。それだと大股で歩いてるのと一緒」
「やっぱり燃費悪いですね。この身体だと」
そういうと彼女は赤い光の玉のような形状に変わった。
「これが一番楽ですが、これでみんなと歩くわけにもいかないから、こうしましょう」
赤い煙のようになり、ローズの銃にまとわりついた。
「これが楽ですね。ついでに力も取っておきましょう。さっきの戦いでたまってきていますし」
「ネル様、それは良いんですけど。どっちに行けばいいんですか?」
「あっ! そうでしたね、とりあえず指さす方向へ、道沿いに」
赤い煙から突然腕が出てきて指さしてきた。まじかで見ているローズが「きもっ!」と叫んでしまった。
「きもってなんですか! 失礼な!」
「だって腕だけはやめてよ、夢に出てきそうじゃん!」
「わかりましたよ、じゃあクロウくんの剣に」
「えっ?」
自分もちょっと怖いんだけど。
「ほら、行きますよ。これからの説明もありますから」
「はい」
大剣に赤い霧が、声が剣から出ているようで不気味な感覚。
「とりあえず、今日は『パレッタ』という町にいきます。そこまでいけば『黒の城』の直通で運んでくれる輸送車があるから快適ですよ」
「輸送車?」
「『ゴールディ』で荷物運んでるあれっすか」
四輪で動く荷物を運ぶやつ、何度か見かけた気がする。
「ええ、それが一回り大きくて2、30人は運びますよ。ここも通り道ですし、見かけることがあるかもしれませんね」
みんな揃えて「へー」と声を漏らしてしまう。
今思うと、一人で脱出できたとしてどうやって行くとか何もわからないままだったんだろう。そう思うとぞっとする。
「どのくらいで着くっすかねえ」
「うーん、6時間くらいかしら。黄の頂点がここら辺は常に警戒していますから、獣が出ることも早々ないですからね」
「うーん、どうしよっか」
「確かに」
「気になることでもせっかくだから聞いとこうっすかね」
「へえ、どんなことだ」
「クロウさんのペンダントっすね。青の力で作られてるのは分かるっすが、すごい大事にしてるっすよね」
青の力に三つ葉の葉っぱが入ったチャームのペンダント。
「ああ、これか。これはアルクからのプレゼント。アッシュとアルクもお揃いでつけてる大切なものなんだ」
「へえ、アルクちゃんって青の力を使うんだ。近くで見ると綺麗、三つ葉も三人ってことか」
「良いっすね。それであの時必死になってたんすね」
「ああ、会った時、持ってなかったら……嫌われるかなって思ってさ」
「クロウくん、かわいい! 気持ちはわかるよ」
「青の力の――」
「うわっ?!」
背中に球に振動が来て焦って声が出てしまった。
「なんですか、急に大声出して」
「ネルさんが喋ると振動が背中を通って気持ち悪くて」
「もう、あなたまで、もう諦めます」
結局人の姿で現れた。表情は不機嫌そう。
「二人そろって気持ち悪いと散々な評価で不愉快です」
「ごめんなさい、でも急に体の一部が出てくるのはホラーすぎて気持ち悪かったんですよ」
「背中をなぞってきてる感覚で、正直寒気がして」
「ふんっ、良いですよ別に。ローズちゃんに定期的に力はもらっていきますから」
「どうぞどうぞ」
ローズの差し出す手を掴み、そのまま歩き始める。
「話の続きですが、少しそのペンダント見てもいいですか」
「ええ、良いですよ」
首から外して彼女の近くへ、三つ葉のチャームを数秒見ると「ありがとう、もう良いですよ」特に何かあったわけもなくペンダントを付けた。
「一つ聞いてもいいでしょうか?」
「どうぞ」
「そのペンダントのチャーム、もらった時から何か変わったこととかありますか? 見た目とか形状とか」
「いえ、一年くらい立ちますけどそんな感じはないですね」
「なるほど、彼女力を使うの上手なのですか?」
「いや、調節難しいから使わないって言ってたよ。そのペンダントは青の頂点に聞きに……あ、この話は」
「あら、何か言ってはいけないことが」
「俺たちに秘密で作ってプレゼントしてくれたもので、知ってたら怒られそうだなって」
「だそうです、皆さんも気を付けて」
二人は「分かってるっす!」「大丈夫、続けて続けて」静かだと思ったらしっかり聞き入ってたようだ。
「しかし、青の頂点とあなた方かかわりがあるのですね」
「あの方はアルクの保護者、のような感じですから」
「ほう、これは」
他の二人も驚いたようでこちらを見ていた。
「時間があまりなかったので、素性は問いませんでしたが。クロウくんの話せる範囲でいいので話してみませんか? この時間を使って」
みんなは『ゴールディ』にいてその生活を見たから分かるけど、自分だけは完全に外から来ているから誰も知らないのか。
これからのことを考えれば話しておいてもいいかもしれない。
「わかりました、覚えてる範囲だけど自分のことを話します」




