VS ABCオーケストラ
門の向こうが騒がしくなってきた。ようやく試合が近くなる。
「本日はスペシャルなマッチングでお送りします! いつぶりでしょう、ランクAのマッチングは! そして対戦相手はまさかの新チーム! 昨日のことで知っている人は多いはず! 私も見ました、燃えた! 笑った! 興奮した! いつも一人のローズちゃんが新人と赤の頂点引き連れて再出発、『ブレードガンナー リブート』」
同時に花火と歓声の轟音が鳴り響く。
「対して、煽りあいに赤の頂点ぼこされ、負けたら『ABC雑魚』の烙印を押される窮地、でも忘れてはだめだぜ! 彼らは常にA2を維持し続ける化け物集団ってことを! 今日も嵐のように降り注ぐ銃弾の見せてくれるだろう『ABCオーケストラ』」
再び花火、歓声は笑い声、バッドはペコペコ謝りながら二人に殴り蹴られながら入場していく。
もうやめろと大げさに手を払うとネルを指さした。
「お前のせいで昨日からずっとこの調子なんだからな! 絶対負かす!」
「いいですよ、ついでに家賃倍にしましょうか。私たちが勝ったら」
膝から崩れ落ちるバッド。
「もっとひどくなったじゃないバカバッド!」
「この前リフォームしたばっかだぞ!」
容赦なく物理的な攻撃を浴びせられ続ける。いきなり立ち上がり、彼らの攻撃を退けた。
「まあまあ、君たち。勝てばいいじゃないか、な?」
二人は呆れるようにため息をつきながら銃を構えた。
「おっ、終わったかな。それでは3.2.1GO!」
相手は離れるように走り出す、自分は右回りに壁伝いで走り、ローズは左回りに、近くに来ていたオーロラに銃弾を放つが速度は止まらないままよけていく。こっちにはクラッシュが来ているが視線はネル。
チャンスと思い剣を振るうが「残念だったね!」と煽るように叫びながら剣どころか身体を飛び越えていく。そのまま二丁の銃を空中で構え、自分とネルのほうへ銃弾を飛ばす。
自分は走り続け、銃弾をよける。
ネルは避ける気がなく歩いているだけ。肩に弾が当たり、少しよろめいたが砂のように地面へ落ちた。
「ずっこいぞー!」
「おいおいおい! それはひどくないか!」
「手加減してくれるっていったのに!」
クラッシュの怒声に合わせて三人は動きを止め、露骨な対策に抗議のやじを飛ばす。
予想通りブーイング気味の声援も増えてき始めた。
「わかりました、他の二人のどっちか倒したら負けを認めます。ただし、あと50秒で!」
三人の視線は一気にこっちに向いた。50秒、これを切り抜けないといけないのか。
ローズと鉢合わせ、三人が鬼気迫る表情でこちらに銃口を向けて追いかけて来ている。
「剣を横に、乗るから投げて」
いきなりの提案、言う通りに剣を横にすると彼女は剣に飛び乗りしゃがみ込む、続けて斜め上に銃を向けた。両手は赤の力に染まっており、冗談ではないことが伝わる。
あの高さと向きへ振れということか。
「横に振るぞ!」
「早く!」
掛け声も何もなしに両手で持った大剣を、彼女が指さす方向へ力いっぱい振りかぶる。
少し感触があった程度、想像以上の速度で彼女は飛んだ。そして、相手の視線がそちらに逸れた。続けて自分は、彼女に続いて突撃を決める。
先行するローズは銃弾を遠くにいるオーロラに数発。
「痛っ! きゃっ!? 最悪!」
何発か当たり、怯み真っ赤に染まる。血ではない、彼らの使っている弾丸だ。勢いはまだ続き、彼女キッドの近くへ膝を曲げて着地、彼らはにらみ合う。
「マジか俺狙い?」
「正解」
立ち上がる勢いでナイフを下から上へ、身体は躱せていたが、右手に持っていた銃が切り裂かれていた。
「私の勝ち、じゃあねー」
「あぁ、くそ! やられた!」
煽るように手を振りながら走り去るローズ。だが、バッドは悔しがりながら腰につけていたもう一つの銃を構え始めている。
「なんてね――」
「バカ! 後ろ!」
「あ? げっ!」
クラッシュの声に反応して丸まっていた彼を容赦なく背中をぶっ叩いた。
少し吹っ飛び、地面に突っ伏している。
「こんにゃろ! 逃がすか!」
左からクラッシュがやけくそに飛ばす銃弾。肩の辺りに二発ほど当たった。よろめいたがこれくらいなら大丈夫。
少し前を走るローズは見るとクラッシュとオーロラへ向け交互に撃って妨害をしてくれている。
「ほんとに一発やっちゃったね」
「ローズのおかげだよ」
「あなたたち、無茶なことはしないでください。焦りましたよ」
「ネル様が煽るから本気だしただけ、ね?」
「うん」
自分についていた弾丸は振り払われ。
「やっぱずるじゃん! やってらんねー! バッドのバカやろー!」
クラッシュの叫び声が響く、諦めたのか大げさに仰向けに倒れた。
オーロラを見ると何かを投げているように見えた。伝えようしたがローズはすでに弾を込め直しながら銃を構えていた。
「甘い」
空中で撃ちぬかれ爆発片が少し飛んできた。
さらに続けて爆発音が響いた。かなり上、観客席よりも上の方だ。
「始まりましたね、行きますよ」
ネルの声に周りを見るとローズがなぜか上に向けて銃弾を放っていた。
赤い粉?
何かまでは分からないけど会場中に拡散した粉。その向こう側、さっきの爆発したところにうっすらと人の姿が二人見えた。
はっきりは見えないけど、見覚えがある気が――
「いくよ! クロウくん!」
「こっちっす!」
腕を二人に掴まれた。
逃げないといけない、いけないのに見えた二人の影が脳裏に焼き付く。
会場の外へ引っ張られるが、後ろ髪を引かれる。あの光景は見えなくなった。
「クロウくん! あなたはどうしたいの! 決めて!」
怒鳴るローズの声に我に返った。
泣きそうな表情の彼女、不安そうに見てくるコハク。ドアの付近で待っているネルは目を細くしてにらんでいるように見える。
何をしているんだろう。こんなことしてる場合じゃない。あれが知っている二人だったとしても今は関係ない。
「出る、出てアルクを助ける」
「なら、いくよ!」
「いくっす!」
「ごめん! もう大丈夫!」
掴まれた手は離れ、二人はそろって笑みを浮かべて「そっか」「頑張るっす」と声を連ねて励ましてくれた。
走らないと、今は考えてはいけない。自分のためにも、みんなのためにも。
先頭はコハク、黄の頂点に何かを教えてもらっていたとは聞いていたが、自分の身体を黄の力で防ぐやり方。彼が盾になり、隙間でローズが倒していく。
「もうすぐっす、次の扉で終わりっす」
みんなに守られながら迷路のような階段を右へ左へ。
階段を下りながらすすんでいくが、コハクはよく覚えているなと思う。ネルがまだ来てないのは気になるが、ようやく次で終わる。
「あら、速いですね。もう来ましたか」
出口周辺に警備がいないと思ったらすでに出口には彼女は来ていた。
「おめでとう、みなさん。ここが『ゴールディ』の外ですよ」
広がる平原、太陽が明るく照らす外。
次は『黒の城』だ。




