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どこにだって日常はあるし、非日常もある  作者: しーも
1:かわいい手紙

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2

渡された手紙には、「アランへ」と書かれていた。おそらく宛先だろう。これだけの情報で届けられると思っているのだろうか?


多分世の中にアランはたくさんいるぞ?




次の手紙を届ける道中、この手紙をずっと見ていた。

ただ、手紙を見てもそれ以上の情報はない。ちょっと紙がよれているな、くらい。




らちがあかない。




別にそこら辺のゴミ箱に捨てても問題はないはずだが、その気分にはなれなかった。

普段の何もない生活に、ちょっとした刺激を求めていたのかもしれない。




……この手紙って、別に郵便ギルドの仕事じゃないもんな。開けても何も文句言われないよな。






その日は仕事をそそくさと終わらせ、速攻で家に帰った。


ベッドと机と収納くらいしかない小さな一部屋。ここでならまわりにつべこべ言われない。

恐る恐る、ロウソクの火の下で手紙をあける。




そこには、しっかりとした文字がびっしりと並んでいる。


会う約束をしていたが会えなくなってしまったことへの謝罪、その代わりに手紙を書いたこと。最近の近況、思い出話と続く。


最後は「じゃあね、バイバイ!」で締め括られていた。あの無茶苦茶な少女らしい締めだ(名前はルーシーと言うらしい)。



正直、そこまで面白い手紙ではなかった。



ただ、どことなくほっこりする、そしてなぜだか淋しさのようなものを感じる手紙だった。



気になった点は一つ


トメばあちゃんって、あのばあちゃんだよな……




次の日、郵便ついでに少し寄り道してみた。


港街区。

変わったものがたくさん集まる場所。


そんな街の大通りから一本中に入ったところに、ちょっとした果物屋がある。




……トメばあちゃん、いるかい?


「はいはい、あぁ、君かね。随分久しぶりじゃない。」


最近なかなかこっちに来ることが無くてね。商売は順調かいな?


「まぁまぁだね。そうだ、時間あるかい?面白いもん入ったからちょっと食べてきなよ。」



……心優しいばあちゃんは、このあたりの子供たちはみんな知ってる。お店の手伝いをしたら、ご褒美として必ず甘い果物を食べさせてくれるのだ。


昔は何も思ってなかったけど、果物なんて高いものよく平気で振る舞ってくれたな、と凄い恐縮ではあるのだが。



とにかく、子供たちの心の拠り所なわけである。



「これこれ、小さいんだけどすごい甘いのよ。」


なにかお土産持って来ないといけなかったな。仕事中にふらっと寄っただけだから。


「その元気な顔が、お土産ってもんさ。ほれ、これ食べてもっと元気になってちょうだい!」


いつでも元気だね、ばあちゃんは。


「ハハッ。これでも結構衰えてきたんだよ?特に最近は覚えるのが大変で。ほら、あんたの名前も思い出せん」


ハハッ、それはつらいなぁ〜

そう、今日ちょっとばあちゃんの記憶を頼りたくって


「おいおい、怖いこと言うわねぇ…」


…手紙を見せようとおもって手を伸ばしたが、郵便屋の性が止めにかかる。


「どした?」


あぁ、『アラン』って子を知ってるかい?


「『アラン』って子かい?」


そう、多分男の子だと思うんだけど


「うーん……」


難しいか?


「いや、思い出してきた。アランって子は、今まで会ってきたなかで二人いたきがするわ。一人はガキ大将のカワイイやつで、もう一人は、心優しい男の子。元気な女の子の影にいつも隠れてる感じだったけど……」


その女の子って、『ルーシー』って子かい?


「そんな名前だった気がする!あの子、いつもアランはアランはってずっと言ってたから、男の子のほうが名前覚えてたわ。全然顔は思い出せないけど。」


最近来てる子じゃないのかい?


「あの2人が来てたのなんて10年とか前…いや、それ以上の話じゃない?それこそ、あんたが来てた頃より少し後くらいだよ。」


そんなに?


「そうよ。まだ表通りでお店やってた時よ。」



……そこからトメばあちゃんの溢れ出てくる思い出話を、ずっと聞いていた。

ただ、ひたすらに。ただ、おばあちゃんが元気であること、それだけで嬉しかった。


「ほら、もうそろそろ仕事戻らないけないんじゃない?」


おっと、そうだね。また聞きに来るよ。


「次は買っててな!」


はい、そうさせてもらうよ。





……晴れやかな気分と同時に、手紙についての謎がさらに深まったモヤモヤとが入り乱れる。


私が手紙を受け取った少女は間違いなく10歳前後だ。しかし、トメばあちゃんの記憶にある2人は、それが10年以上前だと言う。流石に最近のことは覚えているだろうから、ばあちゃんの記憶違いでもないだろう。





私の目の前に現れた()()は、何者だったのだろうか?

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