↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第6章 相棒という距離
PR
49/50

第6話 沈黙の制圧

 男に言われたとおり、一階まで下りた。

 だが、そこからは反対の方向──先ほど見つけた、警備の厳しい建物へ向かう。


 左肩を壁につけるようにしゃがみ、建物の影からそっと様子を伺う。

 時々人がやってくるが、黒マントの中の顔をしっかり確認しているようだ。


「……怪しい」

「まったくだ」


 アイリスの後ろから倉庫を見ていたリオも、同意する。


「地上の警戒が厳しすぎる。上から行くしかないか……」

「窓があるね」


 アイリスは視線を流し、窓をひとつずつ確認する。

 見つけた。


「奥から三番目の窓が開いてる」

「閉め忘れかな?」


 リオが小さく笑い、そのまま隣にしゃがむ。

 肩が触れた。


「気配を消して、上からあの窓を目指す。いけるか?」

「うん」


 アイリスは前を向いたまま頷く。

 今は右側を見ない方がいい気がした。


 *


 建物の出っ張りを伝い、無事に窓の近くまで辿り着く。


 リオが先に飛び込んだ。

 頭が完全に壁の向こうに消え、やがて窓から手だけが覗く。

 軽く立てられた親指を見て頬を緩め、アイリスも位置を少しずらして飛び込む。


 音もなく床に着地する。

 近くの物陰に身を潜め、倉庫を見回した。


 複数の木箱が、一か所にまとめられていた。

 粗い合板に黄色い警告塗装、赤いペイントで“!”マーク。

 蓋の一部は錆びた金具で補強され、剥がれかけたラベルの上には文字が書かれている。


 風が箱の継ぎ目からツンとした匂いを運ぶ。


「間違いなさそうだ」


 リオが囁いた。


「倉庫内も警備が厳重だね。先に昏倒させる?」


 アイリスが問うと、リオは頷く。


「全部で六人だ。左の二人を頼めるか?」


 多めに担当しようとしてくれている。

 索敵していたアイリスは、口元に笑みを浮かべた。


「左の三人を任せて」


 中央寄りの者も含めて、左側は全員、一人で対応可能だ。

 リオがふっと目を細め、頷く。


「行くぞ」


 リオの合図で、静かに動き出す。


 近くの者から順番に背後へ回り込み、手の側面を首筋に打ち込む。

 次の瞬間、相手の膝から力が抜けた。


 倒れ込む体を受け止め、音を立てないよう床へ寝かせる。


 同じように次の者の意識を奪う。

 二人がかりで、あっという間に制圧が完了した。


「ふう。さっさと片付けてしまおう。収納袋に入れてしまえば、爆発の危険もない」


 リオが懐から、収納袋を取り出す。


 その横で、アイリスは爆発物が詰まった箱に手をかけた。

 腕を回しても端まで届かず、胸に押しつけるように抱え込む。


 大きく息を吸い、脚に力を込める。


 箱が床からわずかに浮く。

 だが、それ以上は上がらない。


 顔が引きつった。


 ──重い。


 リオが苦笑し、視線を箱の山へ向ける。


「これは、時間がかかりそうだ」


 そして、倒れている見張りに目を向ける。


「先に彼らを動けないようにしておこう。アイリは袋の口を広げてくれるか?」

「……そうする」


 六人をまとめて縄で括り、口には布を噛ませる。


 アイリスは収納袋の口を広げ、リオの近くに待機する。


「私、筋力ないな……」


 リオが持ち上げた木箱が、スルリと収納袋に吸い込まれていく。

 悲しかった。結構鍛えているつもりだったのに。


「仕方がない。アイリより重いからな」


 リオが息をつきながら言った。


 聞き捨てならない一言だった。


「……もしかして、持っただけで重さがわかるの?」

「ああ」


 アイリスは視線を落とした。

 ……なるほど。つまり体重はすでに知られている、と。

 わずかに頬が赤くなる。


「……女の敵」

「なんで?」


 アイリスは小さく鼻を鳴らす。

 それがわからない男だから、女の敵なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。