第4話 潜入任務
リオとともに狩人本部を訪れると、サラに声をかけられた。
「リオさん、アイリスさん。長が上階でお待ちです」
長からの直接呼出し。
アイリスは少し身を強張らせて、リオと顔を見合わせた。
*
狩人の長の執務室。
アレンがいくつかの紙束を、テーブルの上にばさりと置いた。
「早速だが。今から、これを頭に叩き込んでもらう」
「これは……」
リオが束をひとつ手に取る。
紙をめくる音が執務室に響く。
「先日、大量の爆発物が盗まれる事件があった。その主犯組織と、本拠地。そして今からお前たちがなりきる者の情報だ」
アイリスも束を手に取る。
一枚めくるごとに胸の奥がざわつく。
「この量を……全部……」
とても覚え切れる気がしなかった。
「全部を完璧に覚える必要はない。二人いるんだから」
リオが口元に笑みを浮かべながら言った。
肩にのしかかっていた重圧が、ふっと軽くなる。
不安が少しずつ落ち着いていく。
「潜入任務、ということですか?」
アイリスが尋ねると、アレンは頷いた。
「これは極秘任務だ。お前たちはしばらく、別の依頼で街を留守にする。そういう予定だ」
ごくりと唾をのむ。
背筋がぴんと伸びる感覚があった。
なんだか、これまでとは違う──特殊な仕事だ。
リオが顔を上げる。
「任務内容は、爆発物の発見・撤去と、本拠地の破壊。……この組織の人間はどうしますか?」
「爆発物を回収次第、別部隊が取り押さえる」
アレンが机の上に、袋と魔道具をひとつ置いた。
「収納袋と信号弾だ。回収が完了したら、信号弾を作動させてくれ」
二人は頷いた。
リオの視線が鋭くなる。
アイリスも唇を引き締めた。
*
依頼で街を留守にするという設定の都合上、外には出られない。
覚える作業は、長の執務室で行うことになった。
「アイリ。爆発物があるとしたら、どこだと思う?」
「そうだね……盗まれた量を考えると、どこかの倉庫かな。でも、倉庫だらけなんだよね」
二人で肩を並べて座り、地図を覗き込む。
本拠地の地図を見ているだけでは絞れそうになかった。
「……お前たち、随分と仲がよくなったな」
アイリスとリオは同時にアレンを見た。
アレンは手を止め、こちらをじっと見ている。
「パーティーを組んだとは聞いたが」
「はい。俺にもようやく相棒ができました」
リオが笑顔で告げると、アレンの目が柔らかく細まる。
「……そうか」
そして、アイリスへと視線を向けた。
「リオを……頼む」
「……はい」
真っすぐ見つめられて、アイリスは思わず返事を返す。
言葉は少なくとも、重みのある信頼と期待が伝わる。
その視線にはどこかリオを思わせる温かさがあり、心臓が一瞬止まったような気がした。
リオが少し不満げに眉を寄せる。
「父さん。なんで俺のことをアイリに頼むんだ」
「お前は、自制心が弱い」
「……誤解を招く言い方はやめてくれるか?」
リオはわずかに口を尖らせる。
アレンが視線を落としてふっと笑った。
アイリスも小さく笑う。
だが、すぐに深呼吸をして気を引き締める。
目の前の紙束に意識を戻し、必要な情報を頭に叩き込む──それが、今は最優先だった。
「よし。リオ、早く覚えよう」
「……了解」




