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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第6章 相棒という距離
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第4話 潜入任務

 リオとともに狩人本部を訪れると、サラに声をかけられた。


「リオさん、アイリスさん。長(マスター)が上階でお待ちです」


 長(マスター)からの直接呼出し。

 アイリスは少し身を強張らせて、リオと顔を見合わせた。


 *


 狩人の長(マスター)の執務室。

 アレンがいくつかの紙束を、テーブルの上にばさりと置いた。


「早速だが。今から、これを頭に叩き込んでもらう」

「これは……」


 リオが束をひとつ手に取る。

 紙をめくる音が執務室に響く。


「先日、大量の爆発物が盗まれる事件があった。その主犯組織と、本拠地。そして今からお前たちがなりきる者の情報だ」


 アイリスも束を手に取る。

 一枚めくるごとに胸の奥がざわつく。


「この量を……全部……」


 とても覚え切れる気がしなかった。


「全部を完璧に覚える必要はない。二人いるんだから」


 リオが口元に笑みを浮かべながら言った。


 肩にのしかかっていた重圧が、ふっと軽くなる。

 不安が少しずつ落ち着いていく。


「潜入任務、ということですか?」


 アイリスが尋ねると、アレンは頷いた。


「これは極秘任務だ。お前たちはしばらく、別の依頼で街を留守にする。そういう予定だ」


 ごくりと唾をのむ。

 背筋がぴんと伸びる感覚があった。

 なんだか、これまでとは違う──特殊な仕事だ。


 リオが顔を上げる。


「任務内容は、爆発物の発見・撤去と、本拠地の破壊。……この組織の人間はどうしますか?」

「爆発物を回収次第、別部隊が取り押さえる」


 アレンが机の上に、袋と魔道具をひとつ置いた。


「収納袋と信号弾だ。回収が完了したら、信号弾を作動させてくれ」


 二人は頷いた。


 リオの視線が鋭くなる。

 アイリスも唇を引き締めた。


 *


 依頼で街を留守にするという設定の都合上、外には出られない。

 覚える作業は、長(マスター)の執務室で行うことになった。


「アイリ。爆発物があるとしたら、どこだと思う?」

「そうだね……盗まれた量を考えると、どこかの倉庫かな。でも、倉庫だらけなんだよね」


 二人で肩を並べて座り、地図を覗き込む。

 本拠地の地図を見ているだけでは絞れそうになかった。


「……お前たち、随分と仲がよくなったな」


 アイリスとリオは同時にアレンを見た。

 アレンは手を止め、こちらをじっと見ている。


「パーティーを組んだとは聞いたが」

「はい。俺にもようやく相棒ができました」


 リオが笑顔で告げると、アレンの目が柔らかく細まる。


「……そうか」


 そして、アイリスへと視線を向けた。


「リオを……頼む」

「……はい」


 真っすぐ見つめられて、アイリスは思わず返事を返す。


 言葉は少なくとも、重みのある信頼と期待が伝わる。

 その視線にはどこかリオを思わせる温かさがあり、心臓が一瞬止まったような気がした。


 リオが少し不満げに眉を寄せる。


「父さん。なんで俺のことをアイリに頼むんだ」

「お前は、自制心が弱い」

「……誤解を招く言い方はやめてくれるか?」


 リオはわずかに口を尖らせる。


 アレンが視線を落としてふっと笑った。

 アイリスも小さく笑う。


 だが、すぐに深呼吸をして気を引き締める。

 目の前の紙束に意識を戻し、必要な情報を頭に叩き込む──それが、今は最優先だった。


「よし。リオ、早く覚えよう」

「……了解」

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