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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第6章 相棒という距離
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幕間 彼の幼馴染

 アイリスがリオとともに、次の依頼を探していた時のことだった。


「あら、リオ!」


 元気な声が聞こえて、リオが振り返る。

 突進するかのような勢いで、誰かがリオに抱きついた。


 アイリスはぴしりと固まる。


 それは、竜騎士の鎧に身を包んだ女性だった。

 肩下まで届く深紅の髪。

 少し金が混ざった落ち着いた焦茶色の瞳でリオを見上げる。


「イリス。戻って来てたのか」


 リオがイリスの腰を支える。

 その手をアイリスは凝視した。


 あのリオが、平然として、相手の腰まで支えている。

 ──すごい。


 同時に、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚が走る。

 アイリスは思わず胸を押さえ、首を傾げた。


「ええ!私もすっかり立派になったのよ。見て、この鎧!」


 イリスがリオから離れて、くるりと回って見せた。


「ジークさんが心配性で、なかなか許可してもらえなかったからな」

「本当に!お父さんは心配が過ぎるのよ!」


 その言葉に、リオが苦笑する。

 イリスはひとしきり笑った後に、こちらを見て首を傾げた。


「あら?連れがいたの?」


 アイリスはびくりと肩を跳ねさせる。

 お邪魔感がすごかった。


「あの……私、向こうに行って……」


 一人で去ろうとすると、リオに腕を掴まれる。


「アイリスだ。俺の相棒」


 イリスが目を丸くする。

 そして、満面の笑みを浮かべた。


「パートナーってこと?リオ、パーティーを組んだの?」

「ああ、ようやく」

「おめでとう!そうだ、よかったら食事でも一緒に行かない?話が聞きたいわ!」


 あれよあれよという間に、三人で食事をすることになってしまった。


 *


 イリスは、リオの幼馴染というやつらしい。

 学園で六年間ともに学び、今は両親と竜騎士として働いているのだとか。


「相変わらず、周りを振り回してるの?」

「そんなことは……ないと思う」

「絶対嘘じゃない。ね、アイリス」


 アイリスは、細かく頷く。


 リオがほんのわずかに眉を下げると、イリスは堪えきれないとばかりに笑った。

 その目には、からかうような光が浮かんでいる。


 イリスを見ていると、胸の奥に小さな棘のような痛みを覚える。

 ──自分もあんな風に、素直に笑えたらいいのに。

 そんな思いがよぎる。


「リオが女の子と組んでるなんてびっくりよ。距離感下手なのに、大丈夫?」

「イリスには言われたくないな」


 リオが苦笑した。


「アイリス。困ったことがあったら、いつでも言ってね」


 イリスに言われ、アイリスは頷く。


 大丈夫。リオは私に対して、節度のある距離を保ってくれている。

 そう思うのに、胸の奥がざわつく。


 ふと顔を上げると、イリスがじっとこちらを見つめていた。


「それにしても私たち、名前が似てるわね」


 アイリスはきょとんと瞬きをした。


 アイリスとイリス。

 言われてみれば、一文字しか違わない。


「道理で口にしやすい気がしたわけだ」


 思わずリオを見る。

 そんなふうに思われていたのか。


 リオが顎に指を当てる。


「けど、ややこしいな。……アイリって呼んでもいいか?」

「いいよ」


 特に支障もないので、快諾した。


 イリスが小さく肩を落とす。


「なんか……ごめんね」

「いえ。むしろ、少し嬉しいです」


 アイリスは、俯きがちに笑った。


「姉ができたみたいで……」


 イリスが「キャー!」と叫ぶ。


「アイリス!私のこと、お姉ちゃんって呼んでいいわよ!」

「……お姉ちゃん」

「……っ、かわいい!」


 ギュッと抱きしめられた。

 鎧の重みを感じるよりも、なんだかふわりと安心する気持ちが勝り、頬が自然とほころんだ。

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