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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第6章 相棒という距離
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第2話 くすぐったい距離

「それで、アイリスは狩人で、リオのパートナーということだね」

「はい」


 アイリスは頷いた。

 アルヴェルはリオの方を向く。


「つまり、アイリスは仕事仲間で、リオのパーティーメンバーということだね?」

「だから、そうと言ってるだろ」


 リオがわずかに眉を寄せる。

 アルヴェルが肩をすくめて、ため息をついた。


「アイリス。リオのことを“リオさん”と呼んでいるようだけど、いざという時そんな呼び方をしていたら、舌を噛むよ?」


 アイリスははっとした。

 確かに──咄嗟の呼びかけは短い方がいいに決まっている。


「それに、リオが先輩だからか丁寧に話しているようだけど、それも良くないね。もっと気楽に行こうよ」

「気楽……」


 アイリスはリオをちらと見た。

 両の拳をぎゅっと握る。


「……リオ……よろしく」


 かあっと頬が熱くなった。

 どうしてだろう。すごく、くすぐったい。


 リオの片方の口角が、わずかに上がる。

 その口元を、静かに手で覆う。


「なんか……くすぐったいな」


 その言葉で、さらに顔が熱くなる。


「こ……これからは、気楽な口調でいこうと思いま……思う」

「ん……」


 沈黙が落ちた。


 その沈黙を破ったのは、アルヴェルだった。

 眉をわずかにひそめ、口を半開きにしたまま立ち上がる。


「我、帰る」

「え!?」


 アイリスは咄嗟にアルヴェルの服を掴んだ。


「古代文明の第一人者なんですよね?一緒に見ていってくださいよ」


 アルヴェルが、笑顔でアイリスの手を解く。


「ごめんね。ちょっと嫌かな」


 ──なぜ。

 アイリスは呆然と、解かれた手を見つめた。


「アルヴェル」


 リオが呼ぶ。

 だが、アルヴェルはそのまま部屋の戸を開け、振り向きながら微笑んだ。


「リオ。無自覚なまま大切なものを失わないようにね」


 ばたんと、無慈悲に扉が閉まった。


 *


 言うとおりにしたのに、去っていった。

 アイリスはしばらく扉を見つめて動けなかった。


 背後でリオが、お宝の近くにしゃがみ込む。


「まあいい、早く見てみよう」

「いいんで……いいの?」

「いい。最近、どんどん人間臭くなってきてるんだ」


 言い方は素っ気ないが、口元には笑みが浮かんでいた。


 人間臭い、三百歳を超えたおじいちゃん。しかも見た目は子供。

 アイリスは両手で頭を押さえる。


「……混乱してきた」

「その反応、アルヴェルの思うつぼだから。早く慣れた方がいい」


 どうしてリオの周りは、こんな珍妙なものに満ちているのだろう。


「アイリス。これ、何だと思う?」


 顔を上げると、リオが何かを持ち上げていた。

 アイリスはそれをじっと見つめる。


「お鍋……ですかね?」

「口調、戻ってる」

「あ……!」


 慣れるまで、もう少し時間がかかりそうだ。

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