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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第5章 共鳴の刻
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第7話 結成

 琥珀餅を食べ終わり、続いて桜羊羹を取り出す。

 紫色の塊の中に、ピンク色の花弁が閉じ込められている。


「桜という花があるんですね。見てみたいな……」


 よく知るピンク色と違い、淡くて綺麗な色だった。


「また、来ればいい」


 リオが呟く。


 風に吹かれ、髪が揺れる。

 アイリスはそっと耳にかけた。


 そうだ、また来ればいいんだ。

 羊羹を一口切り分けて、口に放り込む。


 リオは食べないのだろうか。

 ほとんど減っていない食べ物を見て、アイリスは首を傾げた。


「……これまでは、一人の方が気楽だと思ってた」


 思わず、ごくんと羊羹を飲み込んでしまう。

 自分の思っていることを代弁された気がした。


 リオが、アイリスに向き直る。


「アイリス。正式に──パーティーを組まないか」


 ざあっと、風が吹き抜けた。

 ゆっくりと目を見開く。


 パーティーを組む。

 つまり、パートナーになるということか。

 それも、候補ではなく。正式に。


 心臓が高鳴る。

 誰かに必要とされて、こんなに嬉しかったのは初めてだった。


 迷いはなかった。


「……こちらこそ、よろしくお願いします」


 アイリスは、ぺこりと頭を下げた。


 リオがほっと息を吐く。


「よかった……断られたら俺はもう、一人で頑張るしかないと思ってた」


 それは、こちらのセリフだ。

 リオとパートナーになれないなら、他の誰かではきっと物足りないだろう。


 それほどまでに、リオと一緒に戦うのは楽しく、刺激的だった。


「じゃあ、今日から相棒ということで」

「ああ」


 互いの拳をこん、とぶつけて笑い合う。


 その瞬間、何かがそっと動き出した。

 けれどその風は、まだ誰にも感じ取れないほどに穏やかだった。


 *


 その日の夜は、部屋に酒を持ち込んで二人で飲んだ。

 こんなふうに男性と飲むのは初めてだったが、とても楽しかった。


 ツマミは、リオがもらった指南書だった。

 二人で頭を突き合わせ、あれこれと意見を出し合う。


 気づけば、指南書の内容から脱線していた。

 答えを探すより、並んで考えている時間そのものが楽しかった。


 アイリスは杯を揺らした。

 自然と笑みが浮かぶ。

 魔法の可能性の大きさに、ときめいた。


「いいですね。私も必殺技みたいなのがほしくなりました」

「いいな、ぜひ作ろう。どんなのがいい?」


 リオが口角を上げた。

 杯を持って、身を乗り出す。


「なんなら、武器も弄ってもいい」


 すぐに紙を取り出し、アイリスの細剣の図を描き始める。

 細部までしっかり再現されていて、いつの間にそこまで見ていたのだろうと、くすりと笑った。


「えっとですね……」


 アイリスは、リオを見ていて思いついた派手な技を提案する。

 リオが笑顔で賛同しながらそれを書き起こす。

 本当に実現できそうで、アイリスは思わず吹き出した。


 酒の勢いも相まって、大盛り上がりだった。

 窓の外では夜風が鳴り、二人の笑い声が静かに溶けていった。

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