第7話 結成
琥珀餅を食べ終わり、続いて桜羊羹を取り出す。
紫色の塊の中に、ピンク色の花弁が閉じ込められている。
「桜という花があるんですね。見てみたいな……」
よく知るピンク色と違い、淡くて綺麗な色だった。
「また、来ればいい」
リオが呟く。
風に吹かれ、髪が揺れる。
アイリスはそっと耳にかけた。
そうだ、また来ればいいんだ。
羊羹を一口切り分けて、口に放り込む。
リオは食べないのだろうか。
ほとんど減っていない食べ物を見て、アイリスは首を傾げた。
「……これまでは、一人の方が気楽だと思ってた」
思わず、ごくんと羊羹を飲み込んでしまう。
自分の思っていることを代弁された気がした。
リオが、アイリスに向き直る。
「アイリス。正式に──パーティーを組まないか」
ざあっと、風が吹き抜けた。
ゆっくりと目を見開く。
パーティーを組む。
つまり、パートナーになるということか。
それも、候補ではなく。正式に。
心臓が高鳴る。
誰かに必要とされて、こんなに嬉しかったのは初めてだった。
迷いはなかった。
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
アイリスは、ぺこりと頭を下げた。
リオがほっと息を吐く。
「よかった……断られたら俺はもう、一人で頑張るしかないと思ってた」
それは、こちらのセリフだ。
リオとパートナーになれないなら、他の誰かではきっと物足りないだろう。
それほどまでに、リオと一緒に戦うのは楽しく、刺激的だった。
「じゃあ、今日から相棒ということで」
「ああ」
互いの拳をこん、とぶつけて笑い合う。
その瞬間、何かがそっと動き出した。
けれどその風は、まだ誰にも感じ取れないほどに穏やかだった。
*
その日の夜は、部屋に酒を持ち込んで二人で飲んだ。
こんなふうに男性と飲むのは初めてだったが、とても楽しかった。
ツマミは、リオがもらった指南書だった。
二人で頭を突き合わせ、あれこれと意見を出し合う。
気づけば、指南書の内容から脱線していた。
答えを探すより、並んで考えている時間そのものが楽しかった。
アイリスは杯を揺らした。
自然と笑みが浮かぶ。
魔法の可能性の大きさに、ときめいた。
「いいですね。私も必殺技みたいなのがほしくなりました」
「いいな、ぜひ作ろう。どんなのがいい?」
リオが口角を上げた。
杯を持って、身を乗り出す。
「なんなら、武器も弄ってもいい」
すぐに紙を取り出し、アイリスの細剣の図を描き始める。
細部までしっかり再現されていて、いつの間にそこまで見ていたのだろうと、くすりと笑った。
「えっとですね……」
アイリスは、リオを見ていて思いついた派手な技を提案する。
リオが笑顔で賛同しながらそれを書き起こす。
本当に実現できそうで、アイリスは思わず吹き出した。
酒の勢いも相まって、大盛り上がりだった。
窓の外では夜風が鳴り、二人の笑い声が静かに溶けていった。




