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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第5章 共鳴の刻
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第6話 二人の昼

 いそいそと指南書を片付けるリオ。


「武器の呼称、知らなかったんですか?」


 尋ねると、リオは頷いた。

 頬を緩めて柄にそっと手を添える。


「これは、友人と作ったんだ。……まさか実在するとは思わなかった」

「友人……」


 そういえば、前にも会話の中で友人の話が出てきた気がする。


「また紹介するよ。アルヴェルも、君のことは気に入ると思う」

「アルヴェルさん、ですね」


 アイリスは頭の中でその名を何度か繰り返した。

 覚えておこう。


「最初は驚くかもしれないけど」

「そうなんですか?」


 どんな人だろう。

 紹介してもらえるのが楽しみだ。


「ということは、剣……じゃなくて、刀の使い方は我流なんですか?」

「ああ。アイリスは?」


 笑顔を浮かべたまま、時間が止まったように感じた。

 一瞬、世界から音が消える。


 昨日から、どうしても両親のことを思い出してしまう。

 音が戻ってくる。


「……父に、教わりました」

「そうか。きっと腕のいい剣士なんだろうな」


 リオが目を細める。


 アイリスは小さく頷き、視線を落とす。

 そう、腕のいい剣士だった。


 リオがパン、と手を叩いた。


「さて。ご馳走する約束だけど、苦手なものはあるか?」


 アイリスはしんみりとした想いを振り払う。


「いえ、特には。でも、せっかくなので珍しいものが食べたいです」


 珍しいもの、とリオが呟く。


「それじゃあ、適当に歩くか」

「賛成です」


 自然と声が弾む。


 食べ物はどれもおいしそうだった。

 本当は全部食べたかったが、迷った末、店先で売っていた桜羊羹と、屋台の琥珀餅を買う。


 水路の脇にあるベンチに座り、出来立ての琥珀餅を取り出す。

 透明感があって、光を当てると淡く輝く。

 まだ少し熱い。ひと口齧って引っ張ると、みょーんと伸びた。

 初めての感覚に、アイリスは目を丸くする。


 小さく笑う声が聞こえて、餅を咥えたまま隣を見た。

 リオが肩を震わせていた。


 噛み切って咀嚼し、琥珀餅を体の後ろに隠す。


「なんです?あげませんよ」

「いや……先輩もこんな気持ちだったのかなと思って」


 アイリスは瞬きする。


「誰ですか?」

「学園でひとつ上だった人だよ。ユリウスという名前なんだけど」


 ユリウス。その名は聞いたことがあった。


「すごい水魔法の使い手なんですよね。支援が得意で、狩人内では引く手数多だとか」

「そう!本当にすごい人なんだ」


 リオがパッと笑う。随分嬉しそうだ。


「その人とは組まないんですか?」

「昔、振り回しすぎて拒否されてるんだ」


 そう言いながら、肩を落とす。


 一体、何をしでかしたんだか。

 アイリスは心の中で、ユリウスに同情した。

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