第5話 朝の光の中で
朝の光がカーテンの隙間から差し込み、部屋の中に柔らかな金色が満ちていた。
ぐっすり眠れたアイリスは、体を起こしてぐっと伸びをした。
宿代も浮くし、案外ありかもしれない。
そんな考えがふと頭をよぎった。
隣を見ると、リオはまだ眠っていた。
屋根の上で熟睡できるはずもない。きっと、疲れていたのだろう。
そう思いながらも、なぜか目が離せなかった。
髪が頬にかかっている。思いのほかあどけない寝顔だった。
ミレーユが大喜びしそうだ。
目が覚めてすぐにこんなものを見たら……身が持たないかもしれない。
アイリスはそっと立ち上がった。
ぎりぎりまで寝かせてあげよう、そう思った。
*
二人分の朝食を持って戻ると、リオがベッドの上で体を起こしていた。
どこかぼんやりとしている。
「起きました?おはようございます」
「ああ……おはよう」
リオがこちらに視線を向けた。
ほどかれた一束の髪が、さらりと肩を流れる。
「食べられます?」
「ん……」
リオの動きは随分と緩慢だ。
「ちゃんと眠れました?」
心配になった。
朝食の入った包みを渡すと、リオは受け取りながら小さくあくびをする。
「昨日拾ったお宝……どんなものがあるかと考えていたら、あまり眠れなかった」
アイリスは何度か瞬きをして、思わず吹き出す。
「なんですか、それ」
「いや、気になるだろう。それなのに、ほとんど君が持っているから確認できないし……」
リオがどこか恨めしそうな目を向けてくる。
ああ。触れないと約束してしまったから。
アイリスは口元を押さえた。笑いを堪えるのに必死だった。
帰ってからと言ったのに、待ちきれないらしい。
リオの影響で、アイリスも少し楽しみになった。
拝啓、お母さん。
男は獣ではありませんでした。
*
朝食を食べて、アイリスはリオとともに街へ繰り出した。
あちこちから穏やかな音色が聞こえ、自然と足取りも軽くなる。
店先に並ぶのは目新しい物だらけだ。
「あれ?兄ちゃん」
武器を扱う店の店主が、リオに声をかけた。
「それ、刀じゃないか」
「刀?」
リオが問い返す。
「おう。ここいらじゃ、たまに見かける武器だよ。ちょっと見せてみな」
リオが腰から鞘ごと引き抜き、店主に渡す。
受け取った店主の腕がぐっと下がった。
店主は目を丸くする。
「随分、重いなあ」
ゆっくり、鞘から刃を引き出す。
白銀の金属が、陽光を受けて光る。
「なんだ?この金属」
「特注なんです」
店主がリオに武器を返す。
「いやあ、いいもん見せてもらったな。礼と言ってはなんだが……」
店の奥へ駆け込み、ほどなく戻ってきた。
「これ、持っていきな。刀を使う、とある流派の指南書らしいんだが。俺が持ってても宝の持ち腐れなんでな」
「いいんですか?」
受け取るリオに、店主が頷く。
「武器を大事にしてるあんたに使われたら、幸せだろうよ」
リオがふっと口元を緩める。
アイリスはリオの武器をじっと見つめた。




