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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第1章 揺れる影と初めての光
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第3話 黒影の出会い

 それから数日が経った。

 新しいパートナー候補を紹介したい──そんな連絡を受けて狩人本部へ向かう。


 足は重かった。


 今度こそ。きっと今度こそ──そう自分を元気づけてきた。

 でも、そろそろ限界だった。

 もうこのまま、ずっと独りでもいいかもしれない。

 瘴気に関わらない依頼なら、誰かと一緒である必要はないのだから。


 けれど、そうなると夢を諦めなくてはいけない。

 アイリスは、両拳にぎゅっと力を込める。


 狩人のSランクになる──それが、アイリスの目標だった。


 もう誰も、目の前で失いたくない。

 そのためには、自分一人ではまだ力不足だと痛感していた。

 もっと強くならなければいけない。


 Sランクは全部で五人しか存在しない。どんな依頼でも受けられ、全てを救える希望の象徴。

 それこそがアイリスの夢だった。


 *


 狩人本部の扉を押し開けた。

 いつもより重く感じた。


 すぐに、誰かと会話していたサラが駆けてきた。

 アイリスは緩慢に顔を上げる。


「アイリスさん、待ってましたよ!……酷い顔ですね」


 笑顔だったサラの顔が曇る。


 ここ最近は、あまり深く眠れていない。

 アイリスは曖昧に笑った。


「実は、アイリスさんのパートナーについて、本気で上司に掛け合ってみたんです」

「え……?」


 予想外の言葉に、サラを見つめた。

 サラは、アイリスの手を握って引いた。


「そうしたら、まさかの最後の砦が来てしまいまして……」

「え?」


 頭に疑問符が浮かぶ。

 それでも、言っておきたいことがあった。


「私……年齢の近い人は、もう……」

「大丈夫ですよ!リオさんなら」


 サラが笑顔で言い切った。


 何なんだろう、その謎の信頼は。

 でもきっと、サラがここまで言うのだ。

 だいぶ年上の落ち着いた人なのだろう──そう思った。


 サラが導いたのは、先ほどまでサラ自身が話していた人の元だった。


 背にかけて、襟足の中央の一束だけが長く伸びている。

 柔らかなそれは小さく束ねられ、腰を越えてなお、ゆるやかに揺れていた。


 その人が、ゆっくりと振り返る。

 肩に届かない長さの髪が、動きに合わせて揺れた。


 淡い金髪に柔らかな翠の瞳、まるで太陽のような人だった。

 思わずポカンとしてしまう。


 思っていたよりずっと若い。歳も、それほど離れていなさそうだ。


 体型は無駄のない筋肉が付いた細身。

 正直、この人は職業を間違えているのでは……と思わずにはいられなかった。


 アイリスの視線は、深い黒を基調とした戦闘服に向いた。


 膝下まで届く上着が軽く揺れ、動くたびに影が流れる。

 肩から胸にかけては黒革で補強され、左腕だけが長袖という非対称の造り。

 戦闘中の動きを計算した無駄のない形だった。


 腰には黒革の帯と鞘があり、揺れる二本の飾り紐がわずかに光を反射する。

 下は細身の黒いズボンに膝下までのブーツ。


 全体が闇に溶けるような静かな黒で統一され、彼の冷静さと研ぎ澄まされた気配を際立たせていた。


 実力はありそうだ。

 だが、どうしても躊躇いが生まれる。

 アイリスは足を踏ん張り、逆にサラを引っ張った。


「サラ!嫌だよ、私はもう……」

「え?リオさんですよ?ほら、あのリオさん」


 どのリオさんだ。

 アイリスは焦る。


「誰、この人」


 サラがカッと目を見開く。


「知らないんですか!?狩人の長(マスター)の息子にして守(も)り人の相談役、Sランクのリオさんですよ!?別名初こ……ケフン。この情報は余計でしたね」

「はあ……」


 なんという情報量。

 狩人の長(マスター)の息子──。


「ちょっと待って!アレンさんの息子ってこと!?」

「そうですよ、なんで知らないんですか!」


 知るわけがない。

 そもそもSランクの人に会う機会など、ほぼないのだから。


「五人しかいないんだから、覚えておいた方がいいって言いましたよね!」

「う……」


 アイリスは言葉に詰まる。

 だがすぐに次の疑問が湧く。


「守り人って?」

「三年前に三権の中立者として立った方です!」


 三権──狩人、聖導教会、魔法局のことだ。

 確かに三年前、中立の観察者が発表されていた……気がする。

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