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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第5章 共鳴の刻
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第2話 交わる刃

 視界を奪われ、瘴気魔獣の動きが鈍る。


「助かる!」


 リオの声に、アイリスは口角を上げた。


 リオが右前脚の腱を断つ。

 魔獣の体が傾く。


 その隙を逃さない。


 飛び上がる。

 掲げた手に煌めく氷柱を、上顎に叩き落とした。


 氷柱が魔獣の顎を貫く。

 悶え苦しむ叫びを浴びながら、アイリスは着地した。


「これで、目と口は封じました!」


 あとは、爪だけを捌けばいい。そのはずだった。


 魔獣の尾が空気を切り裂く。

 アイリスは咄嗟に剣を抜き、受け流す。

 衝撃が腕に走り、唇を噛む。


 尾はそのまま床を薙ぎ、砂塵を巻き上げた。


 リオが一瞬の迷いもなく跳び込む。

 振り下ろされる尾を、体をひねってかわす。

 着地と同時に旋回。

 鋭い一撃が尾の付け根を斬り払った。


 切り落とされた尾が地を叩いた。


 そのまま踏み込み、左前脚を薙ぐ。

 床を蹴り、巨体の脇を駆け抜けながら斬撃を重ねた。


 魔獣が後ろに跳ね、体勢を立て直そうとする。

 だが、両前脚の傷がその動きを妨げる。


 手を緩めず、次の連続攻撃へ──駆け、斬り、跳ぶ。

 白刃が絶え間なく巨体を刻み、リオは重力を忘れたかのように舞う。


 詠唱を続けるセイルに魔獣が頭を向ける。

 リオが脇腹を切り裂いた。

 魔獣の意識が再びリオへ向く。


 セイルは詠唱を止めない。


 アイリスはリオの動きに目を奪われた。

 まるで風そのものが舞っているかのようだった。


「浄化の準備、できました!」


 セイルの声で我に返り、再び地面を蹴る。


「首を落とす!」

「はい!」


 リオが魔獣の右側面で腰を落とす。

 アイリスが反対の左側面で跳ぶ。


「──ホーリーライト!」


 空間にまばゆい白銀の光が広がる。

 魔獣の纏っていた瘴気が、ジュッと音を立てて塵になる。


 魔獣が苦悶の唸り声を上げる。


 リオが下から豪快に斬り上げる。

 同時に、アイリスも上から鋭く振り下ろした。

 交差するその一瞬、魔獣の太い首は逃げ場を失い、二本の刃が正確に頂点で交わった。


 重厚な音とともに獅子の首が落ち、風が巻き上がる。

 切断の感覚が腕に伝わる。錆びた鉄の匂いが一瞬だけ鼻をつき、消えた。


 刃が鞘に戻る音が二回響く。


 一瞬の静寂。

 瘴気魔獣の威圧は消え去っていた。

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