↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
第2章 信頼の始まり
PR
14/50

第4話 白鹿の森で

 白鹿が生息する森にやってきたアイリスは、すぐに気配を消した。


 白鹿の特徴を表す言葉がある。

 ──十メートル先にいても逃げられる。


 これは誇張でも何でもない、事実だ。

 気配を消しても、五メートルくらいまで近づけば気づかれる。

 だから気づかれる前に息の根を止めるしかないのだ。


 アイリスは背後を振り返る。

 気配の欠片すらないリオが、のんびり森を眺めて歩いている。


「……実は暗殺者です、とか言わないですよね」


 気配を消す技術が完璧すぎる。落ち着かない。

 疑いの目を向けると、リオはふっと笑った。


「人を手にかけたことはない」


 それならよかった。でも、納得はいかない。


「どうやって学んだんですか?」


 問うと、リオは少し遠くを見るような目をした。


「……父の特訓に耐えかねて、逃げ出したときに自然と」


 リオが逃げ出すほどの特訓。

 狩人の長(マスター)、誰もが最強と認める存在すら欺く隠密技術。


 アイリスは言葉を失った。

 頭が痛くなってきて、すぐに考えるのをやめた。


 *


 しばらく歩いていると、リオがはたと足を止めた。

 訝しんで振り返ると、リオは森の一点をじっと見据えている。


「見つけた」


 驚き、慌ててリオの視線の先を探る。

 確かに、白鹿らしき気配があった。


「すごいですね、索敵力も高すぎじゃないですか?」


 改めて、Sランクの実力に圧倒される。


「簡単なことだ、薄い魔力を常に張り巡らせるといい」

「薄い魔力?」


 アイリスはじっとリオに目を凝らす。

 確かに、じっくり見れば非常に薄い魔力の揺らぎが確認できた。


「……器用ですね。範囲はどのくらいですか?」

「今は五十メートルくらいかな」


 アイリスはむせた。


「待ってください……まさか街中でも?」


 恐る恐る尋ねると、リオが困ったように笑う。


「まさか。普段は逆に、自分に魔力で圧をかけて鍛えている」


 開いた口がふさがらない。

 つまり、街にいるときは身体負荷を上げて身体を鍛え、依頼時は広範囲索敵を実施していると。


「……ふざけてますね」

「ひどいな、実用的と言ってほしい」


 そんな実用があってたまるか。


「ただ日常動作をしているだけで運動になるんだ。合理的だろ?」

「ああ……はい、そうですね」


 諦めたように返すが、確かに合理的だ。

 ──真似してみようかな、と思う。


「それで。今日は俺に任せてほしいんだけど、構わないか?」


 アイリスは頷いた。

 リオの実力を、自分の目で確かめたかったからだ。


「首を落とす、で問題ないかな?」

「はい。……なんでそこは知ってるんですか」


 薬草の採り方は知らないくせに。

 アイリスが呆れた目を向けると、リオはただ笑顔を返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。