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亡国の宰相 〜昭和の豪腕政治家が蘇る〜  作者: けんけん


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23/30

第23話 最後の頼み

国会質問の翌日。


朝のニュースは、御堂一色だった。


幹事長辞任要求。党内の離反。スポンサー企業の撤退。メディアの集中砲火。


御堂慎一郎の政治生命は、事実上終わっていた。


しかし御堂は記者会見に現れ、静かに言った。


「私は何も知らない。調査に全面的に協力する」


その顔に、動揺はなかった。


テレビを見ながら、美咲は言った。「信じられない。あれだけの証拠があって」


「政治家は最後まで諦めない」剛造は言った。「それは悪いことじゃない。しかし御堂の場合は、方向が違う」


「どう違うんですか」


「国民のために諦めないのではなく、自分のために諦めない」


美咲は手帳に書いた。


「田島さん、御堂は次に何をしますか」


「プロジェクト・レガシーだ」剛造は言った。「政治が終われば、あいつには別の目的しか残らない」


「不死化」


「そうだ。急ぐはずだ」


-----


その予想は、正しかった。


昼過ぎ、黒岩から連絡が来た。


「先生、御堂の部下が動いています。複数人が鎌倉方面に向かっています」


「わかった」


「先生、逃げてください」


「逃げない」


「先生!」


「黒岩、美咲を頼む。俺は別に動く」


「別に、とは」


「御堂に会いに行く」


電話の向こうで、黒岩が息をのんだ。


「先生、それは」


「罠だとわかっとる。それでも行く。御堂に最後の話をする必要がある」


「先生、体は」


「持つ」


「……わかりました。私も動きます」


剛造は電話を切り、美咲を見た。


「美咲、お前はここにいろ」


「嫌です」


「危ない」


「田島さんが行くなら、私も行きます」


「お前は」


「田島さんの傍にいることで、時間が延びるんでしょう」美咲は言った。「私が離れたら、もっと早くなる。だから行きます」


剛造はしばらく美咲を見た。


「……骨がある」


「そればっかり言う」


「本当のことだ」


二人は別荘を出た。


-----


御堂の部下から連絡が来たのは、夕方だった。


「田島剛造さんと、桐島美咲さんを、ご案内したい場所があります」


場所は、東京郊外の廃工場だった。


かつて御堂建設が所有していた施設だ。


「罠だな」と美咲は言った。


「わかっとる」剛造は言った。「しかし行く」


「なぜ」


「御堂はそこで、転写を実行しようとしている。俺の体内データを取ろうとしている。しかし俺が行かなければ、御堂は別の方法で動く。もっと多くの人間を巻き込む」


「だから、自分から行く」


「そうだ。御堂の土俵で戦う。それが最後の手だ」


美咲は剛造を見た。


「田島さん、一つだけ聞かせてください」


「なんだ」


「怖いですか」


剛造は少し間を置いた。


「怖い」


「私も怖いです」


「そうか」


「でも行きます」


「骨がある」


「もう慣れました」


-----


廃工場への道を、二人は歩いた。


夕暮れが迫っていた。


剛造は歩きながら、ふと立ち止まった。


「美咲」


「なんですか」


「一つだけ言っておく」


「はい」


「お前と一緒に動いてきて、よかった」


美咲は足を止めた。


剛造はまた歩き始めた。


美咲はしばらく立ったまま、その背中を見た。


「田島さん」


「なんだ」


「私も、よかったです」


剛造は振り返らなかった。


ただ、少しだけ足が遅くなった。


-----


廃工場に着いたとき、すでに御堂の部下が数人いた。


そして奥に、御堂慎一郎がいた。


昨日の記者会見とは違う顔だった。


政治家の顔ではなかった。


ただの、一人の男の顔だった。


「来てくれましたか」御堂は言った。


「ああ」剛造は言った。「話があるだろう」


「そうです」御堂は静かに言った。「田島さん、あなたに、最後の頼みがあります」




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