聖なる日のおくりもの
キャラの日常ショートです。
日本中の女の子が心躍らせるその良き日。
彼らの心境は微妙であった。
見て取れる明らかな畏怖の顔。
それは、先ほどの事に遡る──…。
「あ、」
「なに? どうしたの?」
それは、ボーっと部屋の一角を眺めていた揩の声に美夜が気付いた事から始まった。
「いや、なんでもねぇ」
問いかけた美夜から視線を外し、揩はテレビのリモコンをピッと押す。
「なんでもなくは無いでしょう?」
と問いかける美夜をあえて無視し
先日買ったゲームを機械にセットし、揩は己の世界へ入り浸る。
そう、ここは揩の部屋──…
先ほど、梨留と二人で雑談をする為に訪れたのだ。
神流と瀬識は雑務がある為別行動しているが、雑務が済めばこの部屋に来る予定だ。
部屋のテーブルには昨日神流が作ったレアチーズケーキとハーブティが置かれており、
その大半が既に梨留によって消えていた。
先ほどから、梨留は一人ケーキを黙々と平らげていた。
ついさっきまで自分も一緒に食べていたのだが、自分は梨留程甘い物は受け付けない。
キライじゃないが、同じ味の物を何個も連続で食べれる程胃は強くない。
よって先ほどから美夜は後からくる二人を待ってなんとなく時間を過ごしていた。
そんな自分にとって、揩の発したその一声こそ退屈な時間をやりすごす唯一の話題だったのだ。
言葉を封じ、己の世界へと入ってしまった揩。
時間だけがゆっくりと流れている様に感じる今。
何かする事が欲しかった。
ふと。
美夜は思慮をめぐらす。
(さっき揩は何をみてたんだろう?)
素朴な疑問だった。
どうせ聞いたところで揩は教えてはくれないだろう。
と、先ほど揩が見ていた場所へと視線を送る。
(・・・・・・?)
視線に映ったその先にはやたらとカスタマイズされたパソコンと、デスクの上にある小物数点。
それだけである。
(・・・・・パソコン?
な、わけないか。テレビ見てるし・・
はぐらかすなら見ない…よね? じゃぁ──…)
他に置かれているのはペンたて、メモ帳、カレンダー。
どれもこれも、さしてヘンな物はない。
(何みてたんだろ?)
気になり始めてしまったら止まらない。
美夜は色々模索していた。
(ん? そういえば今日って──…)
バレンタイン。
(…──じゃん。
・・・参加なんてあんまりしたことなかったから忘れてたけど・・・。
じゃあもしかして、見てたものってカレンダー?
あー、でもそ~いや神流やリィフィンにはすっごくお世話になったよねぇ。
・・・・揩はどうでもいいけど。
時間もあるし、日ごろの感謝を込めてなんかつくるかなぁあ。)
雑務が長引いているのか神流も瀬識も未だにこない。
このままじっとしているのは性に合わないし、感謝の意を表すのにも丁度いい。
(よぉし、決めた!!)
「ねぇりるちょっとい?」
と、美夜は梨留に声をかける。
「はぁひ、ひあ?」
「・・・口の中飲み込んでから話すよ・・・」
「んぐぐ。はくはく。んっ。」
ごっくん。
「なぁに?みや??」
両方いっぱいに頬張っていたケーキをやっとの事で飲み込んで、梨留は美夜へと首をかしげた。
「──…お菓子。作るの得意だったよね?
悪いんだけど、教えてくれる?」
そして、悪夢は始まったのだ。
* * * * * *
いくばくかの時がたち、二人は台所へと身を置いていた。
チョコレートケーキを作ろうということになり、
スポンジ担当が梨留でチョコレート担当が美夜という事で、それぞれが作業を進めていた。。
作り方は梨留の頭の中に存在するため、 全ての事は梨留が指示を出していた。
「あ、美夜~。そこのブランデ~少しだけいれて~?」
計量していた手を一瞬止めて、梨留は美夜へと指示をだす。
「ブランデ~?
ああお酒? 了解了解♪」
新たな指示を梨留に受け、美夜は戸棚の中からビンを取り出す。
「それからね~、、、、」
きょろきょろとあたりを見渡した。
途端。
ドボドボドボ。
耳慣れぬ音が発せられた。
・・・・・・・・・。
おそるおそる外した視線を美夜へと向ける。
「うっきゃぁ~。美夜何入れてるの~~~!!!」
「え?お酒いれるんでしょ?」
あっけらかんと言い放つ。
「もぉぉぉぉ! 入れるのはブランデ~だってばぁ~。
美夜が入れたの日本酒だよぉ~~っ!!
しかもそんなに大量にいれちゃだめだよぉ。」
ホンの少し、隠し味に使う程度でよかったのだ。
なのに美夜。。。
なぜドボドボと入れるのか。
美夜の手元にあるボールの中に入っている量ではチョコレートが固まってくれるのか、
正直怪しいところである。
「・・・。
まぁ同じアルコールだし問題ないない。大丈夫!
きっとそのうち蒸発するって!」
「問題ありありだってばぁ~~~☆
っも~、美夜ってば。
いつも言ってるでしょぉ!適当にいれないでよう~!!
これのどこがちょとなのぉ???」
「えー? ちょっとじゃん? ビンに対して」
言葉の意図する対象が.ものの見事に違っていた。
「・・・ッ、もう、いいよ、仕方ないからケーキはチョコじゃなくってクリームかけよぅ!
じゃぁこれに砂糖いれて角立てといて~。梨留スポンジのアレンジしてるから~。」
梨留は冷蔵庫奥に眠っていた生クリームを、別のボールに入れて美夜へと渡す。
アクシデントで予定変更。
チョコレートは使えなくなってしまったが、まぁ仕方ない。
味のバランスが変わる為、多少スポンジにもアレンジを加えるが、
作れるだけ、ましというもの。
角だてるくらいなら誰にもできるしと、梨留は美夜に仕事を任す。
「はいはい。これまぜればいいのね?」
と、手元に置かれた粉をスプーンですくう。
「そうそう、砂糖まぜて・・・・って美夜!ちょっとまって~~!!!」
「え?」
振り向いたけれど時はすでに遅かった。
ボトン。
すくった粉を美夜はボールに入れ終えて、既にシャカシャカと混ぜていた。
「あ~~~~~~~~~~~!!」
脳裏を突き抜けるほどの大声で。
梨留の声が部屋全体にこだまする。
「・・・何?」
「・・・今入れたの・・・塩じゃない??」
さきほど美夜が入れた粉。。。
自分の記憶が確かなら、あの結晶体は塩である。
「へ? だってこれっていったの梨留じゃん?」
「・・・梨留は砂糖って言ったよぅぅ。。。
も~美夜ってば、ちゃんと確認してからいれてよね~。」
美夜をぐしぐしとせめつつ砂糖であることを願いながら梨留はクリームに手を伸ばし、
指先についたクリームをペロリとなめた。
「・・・・あぅ~。やっぱりぃ。。。。
このクリーム、ショッパイよぅぅ。」
「まぁまぁ、塩も砂糖もかわんないって!」
「変わるってばぁ~!
う~。このクリームもつかえないよぅぅ。。。
・・・もう、みやってば大雑把にも程があるって言葉あるでしょぉ?」
台所から発せられる二人の声に引き寄せられて
神流は揩とリィフィンが集う台所隣の居間へと来ていた。
先ほどから、そんな彼らの耳に届く声。
どんなものが出来上がるのか。
それが出来上がってきたときに、一体どんな味に仕上がってるのか。
想像つかない物への恐怖は強い。
逃げたい──…
と、彼らは静かに心の中で呟いていた──…。
聖なる日の贈り物:web初出は多分…2003年2月14日
──以下執筆当時の後書き一部抜粋──
ちなみに内容ですが、かなりぶっ飛んだできかとおもいます
倫音、こういうくだらない話?大好きなんです(苦笑)
せっかくの設定なのに作中で使われる機会がなさそうなので、こんな形で利用してみました。
料理音痴な美夜と、お菓子作りが大好きな梨留の図です。
一応この後梨留が機転をきかし男性陣に配られたバレンタインのお菓子はそこそこ食べれる物に仕上がったみたいです。
というかスポンジに更にアレンジを加えてトッピングなしにしたみたいです
何のケーキになったかは皆さんの想像にお任せします。
まぁチョコとクリームはさすがに使えないですもんね。
というか誰も食べたくないのでわ・・・?
ちなみに題名。当初は「最厄の日」だったんですが、あまりに内容が推測できるモノだったので、「聖なる日のおくりもの」に落ち着きました。
続編でホワイトデー編も機会があれば執筆してみたいです。
時間があれば・・・ですけどね。
──さいごに。──
こちらの事情で掲載が遅くなりました…。
前回、キャラ紹介編にて月末辺りの更新。とかいたら、
月初めにちらほらアクセスがあったようで…。
わざわざ見に来てくださった方、ありがとうございました。
そして掲載が遅くなってすいませんでした。
ちなみにホワイトデー編は結局当時かきませんでした。




