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元カノに刺されて始まった十度の転生:やる気ゼロのグダグダ旅なのに、なぜか世界を救ってしまう件  作者: 凪塩 未来


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第19話:世界は平和に、しかし主人公は逃げ出す

第19話をご覧いただきありがとうございます!


魔王城が崩壊し、見事に世界が救われた(?)ものの、王国からの盛大な表彰やめんどくさい式典から逃れるため、ルイス一行はまさかの「昼逃げ」を敢行!? どこまでもマイペースな主人公たちの逃避行をお楽しみください!

「まさか、本当に魔王城が崩壊して……世界が救われちゃったんですぅ……?」


魔王城のふもとに広がる平原。

青空の下、ルルアは信じられないといった様子でポカンと口を開け、すでに崩壊を始めていた黒曜石の巨塔を見上げていた。その隣でエリスも、自分の剣を鞘に納めながら深い息をつく。

「あれだけの激戦――っていうか、後半はただの神様との喧嘩だった気がするけど……とにかく、魔王軍は完全に沈黙したわ。これで、この世界にも本当の平和が訪れたのね」


その言葉通り、遠くの空を覆っていた不気味な紫色の雲は綺麗に晴れ渡り、暖かな陽光が大陸全体を包み込んでいた。

世界は救われた。誰もが待ち望んだハッピーエンドである。


――だが、当事者である本人はというと。


「……よし、今のうちに逃げるぞ」

「えっ?」

「荷物はまとめたか、エリス、ルルア。王国軍の使者が『英雄様を表彰します! 首都へご凱旋を!』とか言って押し寄せてくるまで、あと十分ってところだ。あんなめんどくさい式典とかパレードに付き合わされたら、俺は精神的に死ぬ」

「ちょっと、ルイス! せっかく世界を救った英雄なんだから、盛大に祝ってもらいなさいよ!」

「冗談言うな。またあんな王宮に連れていかれて『次の統治者になってくれ』とか『勲章を授与する』とか言われた日にたまったもんじゃないね。俺は静かに、誰にも気づかれない田舎の宿で、昼まで寝て暮らしたいんだよ!」


ルイスはすでに旅装を完璧に整え、大きな荷物を背負っていた。その足取りは、魔王と戦ったときよりもはるかに素早く、そして必死だった。

「ほら、ぐずぐずしてると捕まるぞ! 夜逃げの準備はいいな!」

「もう……本当にしょうがない人ですねぇ……」

エリスは呆れたように苦笑いを浮かべながらも、どこか楽しそうに肩をすくめた。ルルアも「先輩らしいといえばらしいですけど……!」と言いながら、トコトコとルイスの後を追いかける。


こうして、世間が「英雄の凱旋と世界平和の祝賀ムード」に沸き立つ中、肝心の英雄一行は、誰にも告げずにコソコソと街道を外れ、別の地方へと盛大に夜逃げ(昼逃げ)をかましているのであった。


――そしてその頃、神界の跡地(復旧中)。

世界の神は、粉々に砕け散ったモニターの残骸を片付けながら、全身を震わせてこう絶叫していたという。


『――おのれルイス=クラウドォォォッ!! 次こそは! 次こそは絶対に、私の思い通りの感動的な大冒険をさせてやるからなァァァ!!』


神の怒りの絶叫は、空のかなたへと虚しく響き渡るだけであった。

ルイスたちの足取りは軽い。相変わらずやる気はないし、疲労も蓄積している。それでも、面倒な義務から逃げ出した彼らの背中は、なぜか少しだけ自由に見えたのだった。

第19話「世界は平和に、しかし主人公は逃げ出す」をお読みいただきありがとうございました!


英雄として祭り上げられる前に全力でトンずらする、いかにもルイスらしい結末となりましたね。エリスやルルアもすっかりペースに巻き込まれて、すっかり「ぐだぐだ旅仲間」として定着しているのが微笑ましいところです。

さて、物語はいよいよ最終話へ! 十一度目の世界を駆けたルイスの結末と、終わらない日常の行方とは――? 次回、最終話をお楽しみに!

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