第18話:空気を読まない神の介入と、不本意な決着
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お茶会ムードから一転、神様の理不尽な強制介入によって魔王ザクスがまさかの暴走状態へ突入!? ドラマチックな決戦を無理やり演じさせようとする神に対し、ルイスが繰り出す「面倒くさがりな一撃」の行方は――?
圧倒的な実力とシュールさが交差する第18話、ぜひお楽しみください!
「いや、本当に助かったよ……。これでやっと、あの果てしない書類仕事から解放されるわけだな」
魔王ザクスは、玉座の脇の床に大の字になって仰向けになりながら、どこか晴れ晴れとした顔で天井を見上げていた。戦闘の緊張感はゼロである。むしろ、定年退職を迎えたサラリーマンのような清々しさが漂っていた。
「ああ。これで俺も、やっと静かに眠れる……はずだ」
ルイスもまた、神話級の魔剣を床に放り出し、椅子の背もたれに深く体を預けて大きく息をついた。
エリスとルルアは、すでに戦う気力を失った元凶二人を前に、地面にペタリと座り込んで脱力していた。
「……なんだか、ものすごく拍子抜けですけど……これで世界は平和になるんですよね?」
「だといいけどな。あのお怒りの神様が、このまま大人しく引き下がるかどうか……」
ルイスが嫌な予感を覚えたその瞬間だった。
――ズギャアアァァンッ!!
つい先ほどルイスが物理で粉砕したはずの天井が、今度は完全に爆発四散した。
降り注ぐ瓦礫の中、神界から直接投影された巨大な「神の眼」の立体映像が、空中にぎらぎらと出現する。その瞳は怒りと狂気に満ち、大地を揺るがすような音声が玉座の間に轟いた。
『――よくも私を! この世界の理を司る神を侮辱したな、ルイス=クラウド!! ドラマチックな最終決戦を台無しにし、魔王と馴れ合い、挙句の果てに通信回線を破壊するなど……許されると思うな!』
「あーあ、やっぱりキレ直してきたよ。めんどくさ……」
ルイスが耳をほじりながら面倒くさそうに顔を背ける。
『もうよい! お前たちの自由意志など知らん! 魔王ザクスよ、我が神罰の力を与えてやる。暴走せよ! すべてを滅ぼせ! そしてルイス、お前をその手で地獄へ叩き落としてやる!!』
ゴゴゴゴゴッと、魔王ザクスの体が禍々しい黄金色の神聖な炎と、漆黒の闇の魔力が入り混じった不気味なオーラに包み込まれた。
「ちょっ、まっ、勝手に体に火をつけんな! 熱っ! おい、これめちゃくちゃ苦しいぞ!?」
ザクスがもんどり打って床を転げ回る。神の強制介入によって、理性を無視した「暴走状態」に無理やり引きずり出されてしまったのだ。
「あーあ、せっかくの定年退職ムードが台無しじゃねぇか」
ルイスは盛大にため息をつき、床に放り投げていた魔剣を片手でダルそうに拾い上げた。
「ルイス先輩! 魔王様が完全に怪物になってますぅ!」
「どうするのよこれ!?」
エリスとルルアが慌てて武器を構え直す。
「どうするも何も……あのクソ神が余計なことするから、今日の予定が大幅に狂っただろ」
ルイスの目が、ほんのわずかに据わった。
十回の人生で蓄積された疲労と、いま邪魔された平穏への苛立ちが、十一次元の理外の魔力となって一気に沸騰する。
「お前ら、ちょっと耳を塞いとけ」
ルイスが、ただ一歩、踏み出した。
――次の瞬間。
世界が、一瞬だけ「無音」になった。
風が止まり、雷が消え、空間そのものが恐怖で凍りつく。
ルイスが振るった魔剣の軌跡は、目で追うことすらできない。ただ、銀色の細い線が闇をひと薙ぎしただけだった。
――ズアッ……!!
神の強制介入によって暴走しかけていた魔王ザクスを包むオーラが、音もなく綺麗に両断される。
同時に、空中に浮かんでいた神の巨大な立体映像の中心に、ピキリと亀裂が入った。
『な……ばかな……。私の神罰の力を、ただの一振りの、しかも手加減した雑な一撃で……!?』
「うるせぇよ。さっさと消えろ、ブラック上司が」
ルイスが吐き捨てるように呟いたその一言を最後に、神の立体映像はガラスのように粉々に砕け散り、二度と再生することのない深い静寂へと溶けて消えていった。
そして――。
「……ふぅ。やっと終わった」
ルイスの背後で、魔王ザクスが力なく床にペタリとヘタリ込んだ。強制暴走の反動か、服はボロボロだが、その顔はどこかすっきりしていた。
「……おい、ルイス。お前、相変わらず加減というものを知らないバケモノだな……」
「お互い様だろ。ほら、もう仕事は終わりだ。勝手に休んでいいぞ」
こうして、世界は再び(そして今回も勝手に)救われたのだった。
第18話「空気を読まない神の介入と、不本意な決着」をお読みいただきありがとうございました!
せっかくの和やかな定年退職ムード(?)を神様にぶち壊されたルイスが、キレて一刀両断する回でした。神様側の「思い通りにいかなくて発狂する感じ」と、主人公側の「ただ早く寝たいだけなのに邪魔をするな」という温度差が、この作品の持ち味ですね。ザクスも無事に(?)ブラック労働から解放されて何よりです。
さて、次回はいよいよ世界が平和になったその後の後日談と、十一回目の幕引きへ! お楽しみに!




