第17話:戦うはずが、なぜかお茶会になる魔王の間
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魔王とのまさかのお茶会が始まった矢先、天井を突き破って世界の神が直接激怒の降臨!? ドラマチックな戦いを強要する神様に対し、ルイスが選んだ「最強かつ最も面倒くさがりな反撃」とは――?
シュールと爽快感が入り混じる第17話、ぜひお楽しみください!
「いや、マジで聞いてくれよルイス。俺の前世なんて、毎朝満員電車に揺られて深夜まで残業する社畜だぞ。それが死んだと思ったら、神様に『お前、魔王の素質あるからよろしく』とか言われて、有無を言わさずこの暗い城に放り込まれたんだ。有給なんて一度も取ったことねぇ!」
「こっちはこッチで、元カノに刺されて死んだあとに十回も世界をたらい回しにされてるんだぞ。お前よりキャリア長い分、こっちの労働環境の方がブラックだわ」
魔王の間の中央に置かれた豪華な大理石のテーブルを囲み、敵対しているはずの勇者ルイスと魔王ザクスは、すっかり意気投合して熱い紅茶をすすりながら愚痴を言い合っていた。
「「やってられっか、あんなクソ神ども……!」」
二人揃って盛大にため息をつき、マグカップをガチャンとテーブルに置く。
「あの、すませーん……?」
戸惑いを隠せない様子のエリスが、恐る恐る手を挙げた。
「一応、私たち『世界を救うために魔王を倒しに来た勇者一行』なんですけど……。今、ものすごくアットホームなティータイムが始まっていませんか?」
「あ、そうだ忘れてた」
ルイスは振り返り、面倒くさそうに手をひらひらさせた。
「おい魔王、なんかそれっぽい戦闘のフリしてくれ。ほら、そこの二人がせっかくここまで気合入れて登ってきた手前、何もせずに帰るわけにはいかないだろ」
「マジか……。ええと、じゃあどうするよ? 適当に俺が『ぐはっ、勇者の剣技にはかなわぬ……!』とか言って派手に倒れたフリですればいいか?」
「いや、それだと後で上の神様から『手加減するな!』って雷が落ちてくるから、せめて形だけでも派手に爆発させてくれ。お互いのスキルで空間だけド派手に派手に演出してさ」
「なるほど、エフェクト強めのヤラセ演出ね。社畜の知恵の見せ所だな!」
魔王と勇者が、世界の運命をかけた戦いの場で「手際のいい偽装工作」の打ち合わせを始めるという、前代未聞の光景が繰り広げられていた。
ルルアは持っていた杖を地面にコツンと突き立て、遠い目をする。
「……なんか、私たちがこれまで命がけで登ってきた道のりは何だったんでしょうね……」
「知るか。まあ、早く終わるならそれに越したことはないけどさ!」
その時だった。
――ズウゥゥンッ!!
突如として、魔王の間の天井がメキメキと音を立ててひび割れ、真っ赤な稲妻が轟音とともに突き破ってきた。
天井から降り注ぐのは、怒号のような気圧と、頭が割れそうなほどの圧倒的なプレッシャー。
『――貴様ら……!!』
神界からの直接回線、しかも今回は立体映像のレベルを超え、世界の神が直接「怒りの降臨」を果たそうとしているかのような異常気象だった。
『何度目だルイス! そしてザクス! お前たちは与えられた役割を放棄し、こともあろうに敵同士で馴れ合うとは何事だ!! 決戦をしろ! ちゃんとドラマチックに、世界を揺るがす死闘を演じろ!! さもないと、今度こそこの世界ごと――』
神の怒りの声が、玉座の間に響き渡る。
あまりの神威に、エリスやルルアは「息が……できない……!」とその場に膝をついた。魔王ザクスも冷や汗を流しながら「うわ、本気でキレやがったぞあのクソジジイ!」と青ざめる。
だが、ルイスだけは違った。
彼は数々の世界で散々神様に理不尽な理由で怒られてきたのだ。耐性がつきすぎていて、恐怖よりも「あー、また始まったよ、このめんどくさい説教」という倦怠感しか湧かなかった。
「……うるさいな、人の休日のティータイムに大声出しやかって」
ルイスはボソリと呟くと、面倒くさそうに席から立ち上がった。
「ルイス……?」
「おい、やめる気か?」
ザクスが驚いた顔で見る。ルイスは腰の神話級の魔剣に手をかけ、やれやれと首を大きく鳴らした。
「なあ、神様。お前の描くシナリオ通りに動かないと気が済まないなら、そのめんどくさいお前の顔面を、ちょっとだけ目覚めさせてやってもいいか?」
ルイスが、十回分の人生で蓄積されたすべての理外の魔力を、ほんのわずかだけ解放した。
――ピキィッ……!
空気を切り裂くような音が響き、神界の神へと直結している神聖な通信回線そのものが、ルイスの放った「圧倒的な拒絶の気合」によって、ガラス細工のようにパキパキと音を立てて砕け散っていった。
『なっ……馬鹿な、私の回線を力技で直接――ぐわあああっ!!』
神の悲鳴を最後に、天井の赤い稲妻とプレッシャーは嘘のように綺麗に消え去り、魔王の間には再び静寂が戻った。
ぽかん、と口を開けてその光景を見上げていた魔王ザクスが、震える声で呟いた。
「……お前、今の……神様の通信、物理でぶっ壊したのか……?」
「あぁ、なんかうるさかったからな。さてと――」
ルイスはふぅ、と大きく息をつき、すでに戦意を完全に喪失している魔王ザクスを見た。
「続きをやるか? それとも、もうめんどくさいから、さっきのヤラセ演出通りに終わらせるか?」
ザクスは少しだけ呆けたあと、ふっとフニャリと笑った。
「……降参だ。こんなバケモノの相手、やってられるかよ。ほら、早く俺を倒して、このブラック魔王城から解放してくれ!」
こうして、史上最もグダグダで、最も神様を激怒させた「最終決戦」の幕が、静かに下りようとしていた。
第17話「戦うはずが、なぜかお茶会になる魔王の間」をお読みいただきありがとうございました!
神様との通話を「物理でぶっ壊す」という、ルイスのこれまでの経験値が爆発したような回となりました。エリスやルルアのツッコミも追いつかないほどのフリーダム展開ですが、主人公のブレない「めんどくさい」スタンスが一貫していて気持ちいいところですね。
次回はいよいよ、世界が平和(?)になってからの後日談と、十一回目の幕引きへ向かいます! お楽しみに!




