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元カノに刺されて始まった十度の転生:やる気ゼロのグダグダ旅なのに、なぜか世界を救ってしまう件  作者: 凪塩 未来


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第16話:十一人目の魔王との対面

第16話をご覧いただきありがとうございます!


ついに辿り着いた魔王の間。待ち構えていた十一人目の魔王との対面ですが……そこにおいたのは、世界を滅ぼす邪悪な覇王ではなく、日々の激務に疲弊しきった「元リーマンの同業者」だった!?

まさかの展開を迎える第16話、ぜひお楽しみください!

魔王城の薄暗い回廊を、エリスとルルアを従えてルイスはトボトボと歩いていた。

トラップの類はルイスの「めんどくさいな」という呟きひとつでなぜか勝手にショートし、道中に現れた魔物の群れも、ルイスの死んだ魚のような目を見ただけで「あ、関わっちゃいけない奴だ」と自主的に壁際へ退避していく。

結果として、戦闘らしい戦闘は一度も起きないまま、一行は城の最深部である「魔王の間」にたどり着いていた。


「……ここが、最上階……」

エリスがごくりと唾を飲み込み、愛用の剣の柄をしっかりと握りしめる。ルルアも杖を構え、いつでも魔法が撃てるように身構えた。

目の前には、十メートルを優に超える巨大な黒金の両開き扉があった。不気味な紫色の魔力がその表面をドロドロと這い回っている。


「じゃ、開けるぞー」

ルイスは特に緊張感のかけらもなく、片手でその重厚な扉をガリガリと押し開けた。


――ギィィィ……ッと、重く乾いた金属音が響く。


現れたのは、天井まで届くほどの巨大なステンドグラスから紫の月明かりが降り注ぐ、広大で静謐な玉座の間だった。

部屋の中央に置かれた禍々しい骨の玉座に、一人の人物が深く腰掛け足を組んでいる。

銀糸のような美しい長髪に、夜空の星を閉じ込めたような深い瞳。漆黒のドレスを纏ったその魔王は、角こそ生えているものの、想像していたような醜悪な怪物ではなく、むしろ端正な顔立ちをした気だるげな美女――いや、よく見ればどこか疲れた顔をした青年だった。


「……はぁ。また人間が来たのかよ。今月の侵入者、これで何組目だっけ?」

魔王はこめかみを押さえながら、盛大にため息をついた。その声には殺気どころか、底知れない絶望的な「疲労感」が満ちている。


「あ、れ……?」

扉の陰で身構えていたエリスが、思わず拍子抜けしたような声を漏らした。

「魔王って……もっとこう、世界を滅ぼすために狂喜乱舞してるような外道じゃないの……?」

「おいおい、勝手に俺をサイコパス扱いすんなよ」

魔王は片手をヒラヒラと振ると、玉座の脇に置いてあったマグカップから、温かい紅茶をずずーっとすすった。

「こっちはこっちで、毎日毎日、神様とかいうふざけた連中から『もっと世界を恐怖に陥れろ』『ドラマチックに勇者と戦え』って理不尽なノルマを押し付けられて、過労死寸前なんだよ。お前らみたいな侵入者が来るたびに書類仕事が増えるこっちの身にもなってくれ」


その言葉を聞いた瞬間、ルイスの背中に走ったのは緊張感ではなく、強烈な「シンパシー」だった。

――なんだこいつ。ものすごく、分かり合える気がする。


「……おい、お前」

ルイスは神話級の魔剣を地面にズズッと引きずりながら、魔王の目の前まで歩み寄った。

「ひっ!? 勇者、いきなり殺す気かっ!?」

「いや、そうじゃなくてさ。お前、もしかして……上から理不尽な命令ばっかされて、毎日めんどくせぇって思ってるタイプか?」

「……は?」

魔王は紅茶のカップを持ったまま、目を丸くしてルイスを見上げた。

「上って……もしかして、あの上の世界にいる、暇つぶしで世界を弄んでるクソ神どものことか……?」

「そうそう、それ。あいつら、こっちの都合も考えずに『シナリオ通りにやれ』『魔王を倒せ』『世界を救え』って、勝手なことばっか押し付けてくるだろ?」

「そうなんだよ! 俺だってもともと人間だったのに、死んだら勝手に魔王に指名されて、『お前は今日から悪のカリスマになれ』とか言われてよ! 休みなしのブラック労働だわ、配下の四天王は勝手に自分ルールで暴走するわ、もうやってられねぇんだよ!」


ガシャリ、と魔王が立ち上がり、ルイスの目の前まで歩み寄る。二人はまるで長年の愚痴を分かち合う社畜の仲間のように、ガッチリと手を握り合いそうになった。


「ちょ、ちょっと待って! なになに!? どういう状況!?」

エリスが頭にハテナマークを浮かべながら、剣を収めるべきか抜くべきか迷ってその場でジタバタしている。ルルアも「ま、魔王様と先輩が、仲良くお茶飲み友達になりそうな雰囲気ですぅ……?」と完全に混乱していた。


「おい、勇者。名前は?」

「ルイス・クラウド。十回死んで、今十一回目の人生だ」

「マジか。俺はザクス。魔王やってるけど、本当は田舎でスローライフ送りたかった元リーマンだ。九回死んで、今十回目の魔王やってる」

「同業者じゃねぇか……!」


こうして、世界を揺るがすはずの「勇者と魔王の最終決戦」は、開始早々、最悪のブラック労働環境に対する「労働者同士の愚痴大会」へと変貌を遂げたのだった。

だが、この和やかな(?)玉座の間の天井裏から、すべての元凶である世界の神が血眼になってこの光景を見下ろしていることなど、今の二人には知る由もなかったのであある。

第16話「十一人目の魔王との対面」をお読みいただきありがとうございました!


まさかの魔王=前世持ちの同業者(しかも向こうは魔王を10回やらされているブラック労働者)という斜め上の展開、いかがでしたでしょうか。ルイスの「めんどくさい」という気だるさと、魔王ザクスの「過労死寸前の愚痴」が奇跡のシンクロを起こし、戦うどころかすっかり意気投合してしまいました。

エリスたちの「私たち、何を見せられているの?」というツッコミが聞こえてきそうなシュールさです。


さて、このまま平和にお茶会でエンド……とはいかないのがこの世界の理。神様が黙っていません! 次回、いよいよ物語はクライマックスの怒涛の展開へ! お楽しみに!

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