第13話:いよいよ本拠地へ、旅の終わりの足音
第13話をご覧いただきありがとうございます!
エルフの森の平穏(?)を無理やり引き剥がされ、気づけば「魔王城のふもと」まで連れてこられてしまったルイス。やる気ゼロの主人公が、いよいよ最終決戦の地へ足を踏み入れる第13話、ぜひお楽しみください!
エルフの森での騒動から数日。
ルイスの「いつもの適当な一撃」によって、魔王軍の本隊は跡形もなく消し去られ、精霊の宝玉も無事に死守された。
「……はあ。疲れた」
木漏れ日の差すエルフの集落の広場で、ルイスは簡易ベッドに横たわりながら、この世の終わりのような深い溜息をついていた。
周囲ではエルフの戦士たちが「英雄ルイス様!」と手放しの賞賛を送り、ルルアは「さすが先輩ですぅ!」と目を輝かせ、エリスは「やれやれ、今回もうまく収まったわね」と呆れ混じりに笑っている。
だが、ルイスの心は全く晴れていなかった。
なぜなら、エルフの長老シフィリアが、周囲の熱気におされてとんでもないことを言い出したからだ。
「――魔王軍の本隊を退けた今、残るは魔王城に巣食う元凶のみ! 英雄ルイス殿、どうかこの世界を完全に救うため、魔王討伐の旅に出てほしい!」
(……は? なんでそうなるの?)
ルイスは耳を疑った。
せっかくエルフの森でしばらくぐうたらできると思ったのに、気づけば周囲は「よし、次は魔王城だ!」という謎の一体感に包まれている。
拒否権なぞ最初から用意されていないかのように、荷物は勝手にまとめられ、地図が押し付けられ、気づけば「世界を救う勇者一行」としてのルートが綺麗に敷かれてしまっていた。
こうして、ルイスの意思とは完全に無関係に、旅の足音はいよいよ「魔王城」という最大の面倒事へと向けて動き出してしまったのである。
それから数週間。
馬車に揺られ、時には歩かされ、ルイス一行はついに荒涼とした黒い岩肌が広がる魔王領のふたば――もとい、ふもとにたどり着いていた。
「うわぁ……空の色が完全に紫色のゾンビカラーですね……。空気もなんかこう、喉がイガイガする気がしますぅ」
ルルアが小さな杖を胸に抱えながら、おずおずと周囲を見回す。
「いよいよ魔王城の目と鼻の先ね。ここまで来たら、引き返すなんて選択肢はないわよ、ルイス」
エリスは腰の剣に手をかけ、気合十分といった面持ちで前方を睨みつけている。
その隣で、当のルイスは地面に突き立てた大剣(もちろんあの厄介な神話級の魔剣だ)を杖代わりにしながら、白目を剥きそうになりながら突っ立っていた。
「……帰りてぇ。今すぐあのフカフカのベッドに戻って、誰にも邪魔されずに丸一日寝ていたい」
「寝言は魔王を倒してから言いなさい! ほら、気合入れていくわよ!」
エリスにグイグイと背中を押され、ルイスは「あー、めんどくさい、めんどくさい、めんどくさい……」と呪文のようにボヤきながら、一歩一歩、重い足取りで魔王城への険しい坂道を登り始めるのだった。
十度目の人生でも、十一度目の人生でも、なぜか足向かう先はいつも魔王の足元。
果たして今回の魔王は、ルイスの「早く寝たいオーラ」にどれほど耐えられるのか。
どうしようもない旅の終着点が、今、静かに幕を開けようとしていた。
第13話「いよいよ本拠地へ、旅の終わりの足音」をお読みいただきありがとうございました!
周囲の盛り上がりを完全に無視して「早く帰って寝たい」としか考えていないルイスの温度差が、我ながらシュールで可愛いところです。エリスのスパルタ気味なリードと、ルルアのマイペースな同行に挟まれ、文句言いながらもちゃんと歩いているあたり、根の人の良さ(あるいは諦めの良さ)が出ていますよね。
さて、いよいよ物語のクライマックスへ向けて加速していきます。次回は、仲間たちとルイスの過去が少しだけ交錯する夜――第14話もお楽しみに!




