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元カノに刺されて始まった十度の転生:やる気ゼロのグダグダ旅なのに、なぜか世界を救ってしまう件  作者: 凪塩 未来


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第12話:エルフの秘宝と、面倒くさい決意

第12話をご覧いただきありがとうございます!


エルフの森の瀟洒な離れで、ようやく手に入れた平和なスローライフを堪能しようとしたルイスですが、そんな平穏が長く続くはずもなく――。

ついに魔王軍の「本隊」が「精霊の宝玉の間」を直接襲撃! 世界の崩壊を匂わせる脅し文句(?)に、ルイスが重い腰を上げる第12話、ぜひお楽しみください!

エルフの森の奥深くに広がる静かな一角。シフィリアたちの厚意(という名の恐怖と半ば強制的な厄介払い)により、ルイスたちは森の木々と同化したような、蔦の絡まる瀟洒な木造の離れをあてがわれていた。


「ほら、お茶が入りましたよぅ。先輩、ちゃんと休んでますか?」


ルルアが手際よく淹れてくれたハーブティーのカップを差し出すと、ルイスは窓際の木製の椅子にもたれかかったまま、盛大なため息をついた。


「あぁ、生き返る……。やっぱりコンクリートの王宮より、こういう湿った木の匂いのほうがよく眠れるわ。このまま永遠に起きたくない」


「永遠に寝られたら困りますぅ! せっかくエルフの里に落ち着いたんですから、もう少しシャキッとしてください!」


ルルアがぷくっと頬を膨らませる。その隣で、エリスが腕を組みながら窓の外の木々を警戒するように見つめていた。


「ルイス、のんびりしている場合じゃないわよ。さっきシフィリア長老が言っていた通り、魔王軍が狙っている『精霊の宝玉』の件、あれ絶対放置できないわよ」


「んー? 宝玉だか何だか知らないけどさ、俺たちに関係あるか? 盗みたきゃ勝手に盗ませとけばいいだろ。どうせろくなもんじゃないし」


「そういう問題じゃないでしょ! 宝玉が奪われたら、この森の結界が崩壊して、エルフたちが全滅するか人間界に雪崩れ込んでくるの! そしたら結局、私たちも巻き込まれて面倒なことになるでしょ!」


エリスの正論に、ルイスはぐっと言葉を詰マらせた。


――確かにその通りだ。面倒事を嫌うルイスにとって、「あとでさらに特大の面倒事が降ってくるフラグ」を放置するのは最悪の選択肢だった。


「……はぁ。なんで俺は、こうも次から次へと面倒くさい役回りに引きずり出されるのかね。前世の行いがそんなに悪かったのか……いや、元カノに刺されて死んだ時点ですでにマックスで不運だったわ」


十回の人生の記憶を思い出し、ルイスは頭を抱えた。どの世界でも、英雄になるつもりなど微塵もなかったのに、気がつけば周囲の状況が勝手に彼を祭り上げ、戦いの中心に押し上げてきたのだ。


その時だった。


ズウン、と足元の大地が低く唸りを上げた。


「――っ! この揺れは……!」


エリスが鋭く声を上げ、窓際に駆け寄る。


森の外縁部、本来なら強固な精霊の結界に守られているはずの方向から、禍々しい紫色の魔力の奔流が空を切り裂くように立ち上った。夜空の星々が、不気味な血の色に染まっていく。


「結界が破られた……!? まさか、あの程度の雑魚を片付けただけで終わりじゃなかったの!?」


ルルアが青ざめた顔で杖を握りしめる。


森のあちこちでエルフの戦士たちの慌ただしい足音や、警戒を促す角笛の音が響き渡り始めた。


ガチャリ、と扉が開き、そこに立っていたのはシフィリアだった。その美しい顔面は血の気が引き、呼吸も荒い。


「人間……! いや、ルイス殿! 申し訳ない、魔王軍の『本隊』が、結界の核心部である『精霊の宝玉の間』を直接襲撃してきた! 我々の戦力では、あの化け物たちを抑えきれん……!」


「ほう、本隊ねぇ……」


ルイスは椅子から立ち上がることもせず、だるそうに首を傾げた。


「私たちが守る聖域の宝玉が奪われれば、この大陸の魔力バランスが崩壊し、世界中が魔王軍の思う壺だ。頼む、あなたのもつその圧倒的な力で――」


「断るって言ったら?」


ルイスが冷めた声音で遮ると、シフィリアはぎゅっと拳を握りしめた。


「……そのときは、この森の民とともに滅びるだけだ。だが、あなたたちもこの森にいる以上、無事では済まない」


「……ほんと、脅し文句までテンプレート通りで嫌になるな」


ルイスはやれやれと頭をかき、腰のベルトに引っ掛けた、あの厄介な神話級の魔剣の柄にチラリと目をやった。


放っておけば、自分たちのスローライフの空間が文字通り消し飛ぶ。ここで逃げ出しても、どうせまた次の街で同じような面倒事に巻き込まれるのは目に見えている。


「分かったよ。……行けばいいんだろ、行けば」


ルイスは重い足取りで立ち上がり、わざとらしく大きな大きな欠伸をした。


「めんどくさい、めんどくさい……。なんで俺がこんなタダ働きみたいな世界救済を十一回もやらされてるんだか……」


「文句なら敵を片付けてから言いなさいよ!」


エリスが呆れつつも剣を抜き、ルルアも「先輩、いきましょう!」と気合を入れる。


シフィリアは目を見張り、どこか信じられないものを見るような目でルイスを見つめた。


「おい、エルフのお姉さん」


歩き出したルイスが、ふと振り返って言った。


「案内しろよ。『精霊の宝玉の間』へ。……さっさと片付けて、今夜こそぐっすり寝てやるからさ」


こうして、ルイスの不本意で、どうしようもなく面倒くさい「エルフの秘宝防衛戦」の幕が、静かに、しかし絶大な理不尽さを伴って切って落とされたのだった。

第12話「エルフの秘宝と、面倒くさい決意」をお読みいただきありがとうございました!


「盗みたきゃ勝手に盗ませとけばいいだろ」というルイスの相変わらずのぐうたら発言と、エリスの「放置したら自分たちがもっと面倒になる」という現実的なツッコミのコンビネーションはいかがでしたでしょうか。結局、逃げようとしてもトラブルが追いかけてくる不憫な主人公・ルイスですが、いざという時には(嫌々ながらも)決意を固めて立ち上がる姿はやっぱりどこか英雄の片鱗を感じさせますよね。


さて、いよいよ魔王軍本隊との本格的な衝突が迫る中、ルイスはどんな「面倒くさがりな無双」を見せてくれるのか? 次回もお楽しみに!

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