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「何って、今日も先生が来てくださって……」
お嬢様はそう言って、彼に注意をしようとする。だが、彼にとっては聞き飽きた戯言だ。「あー、はいはい」と、適当に答える。
「まあ、次はそうするさ。それよりも、そろそろ戻れよ。流石にお姫様を一緒に連れて行くは行けない」
前から思っていたけれど……正直、ひどい。思考回路もそうだけど、こんなに可愛らしいお嬢様にそう言われて適当に答える辺りが特にそうだ。あと、無駄に爽やかな所と長身な所も。
「どうした?さっさと行くぞ」
主人が来るように促す。いつもは付いて行くけれど、今日は流石に承諾できない。
「いや、流石に悪いし」
主人の目が有無を言わせない強さを持った光を放つ。寝負けすることはとっくの昔に体験済みだから、視線をレンガの間から伸びた草へと移す。
「あ、あの!」
その時、お嬢様が声を上げた。顔を上げると、彼が楽しそうな表情で彼女を見ている。
「なんだ?」
「そ、れでも、やっぱり……いけないと思います」
最初につっかえたものの、途中、息をゆっくりと吸ってからははっきりと彼に意見した。
内心、驚いた。彼に意見する人間――しかも誰に対しても従順で寛大な女の子――がいるなんて思いもしなかった。ただ、それと同時に禄でもない予感がする。絶対何か悪いことが起きる予感だ。たいていの場合、ひねくれ者の僕の主人は真逆の事をする。
「ああ、そうだな……」
なるべくそっと、顔を上げて主人の顔を窺う。やはり、目が怪しく輝いていた。絶対、とんでもないことを言うに違いない。よりにもよってこの街のお嬢様にだ。
「それじゃあ、こうしよう。これから3人で遊びに行くぞ。授業はその後だ。これなら誰にも言えまい」
一瞬、理解が追いつかない。それから、徐々に理解する。
「えっ。3人って」
僕が喋るのを無視して、彼は強引に会話を続ける。
「俺が思うに、このお嬢様は遊ぶ楽しみを理解していない節がある。だったら、だ。俺達が教えてやればいいだろう」
自信満々に言い切った。お嬢様もあっけに取られてる。当たり前だ。普通、自分までもが不良染みたことをさせられるとは思わない。彼はその様子を楽しんでか、追撃をかけるように宣言する。
「なにより、そうすれば俺が遊んでいることがばれないからな」
尚もあっけに取られている僕らを気にすることもなく、彼は「ほら、行くぞ」と言って2人を引っ張っていく。本当に、本当に禄でもないことに巻き込まれた。いつも、彼はそう言った考えをするのは人一倍得意だ。特に、何処か惹かれてしまう楽しそうな考えは、だ。




