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「さーて、それじゃあ追うか」
僕がその声で我に返り、唾を飲み込むように頷くのを確認すると、平然と歩いて行った。
僕はそれに付いて行く。ただ、周りの視線が突き刺さって、もっと急いで欲しいと思いながら彼に急かすように尋ねた。
「お嬢様は入って行ったのに急がなくて大丈夫かな。走った方が良いと思うんだけど……」
「大丈夫だ。箱入りのお嬢様じゃ、どうせすぐに息が上がる。それにこの辺の地理に疎いからな、人目に付きやすい所をうろつくくらいがやっとだろう」
それにだ。と、彼は確信をもって答える。
「可憐なお嬢様ってのはだいたい目立つし、話しかける輩が多い。ここに来るまでの間に分かったが、結構好奇心も旺盛だしな」
そう言ったところでようやく広場を抜けることができた。僕は内心ほっとしつつも不安は抜けきれなかった。彼はああ言うけれど、厄介事はどこでもあると思い尋ねた。
「それは分かったけど……、やっぱり心配だから見てくるよ」
「ああ、好きにしろ」
犬を払うような仕草で僕に行くことを促す。
「それじゃあ、後で」
何も問題がないことを信じながら走った。関所から街までの道のりよりも街の中は道が均されてある分走りやすく、彼女の走った方向――ちゃんと建物のある、日用品の多い場所まですぐに行けた。服はもちろん野菜や肉、水はもちろん、家の壁を自分で直すための粘土が売ってある。まだ昼ということもあり、道端には仕事の空いた時間に買い物へ来た大人よりもお遣いを任された子供達の方が多く、それでもまだ遠くまで見通せる程度にしか人はいなかった。
僕はその中でも暇そうにしている子供にクッキーをちらつかせながら声をかけた。
「ちょっといいかな。聞きたいことがあるんだけど」
声をかけられた子は一瞬だけ僕を見た後、すぐにクッキーへ満面の笑みで話しかけた
「おかしちょうだい!」
うん。正直だ。良いことだ。でも、年上の話は聞いてほしいな。
「その前に聞きたいことがあるんだけどいいかな。そしたらあげるよ」
出来るだけ優しく語りかけることを意識して話す。けど、なんだかもどかしいな。
「本当に?やくそく?」
「ああ、もちろん約束出来るよ」
「それなら、約束の印をしないと――」
等々――。途中で子供が増えたり、別の話に移ったりと、かなり時間を食った結果――。
「わかんない!」
いい返事をもらった。クッキーがさぞかし美味しかったのだろう。疲れた。意識してかは分からないけれど、なかなかにあざとい笑顔で答えられるとなんとも言えない気分になった。




