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微妙
「お前は食わんのか?」
二人がクッキーを食べる様子をしげしげと眺めていたらそんな風に言われてしまった。確かに変だと思いクッキーの油が少しだけ染みた包みを広げた。中にやや焦げ目の付いた円形のクッキーがいくつか入っていて、ふんわりと甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「いつも思うけどいい匂いだよね」
手のひらに収まる大きさのそれを見てつぶやき、半分に割ってから片方を丸々口に入れた。食感は乾パンの様に硬く、粉っぽい。味はパンを少しだけ濃くしたものを気持ち甘くしたような感じで、食べると水が飲みたくなる。
「味もまあ悪くはないしな」
僕も人のことを言えないけれど、彼のしたは大雑把だと思う。にも関わらず、何故か良くクッキーを買うのが不思議でならないが、本人曰く「気分」だそうだ。
「なんと言えばいいのでしょうか……」
ようやくクッキーを1つ食べ終えたお嬢様が喋り始めた。
「その……私たちは学び舎に戻らなくてはならなくて……なのに、こんな風に遊んで、お菓子を食べて……」
なんやかんやと流されて僕たちと一緒に遊んでいるけれど、良心に耐え兼ねたのだろう。彼女のように切実な言い方をされると、慣れてしまった自分に気づいて申し訳ないと感じてしまった。もちろん、良心だけの問題ではない。彼女くらいの箱入り娘ならこの辺りが危険だと教えられているだろうし、初めての経験に不安なのかもしれない。そうなると、どう言っていいのか悩んでしまうというか――。
「なんだ。そんなことか」
彼は自慢げにそういった。いや、彼以外にはそんなことは言えないだろう。いつものことながらに、僕は少しだけ不安に思い、彼女はぽかんとした様子で彼を見上げた。
「確かに、俺たちにとって学ぶのは権利であり義務だ。ただな、それでも面倒なことは得意なやつにやらせればいいんだよ」
相変わらず、彼の自尊心は半端でなく高い。その上で言っていることはわがままだ。それを聞いた彼女は空いた口がふさがらないと言った様子でただ、彼の方を見ていた。そして顔をうつむいた。なんだか、危ない気がした。
「ほら、行くぞ」
そう言って、お嬢様に触れようとした時。
「あっ」
無言で、一気に駆けていった。止める暇もなかった。止める事ができたとしても、なんていうか、できなかった。彼もそうなのかと見上げると何故かいつもどおり楽しそうに笑っていた。いつも思うけれど、彼はとても尊大だ。それに見合うだけの能力があるのは知っている。でも、多少は誰かの機嫌を取るべきだと思った。




