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G・F ~ゴーストフレンド~  作者: 沙φ亜竜
第2章 ラブストーミーは突然に
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-3-

「姉ちゃん、ちょっといいかな?」

「ん? おっけぇ~。入ってきな~」


 家に帰り着いたあと、水沢さんと翔くんのお互いの気持ちになって、少し考えてみようと思い立った。

 とはいえ、僕は女の子とつき合ったこともないため、いくら考えてもよくわからなかった。

 詩織ちゃんにも訊いてみたものの、彼女もつき合った経験はなく、やっぱりよくわからないとの答えが返ってくるだけだった。

 そこで、歳の功(というほど上ではないけど)ということで、姉ちゃんに訊いてみようという考えに至ったのだ。


 ガチャッ!

 ドアを開けて中に入……ろうとして僕は、バッ、とすぐにドアを閉めた。


「な……っ!? 姉ちゃん、なんて格好してんだよ!!」

「ん? ああ~……、なにあんた、恥ずかしがってんのぉ~?」


 姉ちゃんは心底面白がっているようなニヤニヤ顔を浮かべ、からかいの言葉をかけてくる。


「ね……姉ちゃんは、そんな下着姿で、恥ずかしくないのかよ!?」

「ん~~。まぁ、弟だしねぇ……。ちょうどお風呂上がりで夜風に当たって涼んでたとこだったし。ま、いいわ。ちょっと待ってて。なにか羽織るから」


 ――あ~、びっくりした……。


 どうでもいいけど、姉ちゃんにとって弟っていうのは、男の範疇には入っていないんだな。

 もちろん僕だって、姉ちゃんを女性として意識しているわけではないけど。

 意識してはいなくても、さすがに下着姿を見せられたら、健全な男子中学生ならドキッとしてしまうってもので。


 そんな様子を、姿を消した詩織ちゃんは、黙って見ているだけのようだったけど。

 ただ、なんとなく若干怒っているような気配を感じたのは、僕の気のせいだろうか?


「……それで、なんなの?」


 僕を再び部屋に招き入れると、上着を羽織った姉ちゃんは率直に訊いてきた。


「ん……あのね……」


 僕は水沢さんと翔くんのことを素直に話した。

 とくに内緒にする必要があるわけでもないし、どちらにしても高校生である姉ちゃんにだったら、喋ってもさしたる問題はないだろう。


 姉ちゃんは僕が話しているあいだ、なんの口出しもせず黙って聞いていた。

 そして、ひととおり話を聞き終えたあと、ゆっくりと口を開いた。


「ふ~ん、なるほどね……」

「姉ちゃん、なにかわかる?」


 少し考え込む姉ちゃん。


「ん~、そぉねぇ……。そのふたりは中1なんだよね?」

「うん、そうだよ」

「ふむ……。だったら、翔くん、恥ずかしがってるだけなんじゃないかなぁ? なんか、相手を突然異性として意識し始めちゃって、話すだけでも真っ赤になる、みたいな。思春期ってヤツね♪」


 姉ちゃんはニヤニヤしながら、楽しそうにそう言った。


「ん~……、でも、なんか他の女の人と会ってる……みたいな話だったし……」

「そっかぁ。まぁ、そのあたりは詳しく調べてみるしかないでしょうね」

「そうだね……。うん、ありがと、姉ちゃん」

「いえいえ」


 僕は姉ちゃんの部屋を立ち去る間際に、もうひとつだけ訊いてみた。


「……そういえば姉ちゃんって、つき合ってたこととか、あったんだっけ?」

「ないよ♪」


 即答だし……。

 いや、でも、そうだよね。

 考えてみたら、


「姉ちゃんの性格で彼氏ができるわけないよね……」


 ボソッ、と思わず口に出して言ってしまった。


 ゲシッ!

 ……ドガッ!


 次の瞬間、姉ちゃんの鋭い蹴りによって僕の体は部屋の外までふっ飛び、廊下の壁に思いっきり頭から激突していた。



 ☆☆☆☆☆



「痛てててて……」


 僕は自分の部屋に戻ってベッドに入っていた。

 まだ、さっきぶつけた頭の痛みが残っている。


「姉ちゃんを相談役にした僕がマヌケだったか……。とりあえず、寝よう」


 その言葉のすぐあとには、僕は一瞬にして眠りに就いていた。

 瞬間睡眠……僕の得意技だ。


「……こら、起きなさい……」


 ――う……ん……? ……女性の声……?

 母さん……? いや、違うな……。

 姉ちゃん……だったら呼びかける前に叩き起こすよな……。

 詩織ちゃん……の感じでもないな……。


 ボーッとした頭で考えた末、


 ……結論。起きればわかる!

 がばっ!!

 僕は飛び起きてみた。


「やっと起きたのね。こんばんは」


 目の前に立っていたのは、怪しい紫のローブを身にまとった女性で……。


「って、なんで小島先輩が!?」

「ふふっ……ちょっと用があってね」


 先輩の髪の毛が、ゆらりと揺れる。

 ふと見ると、窓が開いて風が吹き込んでいた。どうやら、ここから入ってきたようだ。


「あの、これって不法侵入じゃ……」

「細かいこと、気にしないの!」

「細かくないです!!」


 まったく……頭がおかしくなりそうだ……。


「しーっ! 詩織さんが起きちゃうでしょ?」


 不意に小声になる小島先輩。今さらという気がしなくもないけど。

 それはともかく。


「え? ……幽霊でも、寝たりするんですか……?」

「ええ、寝るわよ。私たちの睡眠とは微妙に違うかもしれないけどね」


 怪しげな色をした薬かなにかのビンのフタを閉めながら、小島先輩はくすりと笑う。


「……それはなんです?」

「ふふ……ヒ・ミ・ツ☆」


 先輩はウィンクひとつ。

 この人の場合、☆マークがついていても、なんだかとっても怖い……。


「……それで? 用事があったんじゃないんですか?」

「大丈夫、もう終わったわ。お邪魔してごめんなさいね」


 と言うが早いか、小島先輩は紫ローブをひるがえし、窓からひょいっと飛び出していった。


「あっ、ちょっと先輩!」


 すぐに窓に乗り出し、外を見渡してみたものの、すでに先輩の姿はなかった。


 ――ふぅ、まったく。なんだったんだ?


 窓を閉めた僕は、ふと、あることに気づいた。


 ――あれ? 僕、寝る前にちゃんと戸締り確認したはずだよね……?

 そうすると、小島先輩はどうやって……。


 よくよく調べてみても、ガラスの一部を割ってカギを開けたような形跡はない。

 ということは、やっぱり、外からカギを……?

 う~む……。

 あの人なら、それくらいできそうな気はするけど……。


 小島先輩はつくづく人間離れした人のようだ。改めて僕はそう認識するのだった。



 ☆☆☆☆☆



 次の日の放課後となり、昨日尾行に失敗した件について夕時にボロクソに言われたあと。

 僕と詩織ちゃんは、再び翔くん(ターゲット)をマークしていた。


 昨日と同様、薄暗くなった帰り道で、詩織ちゃんとふたり、少しだけ翔くんから離れた場所を歩いていた。

 ……今日はしっかり、尾行に集中しないと。

 そんな思いを胸に、こそこそとあとをつける。


 と、そのとき。

 翔くんの携帯電話が鳴った。

 僕はとっさに近くの電柱の陰に隠れる。


「詩織ちゃんお願い」

「おっけー」


 僕の言葉に従い、詩織ちゃんは姿を消したまま、スゥーッ、っと移動した(みたいだ)。

 あまり僕から離れられないようだけど、ここからだったら、翔くんの電話の声が聞こえるくらいの位置までは行けるだろう。


 しばらく様子をうかがう。

 やがて翔くんは電話を終え、すたすたと歩き出した。


 と同時に、詩織ちゃんが戻ってきた(ようだ)。

 最近、なんとなくだけど気配でわかるようになってきていた。


「どうだった?」

「うん……。電話の相手は清美(きよみ)さんって人で、明日の放課後、会うみたいだよ」

「ふむ。明日は土曜だし、時間もあるってことか」


 ……これは、やっぱり……デート、ってことなのかな……?


「まだ尾行を続けるの?」

「いや、今の電話の相手がおそらく、水沢さんが心配している年上の女性だと思う。だから、今日はもういいでしょ」

「それじゃあ、明日が勝負……ってわけね?」

「そうなるかな。詩織ちゃんにもまた頑張ってもらうことになると思うけど、よろしくね」

「うん、任せて!」


 こうして僕たちは、家に帰った。

 とにかく今日はゆっくりと休んで、さらに明日の午前中の授業時間もしっかりと寝て、放課後の決戦に備えないと!


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