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「……う~~ん。でも、どうすればいいのかな?」
依頼人が帰ったあと、僕たち三人は話し合っていた。
幽霊である詩織ちゃんと合わせて三人だ。
「そりゃお前、調査対象を知ってる人に聞き込みするとか、直接調査対象を尾行するとかして調査するってとこだろ」
「ふむ、そうだね」
「それじゃ、あとは任せたぞ、零樹!」
と、夕時はさっさと帰ろうとする。
「ちょっと待てぇ~~~~っ!!」
「ん? なんだ? あとは実行部隊の零樹と詩織ちゃんの仕事だろ?」
「な……なんだよそれは!?」
「俺はマネージャーで、仕事を取ってくる。それを実行部隊のふたりがこなす、という役割分担ってわけだ」
さも、当然だろ、というような態度できっぱりと言ってのける夕時。
「な……っ! お前、また勝手に……!!」
「詩織ちゃんには、話したよね」
「あ……うん」
頷く詩織ちゃん。
「………」
またしても、僕ばっかりのけ者に……。
っていうか、詩織ちゃんは素直だから言いくるめやすいと踏んで、僕には言わず、詩織ちゃんだけに話したんだな。
夕時の奴め……。
「ま、そういうわけだ、諦めな! それに尾行するにしても聞き込みするにしても、大勢で行動したら怪しいだろ?」
臆面もなく、夕時は言い放つ。
む~……。尾行は確かにそうかもしれないけど、聞き込みに関しては、ちょっと違わないか?
……と、ツッコミを入れようかと思ったときには、すでに夕時の姿は消えていた。
むむむ、相変わらず逃げ足の速い奴だ……。
「まぁ、しょうがない。まずは、長瀬翔くん、だったっけ? ターゲットの情報を得るために、一年の教室にでも行ってみようか」
「うん」
僕は観念して、幽霊である詩織ちゃんとふたりで、調査を開始することにした。
☆☆☆☆☆
ターゲットの翔くんは依頼人と同じクラス、1年3組の生徒で、サッカー部に所属している。
この時間だと、まだグラウンドで練習しているはず、とのこと。
運動神経が抜群で、一年生でありながらレギュラーになれるんじゃないかと言われているくらいの実力の持ち主らしい。
明るい性格でもあることから、クラスでの人気も高いのだそうだ。
……なんだよそれ、欠点のない完璧超人か?
といったひがみややっかみは、この際心の奥底に押し留めておくとして。
とりあえず僕たちは、グラウンドに向かってみることにした。
「……いた」
グラウンドの周囲を走っている一年生の集団の中に、翔くんの姿はあった。
他の部員たちと喋りながらランニングを続けているようだ。
おっ、顧問の先生から「私語は慎め」と注意されている。
ざまぁみろ、完璧超人! ……じゃなくって。
こうやって見ている限りでは、ごくごく普通の男子生徒って印象しか受けないなぁ。
しばらくのあいだ、サッカー部の練習風景をボーッと眺めていた僕たち。
やがて一ヶ所に全員が集合し、顧問の先生がなにやら話したあと、一同解散となった。
といっても、どうやら一年生は残って後片づけをしていくようだ。
「ねぇ……。このあと、尾行するの?」
詩織ちゃんが、黙っていることに耐えられなくなったのか、小声で話しかけてきた。
幽霊である詩織ちゃんには、問題にならないよう、姿を消してもらっている。
「うん。まぁ、マークしておくのが基本だろうしね」
僕は小声で言葉を返す。
……こうやって詩織ちゃんと話しているところを誰かに見られたら、僕ってひとりでぶつぶつ喋っている怪しい人にしか見えないような気も……。
と、そんな悩みを抱えているうちに、翔くんは片づけを終えたらしく、帰り支度を整えるため部室へと入っていった。
辺りはもうすっかり暗くなっている。
やがて部室から出てきた翔くんは、そのまま帰路に就いた。
僕たちはその様子を確認すると、少し離れた位置取りを保ち、初めての尾行を開始した。
「部活をやってると、結構遅くなるんだね……」
ぽつりとつぶやく。
「零樹くんは、なにも部活はやってないんだっけ?」
「うん。帰ってTVゲームをやってるか、夕時とどこかに遊びに行ってるか、かなぁ。詩織ちゃんは、なにかやってたの?」
「あ……うん、テニス部に入ってたの」
「へぇ~、運動部系だったんだ。なんか、雰囲気的に文化部系っぽい気がしてた」
「あはは……。実は友だちにつられて入っちゃっただけなんだ」
「ああ、なるほど! それなら、納得!」
「あはは……。納得されちゃうのも、なんかちょっと……」
こんな感じで、僕は詩織ちゃんと話しながら尾行を続けていた。
詩織ちゃんは姿を消しているわけだから、周りから見たら、ひとりでぶつぶつ言いながら、隠れて男子生徒を追いかけている怪しい奴ってことに……。
ときどきすれ違う人から、なにやら変な目で見られているような……。
……まぁ、気にしないでおこう。
「でも、今日はこのまま帰るだけだよね」
「うん……そうだよね」
曲がり角を曲がった翔くんを追って、僕たちも同じ角まで行ってはみたものの、その先に翔くんの姿は見つからなかった。
「あ……」
「う~ん……。気づかれて、まかれた、ってわけじゃないよね、これは」
「うん、見失っただけみたいね」
尾行するのであれば、ちゃんと尾行に集中しないとダメなようだ。
……って、当たり前か。
「仕方ない。今日は諦めて帰ろう」
「うん」
僕はとぼとぼと、自分の家へと向かって歩き出した。
明日、夕時からボロクソに文句を言われるだろうな、という重苦しい予感を背負いながら。




