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G・F ~ゴーストフレンド~  作者: 沙φ亜竜
第1章 はじまりはいつも……死!?
2/13

-2-

「零樹!」


 …………!!


 僕は思わず飛び起きていた。


「い……痛てててて……」


 いきなり飛び起きたからか、頭にズキッと痛みが走った。


「零樹! 大丈夫か!?」


 目の前に夕時がいた。

 その横では、母さんと姉ちゃんが椅子に座って僕のほうを見つめている。


「零樹! ……よかった……気がついたのね」


 母さんが両腕を胸の前で組み、うるうる(丶丶丶丶)しながら安堵の息をついている。


「まったく、余計な心配させないでよね!」


 一方姉ちゃんは、腕組みをして僕を睨みつけながら、強い口調で言い放った。

 姉ちゃんは、いっつも僕に突っかかってくるような物言いをする。それで当然のごとく口ゲンカに発展するわけだけど。

 だからといって、べつに仲が悪いわけじゃな。お互いに口ゲンカを楽しんでいるような感じなのだ。


「あれ? 紗雪(さゆき)さん、さっきまであんなに涙目になって零樹を心配してたのに……」

「ちょ……ちょっと、夕時くん! 余計なこと言わないでよぉ!」


 姉ちゃんは、耳まで真っ赤になって恥ずかしがっている。

 ……夕時は夕時で、姉ちゃんをからかうのが好きみたいだ。


 説明するまでもないだろうけど、紗雪っていうのが、僕の姉ちゃんの名前だ。

 母さんの名前は、紗夜美(さよみ)。すぐに泣くという特技(?)を持っている。

 子供心に、「父さん、いつも大変だなぁ」なんてて、思っていたっけ。


 その父さんは、今は単身赴任で、遠いところにいる。

 すごく忙しいみたいで、半年に一度くらいしか帰って来ないから、寂しい思いをしているんじゃないかと思う。

 母さんがすぐに泣いて、ちょっと大変そうではあったけど、父さんはいつも幸せそうに笑っていた。


 ふと我に返り、とりあえず周りを見回してみる。

 ここはどうやら病院のようだ。

 学校で意識を失ったあのあと、僕はここに担ぎ込まれたのだろう。


 ――まだちょっと頭が痛いな……。なにか、頭にぶつかったみたいだったもんね。そりゃあ、痛みくらいあるか。

 そういえばあのとき、僕の他にも誰かいたみたいだったけど……。


 と考えていると、急に夕時が、真面目な顔になって話しかけてきた。


「無事でよかったな、零樹」

「うん、そうだね」


 そう言って、夕時は一瞬目を伏せた。

 母さんと姉ちゃんも黙ったままだ。


 ――あれ? どうしたんだろう?


 よくはわからないけど、なにやら重苦しい感じの空気が流れていた。

 しばらくして、夕時がようやく口を開く。


「あのときな……」


 あのとき、僕の上に落ちてきたのは、同じ学校の女子生徒だった。

 名前は断花詩織(たちばなしおり)。別のクラスだからよく知らないけど、夕時がどこからか入手してきた写真を見ると、確かに見かけたことくらいはあるような気がした。

 僕が空を見上げたときに目に映り込んだ布みたいなものは、彼女のスカートだったのだろう。


 その女の子――断花さんは、屋上から僕の頭上に落下してきたらしい。

 ふたりとも、すぐに救急車でこの病院に運ばれた。どちらも危険な状態だったという。

 僕はそれから徐々に回復に向かい、一週間ほど経った今日、こうして目覚めることができた。


 でも、断花さんは――、

 つい数十分前に息を引き取ったそうだ。


 僕がクッションになったためか、外傷はほとんどなかった。にもかかわらず、まったく目覚める気配がなかった。

 だけど亡くなる直前、ただ一度だけ断花さんは目を開き、こうつぶやいたという。


「れいき……生きて……」と。



 ☆☆☆☆☆



 その夜。

 僕の他には誰もいなくなった病室で、ひとり考えていた。


 母さんと姉ちゃんは、この一週間、ずっと僕のそばについていてくれて、ほとんど休んでいなかったようだ。

 だから今日は帰ってもらって、ゆっくり休むように伝えた。

 夕時が「それなら、今日は俺がここにいようか?」と言ってくれたけど、大丈夫だから、と言って帰ってもらった。


 ひとりになって考えたかったからだ。

 もちろん、あの女の子――断花さんのことについて……。


 断花さんは最後に、「れいき……生きて……」と言ったという。

 もしそれが本当なら、僕が見た夢と同じことになる。

 断花さんは僕のことを知っていたのだろうか?

 だとしても「生きて」というのは……。


 なにげなく、夕時が持ってきた写真を手に取ってみた。


 ――断花さん、か……。この子、結構可愛いな。


「えっ、本当?」


 …………っ!?


 不意に響いた声に驚いて振り向くと、そこには口を押さえ、上目遣いで僕のほうを見ている女の子がいた。

 今まさに見ていた写真と、まったく同じ顔をした女の子が――。


「なっ……え……あ……!?」


 僕は声にならない声を上げる。

 目の前にいるのは紛れもなく、今日亡くなったはずの断花詩織さんだった。


 しかもご丁寧に、フヨフヨ浮いていて、足もなく、火の玉だかエクトプラズムだかを周囲に従えている。

 な……なんというか……あまりにも、「そのもの」って感じで、怖くはない……かもしれない。


「あ……あの……キミって……断花さん?」


 僕は思いきって、話しかけてみた。


「は……はい……。私、断花詩織です」

「キミって……その……え~っと……ゆ……幽霊……?」

「そう……みたいです。……ごめんなさい。怖い……ですか……? 呪われるぅ~、とか、取り憑かれて殺されるぅ~、とか、そんなふうに思っちゃいます!?」


 必死になってそんなことを言ってくるので、僕は思わず笑ってしまった。


「アハハハハ! 大丈夫、怖くなんかないよ! ……って、笑っちゃ悪いよね、ごめん」

「え……あ、いいんですよべつに! 私、全然気にしてませんから!」


 両手をパタパタと振って、慌てて答える断花さん。

 ……なんか、本当に幽霊とは思えない感じだなぁ……。


「ところで、ちょっと訊きたいことがあるんだけど……いいかな?」

「……はい」

「どうして……上から落ちてきたの?」


 学校で、どうして僕の頭上から落下してきたのか、ということだ。

 ちょっと無神経な質問だとは自分でも思った。

 でも、どうしても訊いておきたかったのだ。


「う~ん……。実は……よく憶えてないの……」


 断花さんはうつむいたまま、小さくそう答えた。


「そっかぁ……。それじゃあ、もうひとつ。キミ、息を引き取る前に、れいき……生きて……って言ったらしいけど……」

「……えっと……あの……それも……よく憶えてないんだ……」

「ふぅ~ん……。でも、前から僕のことは、知ってたんでしょ?」

「えっ? ……あ……うん、知ってた……」


 それっきり、断花さんは黙ってしまった。

 時計の秒針の音だけが、静まり返った病室に繰り返し鳴り響く。


「さ……さあ、もう眠ったほうがいいわ! ゆっくり休んで、早く元気になってね!」


 ニコッと微笑んだ断花さんの姿が、スゥーッっと薄れていき、そして、消えた。


 ――今のは、いったい……?


 僕はすぐに睡魔に襲われ、そのまま眠りに就いていた。


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