表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
G・F ~ゴーストフレンド~  作者: 沙φ亜竜
第1章 はじまりはいつも……死!?
3/13

-3-

 三日後、僕は退院した。


 あれから断花さんの幽霊が現れることはなかった。

 あの夜のことだって現実だったのか、よくわからなくなっていた。

 そして翌朝、久しぶりに学校へと向かった。


「おはよー!」


 目の前を歩いていく夕時を見つけ、声をかける。


「おぅ! 体調はもう大丈夫なのか?」

「うん! なんか前より体が軽いくらいだよ!」

「ちっ!」

「ちっ、てなんだよぉ!」


 恒例の口ゲンカ。あの事件以前となにも変わらない日常が、再び訪れた。

 ――と思ったのだけど……。


「ちょっと、あんた!」


 突然、呼び止められた。

 駆け寄ってきたのは、三年生の先輩だった。

 ちなみに、うちの学校は学年ごとにネクタイやリボンの色を変えているため、学年は一目瞭然なのだ。

 でも、この人に面識はなかったと思うけど……。


「な……なんですか?」


 先輩は顔を思いっきり近づけて、じぃーっ、と僕の目をのぞき込んでいた。

 あまりにも近すぎて、ちょっとドキッとしてしまう。


「ふむ。とくに呪われたりとかしてるわけじゃないのね」

「???」


 僕には、先輩の言っている意味がよくわからなかった。

 呆然とする僕の前で、ようやく少し顔を離してその先輩は言葉を続ける。


「私は、小島魅和(こじまみわ)。オカルト研究部の部長をやっているの」

「あ~、あの怪しげな……」


 げしっ!!

 殴られた。


「余計なこと言わないの! ……とにかく! 今日の放課後、オカ研の部室に来なさい! ……いいわね?」

「え? ……はぁ……」

「よろしい。じゃ、待ってるからね☆」


 と、先輩はウィンクをしたかと思うと、さっさと走っていってしまった。

 なんか、言いたいことだけ言って去っていったような……。


「モテモテじゃないか、零樹!」

「そ……そんなんじゃ、なさそうだったけど……」


 それにしても……オカ研の部室かぁ……。

 いつも暗幕で覆われ、怪しげな煙がもうもうと垂れ込めていて、誰も近づこうとしない場所、っていう噂なんだよね……。


「ま、行くしかないだろ。行かないと、小島先輩に呪われるかもしれないぜ?」

「ゲッ!」

「心配すんな! 俺も一緒に行ってやるよ。……面白そうだし」

「他人事だと思って、面白がるな~!!」


 はぁ~……、気が重い……。



 ☆☆☆☆☆



 放課後。

 僕は夕時とふたり、噂どおり怪しげな煙がドアの隙間から流れ出ている、オカ研の部室の前に立っていた。


「や……やっぱり、やめようかな……」

「こらこら、ここまで来て怖気づくな! ほれ、行けっ!」


 そう言ったかと思うと、夕時の奴、ドアをガラッと開け、僕を部室の中へドンッと蹴飛ばし、ピシャッとドアを閉めてしまった。


 ――くそぉ~~~、夕時め~~~!!


「やっと来たのね。さあ、もっと近くに寄りなさい」


 机の上に紫色の布をかぶせ、その上に乗せられた水晶に両手をかざし、椅子に座った小島先輩が、こちらを見つめていた。

 怪しい紫色のローブに身を包みながら――。


「し……失礼しましたぁ~!!」


 僕は思わず逃げ出していた。


 ――って、ドアが開かない!?

 くそっ! 夕時が向こうで押さえてるんだな!?


「お……おい、夕時! 開けろよ!!」

「俺がどうしたって?」

「うわぁ!?」


 声はすぐ横からした。夕時もいつの間にか、部室の中に入っていたのだ。

 ――あれ? じゃあ、ドアが開かないのって……。


「あなたは逃げられないわ。早くこっちへ来なさいってば」

「……だとさ」


 ――しくしくしく……。

 脱出は無理そうだ。人間、諦めが肝心ということか。

 それを悟った僕は、水晶を置いた机を挟んで、先輩と向かい合うようにして椅子に座った。


「それじゃ、いくわよ♪」


 ――はいはい。もうどうにでもしてください……。


「……*∽≒ξÅΨ∬ゑ∀√φ……」


 僕の目の前で、小島先輩が怪しげな呪文を唱え始める。

 すぐに変化は訪れた。


「あ……あれぇ? どぉしてぇ~?」


 今ここにいるはずの三人とは別の女の子の声が響く。

 続いて浮かび上がってきた姿は、あの病室で見た幽霊の女の子、断花詩織さんだった。


 断花さんは引きつった笑みを浮かべながら、こう言った。


「あはは……。こ……こんにちわぁ……」



 ☆☆☆☆☆



「あなたが時奈くんに取り憑いてる悪霊ね!!」


 びしっ! と断花さんを指差して言い放つ小島先輩。


「あ……悪霊なんかじゃないもん!」

「問答無用!!」


 どこからともなく取り出したお払い棒を振りかざし、小島先輩は断花さんに飛びかかる。

 僕と夕時は呆然とその様子を見守ることしかできなかった。


「悪霊退散!!」


 小島先輩はお払い棒を断花さん目がけて勢いよく振り下ろす。

 どうでもいいけど、お払い棒って、そんな使い方でいいのかな……?


「きゃ~~~~っ!!」


 ピタッと、断花さんの頭頂部にぶつかる直前で、お祓い棒は寸止めされていた。


「ふむ。ホントに悪霊じゃないみたいね」

『えっ?』


 他の三人の声が綺麗にハモった。


「ごめんなさいね。ちょっと試させてもらったの。ちゃんと話の通じそうな幽霊(あいて)でよかったわ。……さて、聞かせてもらいましょうか。どうして時奈くんに取り憑いているのか」

「べ……べつに取り憑いてるわけじゃないです~。よくわからないんですけど、時奈くんの近くから離れられないみたいんです~」


 断花さんは、そんな戸惑いを含んだ言葉に続いて、校舎の屋上から僕の頭上に落下して死んでしまい、気がついたら幽霊になっていたという経緯を小島先輩に話した。


「……なるほどね。わかったわ」


 小島先輩は椅子に座り直し、落ち着いた様子でひと言。


「あなた、地縛霊になったのね」

「お……おい! 地縛霊ってのは、死んだ土地から動けない霊のことなんじゃないのか?」


 夕時が先輩に食ってかかる。

 ……どうでもいいけど、仮にも先輩に対してその口の利き方は、ないのではなかろうか。

 だけど小島先輩は、そんな些末なことは気にも留めない様子で続けた。


「この子が落ちたのが、たまたま時奈くんの上だったから、土地ではなくて、時奈くん自身に縛られちゃったのね」

「そ……そんなことって、あるんですか?」

「この世には、常識では計り知れないことなんて、いくらでもあるものよ。……この場合、地縛霊じゃなくて、人縛霊とでも呼ぶべきかしらね?」

「語呂は悪いけどな」と夕時。


 ――その後、断花さんからいろいろと状況を聞いた。


 幽霊になったせいか、姿を消したり、壁を通り抜けたりはできること、

 なぜか僕からは、数メートル以上離れられないこと、

 どうして地縛霊(というか、人縛霊?)になったのかはわからないこと……。


 小島先輩いわく、なんらかの心残りがあって成仏できないのだろう、という話だけど……。

 当の断花さんは、なにが心残りなのか、まったく憶えていないそうだ。


「ま、しばらく様子を見るしかないでしょうね。断花さん、当分のあいだ、時奈くんのそばで幽霊をやってなさい」

「はい……わかりました。……あの、時奈くん……よろしくね」

「え~っと……。うん、よろしく!」


 といったわけで、僕と幽霊の共同生活(?)が始まったのだった。


 ――ただひとつ気になるのは、夕時が「こいつは使える!」と言って去っていったこと。

 またなにかくだらないことを企んでいそうで、ちょっと怖いところだな……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ