5-9.村霧Ⅱ
5-9.村霧Ⅱ
「そこまで!」
エレナが止めた。
――3回は死んでいた。
俊太郎はがっくりとうなだれた。アビーはため息をついて竹刀を下ろした。
「よく堪えたな?」
アビーは笑みを見せた。
「打ち込んできたら斬ってやったものを。」
「お前、見所あるよ。これからも修行しな。」
アビーは、満足そうに微笑んだ。射貫くような眼光は、女性らしい柔らかな光に変わっていた。俊太郎にはアビーが何に満足したのか合点がいかなかった。
――剣を交わすとある程度相手がわかるのかもしれない・・・。
俊太郎はボリス伯爵のことも少し思い出しながらそう思った。
「もう、アビーなら十分分かったでしょう?副長代行はいかがかしら?」
エレナは微笑んだ。
「騎士団の新兵よりは、良いんじゃないですか。足手まといにはならないでしょう。」
アビーは爽やかに笑う・・・。が、
――比較対象そこか。
地味に俊太郎はうなだれた。
「じゃあ、ね?見たいのは『村霧』なんでしょう?私も見たいわ!」
サミュエルが、練兵場に竹箒を立てた。エレナ、アビー、サミュエルらが少し距離を取って俊太郎を見つめた。軽く振ると、淡いミストが少し出た。エレナは、軽く眉をあげて頷いたが、まだ演舞が全部終わっていなかったため、黙っていた。
俊太郎は息を整え、居合いの構えをする。瞑目した。
斬!
きれいなミストと共に、竹箒が斜めに両断された。アビーも眉を上げている。サミュエルも拍手をした。だが、エレナは、村霧に興味を持ち、俊太郎に近づいていった。
「ちょっと…。」
エレナが言った。
「刀を見せてもらっても?」
「・・・どうぞ。」
俊太郎とて剣士である。軽々に他人に刀は預けない。だが、ここは王女なので従った。
エレナは柄を持って不思議そうに見ていたが、
「ここね・・・。」
ふと、目を輝かせた。
「里見さん。少し、魔力を通しても良いかしら?」
と聞いた。
俊太郎は、
ーー王族だけに断れない・・・。
と思って頷いた。エレナは、静かに目を閉じて、集中した。
「ここを・・・。えいっ。」
エレナが魔力を通した。瞬間、村霧が青く光った。
「これで、魔力の流れは良くなったはずです。里見さん、もう一度、箒を斬って下さらない?」
エレナは頼んだ。
「承知致しました。」
俊太郎は、村霧を受け取った。
――何だこれは?
重さは変わらないのに、いつの間にか、寄り添うように馴染んできた。体の一部であるかのようだ。早速、軽く振ってみた。
「おっ・・・。」
俊太郎は思わず声を上げた。
「・・・多いな。しかも綺麗だ。」
サミュエルが評した。
浮いたミストは七色にキラキラしていた。俊太郎は、再び、落ち着いて居合いに構えた。
皆が息を飲んだ。




