5-8.立ち合い
5-8.立ち合い
「待って!」
という言葉に一瞬動きを止めた三人だったが、かわいらしい声である。
「待ってぇ。待って待って。」
トタトタトタと走り慣れてなさそうな足音がする。姫様である。
「もー、アビー!そんな面白そうなもの、私も混ぜなさいよ。」
エレナは、アビーに対して口を尖らせた。
――怒るとこ、そっちなんだ。
俊太郎は吹き出しそうになったが、慌てて口だけ真一文字に結んだ。
エレナの息が落ち着くと、早速、サミュエルが手を回して練兵場を借りた。
「百戦無傷の副長代行、その力を見せてもらおう。」
アビーが正眼に竹刀を構えた。
「この人・・・すさまじく強い・・・。」
俊太郎は一瞬で理解した。アビーにはまるで隙がなかった。
――師匠・・・と同じくらい強い。どこから打ち込んだら良いかまるで分からない。
なるべく肩の力を抜き、呼吸を整え、足をにじり動かしながら、肩なりつま先なりを注視して、アビーの動きから隙を探そうとする。
――全くないな・・・。下手に動くと死ぬ・・・。
だから俊太郎は、構えたまま、できるだけ無駄な力を抜いた。様子見してくれている内に緊張を解いた。
――待ってくれている。真剣なら既に斬られている。
それは分かるが、かといって打ち込めないのだ。結局、5分が過ぎた。イメージの中で何度も斬り飛ばされ、精神的にも緊張が沸点に達していた。全身から滝のような汗がしたたった。
――もう限界・・・。
その時、エレナが厳かに手を挙げた。




