5-6.酒盛り
5-6.酒盛り
そして、夜。
ふくろう亭が貸し切られて駆除隊との酒盛りとなった。王女様の奢りと聞いて、隊員達は歓声を上げた。特に人気者のサミュエルが隣席でハイポーションを賜ったと聞いてみんなは口々にそれを話し合った。
駆除隊において、宴会部長と言えば陽気なサミュエルである。
彼は、先に賜ったポーションで足首が癒え、太鼓に合わせて踊っている。彼の民族のものなのか、独特のリズムのステップを踏む。王女に尊重された喜びを、全身の踊りで表現していた。
「ほら!見て下さい。こんなに踊れますぜ!さすがは祈りのポーションだ!」
サミュエルは声もデカい。
隊員達も、サミュエルに合わせて手拍子をしたり、見よう見まねで一緒にステップを踏む者もあった。
「良かったなぁ!」
「副長昇進おめでとう!」
「明日から復帰だな!」
みんなが口々に賞賛し、サミュエルはもみくちゃにされていた。
俊太郎は、酒が飲めない上に、踊れない。しかし、こういう場になじむのは嫌いではないので、端っこの方で年相応に肉にかぶりついていた。
そこに、場にそぐわない清楚なワンピースの少女がそっと隣に腰掛けた。
エレナである。声を出せずに目を見開いていると隣で睨んでるのは平服のアビーである。失礼なことをしたらぶっ飛ばすと顔に書いてある。ゲルトも平服で手の届く所にいた。
「混ぜてもらうわ。予告すると緊張しちゃうでしょ?見つかっちゃったら帰るわよ。」
為政者の威厳は脱ぎ捨ててイタズラっ子のようにウィンクした。
「へえ?ここではかぶりつくのが流儀なのね?」
上品に手を合わせ、頂きます、と静かに言うや否やエレナは、許可も求めず、俊太郎のもう一切れを取り上げてかぶりついた。
「あっ・・・。」
俊太郎が呆気にとられていると、エレナはお姫様とは思えない豪快さで肉を食いちぎると、あっという間に飲み込んでしまった。
「うふふ、サミュエルさんってあんな風に踊るのね。」
サミュエルは前の方で踊っていた。独特のリズムにエレナは魅入っていた。指にベタベタ脂が付くのでアビーが心配そうにそっと布巾を寄越している。
「アビーも食べない?美味しいわよ。」
――エレナ様…。先ほど、村長に里見と自分の首を魔族に差しだそうと言われて胃をさすっていらしたというのに…。
アビーは、
「ありがとうございます。」
と言って肉を食いちぎった。少ししょっぱい味がした。
「里見代行、明日は、現場ね?案内役を頼むわ。」
返事をする間もなく、王女はこそっと村長やロナウドを労いに行った。流石にサミュエルに見つかって、王女殿下バンザーイが始まった。
何となく一緒に万歳をやっている内に、「お騒がせしちゃいました。」と一礼し、王女の嵐は颯爽と去った。多分かぶりついた肉しか口にしてないと思われたが、見つかったら帰る、というのをきっちりやるあたり、普通の姫ではないなと俊太郎は思った。
リーダーとしての温かさと厳しさ、為政者としての真面目さ、涼やかな声、いたずらっ子なウィンク、大胆なかぶりつき、そして宴会でも言行一致をきっちりやって風のように去る様。俊太郎の中にエレナへの印象が強く残ったのだった。




