4-1.俊太郎の手紙
4-1.俊太郎の手紙
穴から石畳の道に降りると、ミレナは、今日こそは、爺らに運ばれずに自分の足で屋敷にたどり着いた。
「あら、お帰りなさいませ。」
とイリナは柔らかな笑顔を作るが、何を急いだのか呼吸が速い。
クナイも首印も持たずに帰って来たということは、荒事にならなかったとイリナは推察した。
胸元に白い紙が挟んであることに気づいたが、敢えて触れずに、
「お茶でも淹れて参りましょう。クッキーもありますよ。」
とミレナの機嫌を取った。
「お!おやつがあるのか?」
簡単に釣られた。
ミレナは、手紙をテーブルの上にぽんと置くと、まずはお茶会と、クッキーの前に陣取った。ご令嬢なので頑張らなくても誰も取ってしまうことはない。イリナはすました顔で良い茶葉の紅茶をゆっくりと淹れた。
「あいつに、会ってきた。」
聞きもしないのにミレナは語り出した。
「今日はお怪我もないようで。」
「今日は、殺すつもりで行った。何本も持って行くと甘えが出来るからな。一撃必殺で。だけど、避けられたよ。悪運の強い奴だ。」
「もし、トドメをさせたら万歳できましたか?」
さらりと聞いてきた。
「うぐっ。」
ミレナは喉を詰まらせた。
「あら大変。お水をどうぞ。」
――絶対殺す、そう思ってた。が殺した後、どうするつもりだったのか?
――同僚らしきものが二人はいた。
――返り討ちか、捕縛されるか。
――魔族ゆえその場で討伐?
改めて、自分は憎悪に囚われて何も見えていなかったと感じた。
――で、あればこそ
――読むべきだ。
とは分かるのだが、今ひとつ勇気が出なかった。
手に取ってはため息をつき、開かずに机へ戻す。うろうろしてはまた手に取る。だが、結局は投げ出してソファーにへたり込んだ。
そんなことを繰り返していた。
――まだ・・・開けない――。
イリナは、そっとお茶のおかわりを注ぎ足した。




