37/103
3-14.落手
3-14.落手
時が止まったかのようだった。じりじりとにじむ汗が、何度もしたたり落ちていった。
ティエリは差し出しながら、長い沈黙の中、ひたすら祈っていた。
ルイスは、ミレナがティエリを害しそうになればすぐに弾こうと、剣の柄から手を離さなかった。俊太郎は自分の心音がとても騒がしく感じた。
ミレナの目が少し泳いだ。俊太郎の同僚のティエリが震えながら差し出しているが、書いたのは俊太郎以外はない。
――手に取るべきか、取らざるべきか。
そして、ミレナは何か見えているのか、聞こえているのか、五月蠅そうな顔をした。
「分かってるわよ。」
ミレナは、何かと対話しているようだ。ティエリも、虫の影のようなものを目の端に捉えた。
『ハナシヲキイテヤレヨ』
そう聞こえた気がした。
「ふん・・・。」
鼻息は荒かったが、ティエリを尊重したのか丁寧な手つきで手紙を受け取った。
「……今日は、帰る。」
きびすを返すと、ミレナは穴に飛び込んだ。
――読んでくれるのか?
三人はミレナの去った穴を見つめていた。




