3-12.手紙
3-12.手紙
俊太郎は、祖父の俊一と、北畠に、ボリス伯爵を誤って討ってしまい、忘れ形見の令嬢ミレナから付け狙われていることを正直に相談した。そして、二度峰打ちにして帰したものの、可能であれば対話をしたいという意向を打ち明けた。
――ふむ・・・。
「とりあえず、斬らずの剣までは、たどり着いたか。」
ぼそりと仁兵衛が言う。師匠の言うことは端的すぎて俊太郎には理解できない。今鶏と睨み合えと言われてもまだ真面目に出来ないであろう。
「斬らずの剣?ですか?」
俊太郎はこぼした。極致は抜かずの剣と言われている。その道標なのであろうか。
「そうだ。とりあえず、斬ってしまうと、伯爵家の命運、その子の人生などに大きな影響があることは身を以て分かっただろう?」
「何となく、ですが。」
――別に斬らずの剣などとしゃれ込んだわけではない。刺客とは言え、年端のいかない女の子を惨殺したくないだけである。
そこで、二人に見てもらいながら、俊太郎は一つ一つ言葉を選んだ。
自分に害意はなかったこと、ゴブリンから守ろうとしたこと、そして伯爵の死が不本意な事故であったこと、何より――対話を望んでいること。
などを丁寧にしたためた。
そして、気の利くティエリに持たせて、高貴な方に差し出すように、竹に挟んで差しだそう、と打ち合わせた。
――彼女は、果たして受け取ってくれるだろうか?




