3-10.考察
3-10.考察
ーーそれって、本当にミレナ様を蹴るつもりだったのでしょうか?
イリナの呈した疑問は、ミレナの中で何度も反響した。
「うう。私にも、分からない。」
「ええ、先をどうぞ。」
「私が蹴り飛ばされて、父上は、激怒した。」
「あー・・・。」
イリナが何かを察したような声を上げた。
「そして、その男は、何のためらいもなく、ゴブリンの首を刎ね飛ばしたんだ。」
「でしょうねぇ。」
「ん?お前もそう思うのか?」
「はい。私は腕っ節はからっきしですが、勇者だったらそうしますね。自分の仕えるお嬢様がゴブリンに襲われてて、ゴブリンは、ヨダレを垂らして目が血走っていたのですよね?」
「そうだ。」
「はい。ですので。私も刎ね飛ばすなり斬り殺すでしょうよ。おぞましいことです。」
「それで、父上が割って入り、私を蹴って、民を殺したた廉があるとか言って、男を処刑しようとしたんだ。」
ーーなるほど、剣技に優れ、領民思いで公正な伯爵らしい決断である。しかし、娘を蹴られて我を失っていたかもしれない。
「よくその男死にませんでしたね。伯爵に掛かれば三合と持たないでしょうに。」
「まあ・・・。なんか父上が圧倒していたがまだ死んでなかった。」
ーーボリスに何合かしのいだだけでも、伯爵家の騎士団では報償が出るだろう、イリナはツノなしの男がそこそこ出来ると踏んだ。
「その時、精霊が言ったんだ。『ハナシヲキイテヤレヨ』って。」
「それで?」
イリナは身を乗り出した。
「父上は一瞬止まり、その一太刀が、父に入ってしまったんだ。」
ミレナはイリナの胸に顔を埋めて泣いた。
イリナは母親のように、この小さな女主人をずっとさすってやった。
「私が父上、父上、と泣きすがる内に、あの男は逃げたんだ。」
ーーなるほど。
イリナなりに、ミレナの語りを分析していた。
「なんで精霊は、話を聞いてやれよ、って申したのでしょう?」
「あ・・・。それは、考えたことなかった。」




