3-9.再び目覚め
3-9.再び目覚め
「つつつつつ」
ミレナはまた屋敷で気がついた。
「お目覚めになりまして?」
やさしくイリナが声を掛ける。色の白い手が、吸い口を出してくれる。ミレナは奪うように取ると、一気に水を飲み、むせた。
「けほけほ」
「慌てなくてもお水は逃げませんよ。」
イリナはやさしく寄り添うと、ミレナの背中をさすった。また腹が痛い。
「今回もレフじい達が運んでくれたのか?」
「ええ、そうですね。穴の付近に倒れておられましたので。」
ミレナはまた赤面した。敵討ちに行って勝ってくるはずが、この体たらくである。しかも、誰もそれ以上言わない。
「私は・・・。またあの男に?」
「分かりませんが。気を失って、こちらに押し戻されたようです。」
「殺されず、助けられたというのか?父上の敵に・・・。」
「おそらく・・・。」
「なぜ、奴は私を殺さない?魔族が憎ければ、ゴブリンや父上と同じように斬れば良いではないか。」
「それは、そうかもしれませんが・・・。ミレナ様は明らかに、育ちの良さそうなご令嬢で、逆さに見ても低級魔物には見えませんよ。」
「私のどこがゴブリンだ?」
「ですので、そうではございませんと。」
「でも、奴は父を討ったではないか?」
「まあ・・・。私も、現場は見ておりませんので・・・。その、イヴァン様とあの男はどうして斬り合いになったのですか?」
ミレナは回想した。
「あの日は父上とお散歩していたんだ。父上はホブゴブリンの長からの陳情を受けて、何か考え事をしていた。私は綺麗な蝶々が飛んでいるのを追い掛けていたんだ。すると、普通は人族領に行くはずの穴から、どういうわけかヨダレを垂らしたゴブリンが戻ってきた。」
「はい。」
「それと同時にあのツノなしの男が、こちらに転がり込んできたのだ。」
「ええ。」
「ゴブリンは、なんか目が血走って、私の方に向かってきたんだ。」
「え・・・。狂化したゴブリンがミレナ様を襲う所だったのですか?」
「私は、単に近寄って来たのかと思っていた。ちょっとヨダレが垂れていたが・・・。」
「ゴブリンの雄は、女に目がないのです。見境なく。特に狂化していると、領主の子とか分かってません。」
イリナは、ミレナがひどい目に遭いそうなことを言いたかったが、子供にあまりきわどい表現もつかえずに言葉を選んでいた。
「それで、どうなったのですか?」
「その男がゴブリンをすごい勢いで追ってきた。ゴブリンは私を捕まえた。そして男が蹴りを入れた時に、ゴブリンが振り向いたせいで、私が思いきり男に蹴り飛ばされて吹っ飛んだんだ。」
「ーーそれって、本当にミレナ様を蹴るつもりだったのでしょうか?」
「えっ?」




