3-2.三人組
3-2.三人組
「話を聞かせろ。」
水を飲ませて、俊太郎を落ち着かせるとルイスが迫った。
「ふくろう亭でランチにしようぜ。」
ティエリは明るく言った。俊太郎はうなずいた。
注文を終えると、ルイスが切り出した。
「さっきの子は何者だ。魔族か?」
「ああ・・・。ミレナという。魔族のボリス伯爵家の娘だ。」
「ご令嬢と言うには随分なご登場だったね。」
ティエリも遠慮なく割り込んでくる。フライドポテトを口に放り込んだ。
「なんで狙われているんだ?」
「なあ、ティエリ、俺が帰ってきた時に、ゴブリン臭くないって言ったよな。」
「言ったな。あれは低級魔物の血じゃない。」
「うん。俺はあの日、魔界側に落っこちた。そして、狂化したゴブリンが、あの子を襲おうとしていた。だから、俺はゴブリンを蹴り飛ばすつもりだった。しかし、どういうわけか体を入れ替えられて、結果的にあの子の背中を蹴っ飛ばし、転がしてしまった。」
「それで殺しに来るには乱暴だな。」
「そうじゃない。父親がいたんだ。イヴァンという、魔族伯爵だ。すさまじい剣だった。北畠師匠と同じかもう少し速い。」
「死ぬじゃないか。」
「うん。伯爵は、俺がお嬢さんをゴブリンから守ろうとして蹴ったはずが、お嬢さんを蹴ったと見た。それでも襲いかかるゴブリンの首を俺は刎ねた。」
「助けてるじゃないかよ。」
ルイスが反論した。
「その通りだ。俺から語ればそういう話なんだ。」
「じゃあなぜ?」
「ゴブリンは、あちらの『領民』なんだ。俺は殺人罪だと言っていた。」
「おかしいじゃないか。狂化していたんだよな?」
「人族的にはそうなる。」
「多分、話し合えば誤解は解けると思ったが、あちらは、領民を殺して娘を暴行したと解釈したらしく、問答無用ですさまじい斬り合いになったんだ。」
「それ、死ぬ奴じゃん。なんでお前生きてんの?」
「それな・・・。」
俊太郎は、少し間を取った。額に汗をかいている。タオルを出してもう一度拭った。
「まだ話せるか?」
ティエリが心配そうに顔をのぞき込んだ。
「ありがとう・・・。大丈夫だ。」
俊太郎は水を飲んだ。
「今日も、ロビーさんが固まったじゃないか。俺はあまりはっきりしないが、目のいい人には精霊が見える。俺が押し返そうと思って、刀を振り下ろした時だった。『ハナシヲキイテヤレヨ』という声がしたんだ。高い女の声だった。」
ルイスもティエリも喉を鳴らして顎で先を促した。
「瞬間、ボリス伯爵は一瞬止まったんだ。俺の攻撃なんて受けられると思っていた。が、伯爵はその一撃だけは受けなかった。結果的に首からすごい血を噴いた。」
「勝っちゃった・・・ってやつか。」
「ああ。100回やったら100回負ける相手だ。ああいうノイズでもない限り。」
「殺す気はなかったが殺してしまった、と?」
「そういうことだ。」
俊太郎は、もう一度喉を鳴らしてコップを空にした。ティエリがポットから水を足してくれた。この下りの話になると、心臓が飛び出しそうになる。
「それを、あの子は見ていた。俺は、魔界に乗り込んで、ご令嬢を蹴り、ゴブリンの首を刎ね、伯爵を討ってしまったんだ。」
「それで、『ヒト殺し!!』って言われたわけだな。」
「その通りだ。」




