2/73
1-2.入門
1-2.入門
村の男達のおかげで助かりこそした。がーー
ーー何も出来なかった。
ゴブリンに投げ飛ばされて、もんどり打ったのだ。俊太郎は、今も父の喉笛から噴き出た真っ赤な血を夢に見る。
ーー力が欲しい、
ーー刀が欲しい、
心から願った。
「ワシの友達に剣の師範がおるが…」
祖父の誘いに俊太郎は身を乗り出した。
「行きます!」
俊太郎は、やりたくないことは、全くしない子供だった。理屈をこねては、大人を言い負かした。しかし、あの事件以来、竹刀の素振りをしている。不憫に思った祖父が紹介したのは北畠仁兵衛という剣の師範だった。北畠は祖父宅の近所に住んでいた初老の男である。
祖父が菓子折を片手に北畠を訪ねた。
鶏を飼っているらしく、庭先に、鶏小屋があった。
そこに一人の男がじっと中を見つめている。髪を後ろで結び作務衣を着たその男は父より年上で祖父より若そうである。
ーー卵探し?
彼は、微動だにせず、鶏と睨み合っていた。




