2-3.お散歩
2-3.お散歩
ボリスの屋敷。
「父上~!」
客が帰ると、イヴァンの胸にミレナが飛び込んできた。10歳の娘である。魔族らしい立派なツノを持っている。色白で目の大きな娘は、イヴァンにとって最高の宝物だ。
「お散歩、行こうよ!約束だよ。」
「そうだったな。」
イヴァンが眉間の皺を解くのは、妻や娘と話す時である。
「お散歩、お散歩~」
「最近は、魔素が減って、花も元気がないからね。見回りがてら、お散歩に付き合うか。」
「えー、見回りなんて嫌よ。ミレナとお散歩しようよ~。」
「何があるか分からん。」
当たり前のように剣を腰に下げた。
「そんなの持って行かなくて良いのに。父上にかなう奴なんていないじゃん。昨日習ったよ、仲良くするには、まず言葉って。」
「学校でそんなことまで教わるのか。」
ボリス伯爵は苦笑したが、帯剣は解かなかった。ミレナは膨れていたが、散歩に行ってくれるというので、機嫌を直した。手を繋いで散歩に出たが、イヴァンはホブゴブリンの陳情が頭から離れず、顎に手を当てては、沈思黙考を続けていた。
考え込むといつもこうなるので、ミレナもあまりイヴァンを責めずに、花や虫と遊ぶようにしている。早速、綺麗な蝶を見つけた。
「あ、蝶々!」
ミレナは蝶を追って、駆け出した。イヴァンはミレナの離脱に気づかなかった。それは、ほんの・・・ほんの少しのことだった。イヴァンは、ふと我に返るとミレナと距離が開いていた。イヴァンは、ミレナを追って走った。胸が早鐘を打った。
「ミレナ、そっちは穴だ!」




