2-1.ボリス
2-1.ボリス
イヴァン・フォン・ボリス。青年のような痩身に、水牛のような角を持つ。魔族伯爵である。
人差し指を眉間に当て、皺をほぐそうとするが、その皺は深く刻まれている。
「御館様、今日もゴブリンの村長が陳情に来ております。」
老執事のレフが来客を告げる。
「分かった。行こう。」
ボリスは重い腰を上げた。
客間には3人のホブゴブリンがひれ伏していた。
「掛けてくれ。聞こう。」
「エガサ村から参りました。もう魔素が尽き、砂漠化が進行しています。」
「アトリ村です。同じくです。大地がひび割れています。」
「ロッポ村です。今日は伯爵領に向かったゴブリン達が人族領に漏出して、討たれました。」
5年間ほぼ毎日この調子である。伯爵は、またか、と大きくため息をついた。
無論、村長が悪いわけではない。怒りをぶつけるわけにも行かない。が、領主として何も出来ていない自分にいらだちを感じている。軽く拳を握った。
ゴブリンは、気の良いやつが多く、繁殖力は強いし、比較的素直で扱いやすい。問題は人族領に入ると狂化してしまうことと、それを恐れた人族に駆除されていると言う事実だ。
「・・・善処・・・する。」
絞り出すようにそれだけ言うと、3人の村長は、うなだれて引き下がった。彼らもどうにもならないのが分かっているのだ。それでも、拒否せずボリスは陳情を受けることにしている。
ーー何か・・・目に見える成果や取り締まりをなさねば。
ボリスは、大きく息を吐いていた。早速、見回りに出ようと部屋を出た。




