1-12.御礼
1-12.御礼
狩っても狩っても、ゴブリンやコボルトは湧いてくる。
駆除隊の討伐は、毎日のように続いた。現場は、確実に臨界点へと近づきつつあった。既に俊太郎の同期は、療養中である。繰り返し現場に出るうちに、ロナウド隊長も、副長も、サミュエルも、次第に気づき始めていた。
俊太郎だけが、毎回くたくたにはなるものの、大きな傷を負わずに生還していることに。
偶然にしては、続きすぎている。サミュエルの足首の傷のような小さな負傷は、誰にでも起こりうる。だが、俊太郎にはそれがほとんどなかった。
――どうやら、運だけではない。
同じ戦場、同じ任務、同じ魔物。それでも、結果に差が出る。
サバイバル能力が高いというのも、間違いなく戦士の資質の一つなのだ。
そして、数日後のある日――。
一台の馬車が、北畠の道場に横付けされた。見覚えのある紋章だった。
「こちらにおられると伺いまして」
降りてきたのは、リズ・ローレンスだった。
その日は、俊太郎は非番で、師匠の道場に顔を出していた。
「命を助けていただいた御礼が遅くなり、申し訳ありません。
あれから父と王都へ仕入れに行き、ご助言どおり、泉を迂回して帰って参りましたの。」
商家の娘らしく、リズは長いまつ毛を瞬かせ、俊太郎を見上げながら語った。
「ご無事で商いができたのなら、何よりです。」
俊太郎も笑顔を返す。師匠は目配せで、稽古は中断して来客に応じるよう促していた。
客間に案内し、俊太郎がお茶を淹れた。
「それで……ささやかですが、御礼をお受け取りください。
こちらなど、いかがでしょう?」
差し出されたのは、一振りの刀と、御守りの護符だった。
「これは……?」
「この前、馬車の前でゴブリンを沢山倒して下さいましたよね。その際に刀が折れてしまったとのこと。お詫びと御礼に代わりの刀を差し上げたいと思います。
あまり知られておりませんが、さる名匠の作で、銘は、
『村霧』というそうです。
それと、この御守りの護符。――一度きりですが、本当に死ぬようなダメージを受けた時に、一命を繋ぎ止めてくれます。ただ、すぐにちゃんとした治療はしないとやっぱり危険ですから、頼りすぎてはなりません。」
「ありがとうございます。」
俊太郎は、弾んだ声で村霧を手に取った。師匠は深く頷いた。




