159 文化祭 1年へのパトロール隊
文化祭。校内発表。一般公開の前の日だ。
「うひょおおおお! 文化祭だぜ!」
「「「へい、へい、へーい!」」」
「「「文化祭だーーーー!」」」
僕は茂丸と満と陽と黄色と竹刀で、教室内で騒いでいた。テンションマックスだ。
廊下側の窓は目隠しに女子禁制と書かれた紙が貼られている。
そう、ここは男子トイレ兼休憩所なのだ。まるで男優遇のエロ本屋なのだ。
休憩所とは名ばかりで、教室の奥のテーブルにはエロ本が積まれている。
「よく考えたらさ」と竹刀。
「ん?」
「俺ら、女の子ナンパするチャンスなくね? 男子トイレっていうと」
「「「ああああああああああああああ!?!?!?」」」
「話すどころか、避けられるんでない?」
陽はうつむき加減でつぶやく。
「「「しまった!」」」
満と竹刀と黄色が今頃、顔を青くしている。
「「「これじゃあ何のために見張りを名乗り出たのかわからねえじゃねえか!?」」」
「バカだなぁ」と僕は苦笑する。
「大体、どこのクラスにもトイレあるし、職員室トイレも解放されてるんだよ?」
「人生棒に振ってしまった、竹刀だけに」
「うう、寒いなー」
僕は手を前で組む。
「明日は女ががっこに来るんだぞ? 誰か見張り代わってくれ!」
「満と竹刀と黄色が頑なに見張りやるって言ってたんじゃね? 今更代わるとかないわー」
りねが薄ら笑いを浮かべる。
キンコンカンコン。
「今日は待ちに待った文化祭です。羽目を外しすぎないように。休みの子はいつもの子ね。それでは今日は衣類を集めないので時間まで頑張ってください」
和矢が来て、僕らの足の錠を解くと、朝のホームルームを終え、出ていった。
周り皆が立ち上がる。
「じゃあ俺は2人に見張りを任せて、はーちゃんに会いにでも行くかな~」
「ふざけんな、ボッキマン!」
「文句はたいに言えよ」
「やめろよ。見苦しい。じゃあ、たいと春斗と俺は生徒会の仕事があるから」
陽は相変わらず心強い味方だ。
ピンポンパンポン。
『おはようございます。ただいまから御手洗高校祭が始まりました。高校1年生にとっては初めての文化祭、3年生にとっては最後の文化祭になります。皆さん準備はできていますか? 御手洗高生全員で力を合わせて素敵な御手洗高校祭にしましょう。以上、生徒会長、虻庭モンでした』
モンの活舌の良さに圧倒されながら僕らはパトロールと称して、遊びに出かけた。
1年1組に意気揚々と向かったがいいが、僕の苦手なお化け屋敷だった。
「僕、待ってるから2人で行っておいで」
「だーめ! 3人で行こうぜ。手つないでるからさ」
陽が僕の手を握る。恋人つなぎだ。
「たー坊も行くんだし、負けられないな」
春斗はストレッチを始めた。
「手、絶対に離すなよ」
「離したらフェラしてあげる」
「……嬉しくないから」
僕らはペンライトを手に、ひんやりと冷房のかかった教室に入っていく。入り口には暖簾がかかっている。だいぶ寒い。
トイレは墓に風変わりしている様子だ。
トン!
両肩に手を置かれた。
「何だよ、春斗――」
振り返ると前髪を伸ばした髪の長い、白い服のお化け役が僕の背後にいた。
「きゃあああああああああ」
僕は陽の手を思い切り引っ張った。
(早く、ゴールへ)
「うおおおおおおお」
僕はお化け役の待ち構えている所を目をつぶって駆け抜けた。
バン!
開いていた思い切りドアを閉めて、お化けの攻撃をシャットアウトした。
「たいの手汗、半端ないね。怖かったの?」
「こ、怖くねーし、春斗は?」
「嘘つくともう一周させるぞ?」
春斗は僕の閉めたドアから出てきた。やはり、暖簾がかかっている。
「すみませんでした、怖かったです」
僕は陽の手をパッと離した。汗をハンカチで拭く。
「うん、石鹸の香り!」
陽は手の匂いを嗅いでいる。
「キモイから」
「さっさとパトロールするぞ」
「「おー!」」
1年2組はタピオカ屋だ。
僕らは苦々しい顔でスルーした。
(どうせ明日には女子で賑わうんだろうな、け!)
「1年3組もお化け屋敷かー」
「僕はNGで。一歩も動かないから!」
僕は駄々っ子のようにその場に座り込む。
「しょうがない奴だな」
「俺らだけでパトロールするってのも一興」
「ヘタレはここで休んでな」
春斗は僕に言い捨てる。
「僕はヘタレじゃないぞ! そんなに言うなら行くよ。陽、手貸して。手を離したらどうなるか分かってるな?」
「そんな、公衆の面前で言うのか? この教室内でどんな変態プレイを?」
「そんなこと言ってないぞ!」
「レッツゴー」
春斗は陽のもう片方の手をつかんで教室に入っていく。
僕はあわや、置いて行かれるところだった。
(うう、怖い)
カーン!
「ぎゃあ!」
ドン、ドシャ!
僕は真上に吊り下げられた缶の音に恐れて、つんのめって、最終的に転んだ。
「たい、手が」
陽と僕との手は繋がれていなかった。
その時、耳にふっと息がかかった。
「あわわ」
「お前なあ。ここがデスゲームとしたらかませ犬だぞ」
「春斗はいいよね 冷静でいられて 関係ないからっ」
僕はあまりの恐怖にパニックになった。
「ふふ、ハ〇ターハ〇ターネタやめろよ」
陽は笑って、僕の手をとった。
それは暖かかった。
「ああ もう大丈夫」
「その顔やめろ、脅かすほうが怖いだろ」
春斗は僕にペンライトを当ててくる。
「行こう」
僕は恐怖値がカンストして、無敵の人そのものだった。
「やっと出れた」
暗幕から一筋の光がのぞいている。
「それじゃあ、手を離してしまったからたいにご奉仕するかな」
「やめろ、何する気だ!?」
「そしたら、2年行こうぜ。エロは後でやってくれや」
そういう春斗に僕らはついていった。
パトロールは続く。




