出会い編 初めての友達
「そういえば、ふたりはシャルが転校してくる前から友達だったですよね?」
ある日の昼休み、いつものようにおしゃべりをしながら昼食をとっていると、シャルちゃんと私たちが出会う前の話題に。
「そうだね、里香と出会ったのは、幼稚園の頃」
「あの頃の柚、今より人見知りがひどかったんだよね~」
「Oh~、今よりもですか?」
「そ、そんなにひどかったっけ~」
「うん、すご~く」
「ふたりはどうやって仲良くなったですか? 良かったら話してほしいです」
「なんか、恥ずかしいなぁ~」
「え~、いいじゃん、話してあげても」
というわけで、ほんのちょっと昔話をすることにした。
「小さい頃の柚は、絵を描くか、絵本を読むか、基本独りで遊んでたよね」
「うん、そんな中で里香が最初に話しかけてくれて……」
───十年前
「こっちは茶色で~、ここは白」
「ねぇ! 何描いてるの?」
「へっ!? あっ、ね、ねこだよ」
「可愛いね~、すっごい上手~」
「う、うん、ありがとう」
「みんなといっしょに遊ばないの?」
「お絵かきの方が、好きだから……」
「ふ~ん、じゃあ今度、あたしも一緒にやりたいな~」
「い、一緒に?」
「だめかな?」
「う、ううん」
「よかった、あたしの名前は里香、よろしくね」
「私は柚季。よ、よろしく」
里香と話したのはこれがはじめてだった。
「何色くらい持ってるの?」
「……十八色くらい」
「すご~い、あたしのよりも多い」
「お絵かき大好きっていったら、買ってくれたの」
「いいな~、あたしもいろんな色の買ってもらおうかな~」
「里香ちゃんって、お外で遊ぶ方が好きだと思ってた」
「う~ん、どっちも好きだよ、でも柚季ちゃんと遊ぶのは初めてだから楽しみ」
「は~い! みんな~、そろそろ自分の教室に集まりましょう」
「あっ、先生がよんでる。じゃあね~柚季ちゃん」
「うん、じゃあね」
ちょっとびっくりしたけど……。でも、声をかけてくれたのは嬉しかった。この頃の里香は、いきなりみんなで遊ぼうよ、とかではなく。私の好きなことを一緒にやろうという誘い方をしてくれた。だから早く打ち解けられたんだと思う。
───幼稚園から帰った後。
「あっ、そろそろお姉ちゃん帰ってきてるかな~」
優子お姉ちゃんの家に遊びに行く、早く今日のことを話したくてたまらなかった。ちなみに、この頃の優子お姉ちゃんは今の私たちと同じ高校生。
「ねぇ~お姉ちゃん、聞いて聞いて~」
「あら柚ちゃ~ん、どうしたの、なんだかごきげんね~」
「今日ね、幼稚園でね、里香ちゃんとお話したの、今度一緒にお絵かきやろうって!」
「お友達ができたの?」
「う~ん、今日は少しお話しただけ」
「そっか~、これからもっと仲良くなれるといいね」
そう言いながら、頭を撫でてくれる。
「うん、エヘヘ。あれ?」
ふと、お姉ちゃんの机に何か置いてあることに気づく。
「ねぇ、お姉ちゃん、それ何?」
「これ? 今日学校で作ったカップケーキだよ、食べたい?」
「食べた~い!」
「じゃあ~、晩ご飯もあるから、お姉ちゃんと半分づつね」
「は~い」
お姉ちゃんは、ちょっと大きい方を私にくれた。
「う~ん、おいひ~」
「よかった~、って柚ちゃんお口よごれてる」
「えっ? あ~、お姉ちゃんふいて~」
「も~しょうがないな~、ほらじっとして」
「ん~~」
「はい、きれいになったよ」
「ありがと~」
その後もお姉ちゃんとおしゃべりしたり、ゲームをしたりして遊んだ。そして、あっという間に帰る時間になってしまう。
「柚ちゃん、そろそろ帰らなくちゃね」
「え~、もうちょっと~」
「ママに怒られてもいいの?」
「うぅ~、いや」
「でしょう?」
「でも、お姉ちゃんともっと一緒がいい~」
「そう言ってくれるのは嬉しんだけど……。お姉ちゃんそろそろ宿題しなきゃ」
「う~、わかった」
「柚ちゃんは良い子だね、またいつでも遊びにおいで」
「うん、バイバ~イお姉ちゃん」
「またね、柚ちゃん」
この頃は、こうやってよくお姉ちゃんに遊んでもらっていた。
───翌日
「……里香ちゃん」
今日は里香の方から話しかけてくることはなかった。里香は私とちがって友達も多い、その子たちと屋外で遊んでいる。自分から話しかければいいんだろうけど、当時の私にはハードルが高かった。里香ちゃん、私との約束忘れちゃったのかな? ちょっと不安な気持ちになってしまった。
そして四日ほど経って、ようやく里香が話しかけてきた。
「柚季ちゃん!」
「……里香ちゃん」
「やっとあたしも十八色の色鉛筆買ってもらったんだ~」
「……里香ちゃん、約束忘れたのかと思ってた」
「えっ、忘れてないよ~」
ちょっと拗ねた様子の私に里香は謝った。
「ごめんね柚季ちゃん、あたしも十八色のを買ってもらってから一緒にお絵かきしようと思って……」
里香は約束を忘れてしまったわけではなかったようだ。なんだかホッとした。
「そう、だったんだ、よかった」
「あっ、柚季ちゃんの笑った顔、初めて見た~」
「ふぇ!?」
なんだか、自然に笑顔が出ていたみたい。
「えへへ、な~んかうれしいな~、一緒にお絵かきするの楽しみにしてくれてたんだ~」
里香のほうも笑顔を浮かべた。
「り、里香ちゃん、何描くの好き?」
「あたしは、ワンちゃんとか~」
「じゃあ、私もワンちゃん描こうかな」
この日以来、頻繁にふたりで遊ぶようになった。
「と、こ~んな感じかな」
「Oh~、たしかに今よりひどいです」
「でしょ~、しかも柚ったら、あたし以外の友達は作ろうとしなかったし」
「でも、あれから少しづつ、他の子とも話すようになったでしょう?」
「あたしが一緒にいる時だけ、だったけどね」
「……そ、それは、否定できない」
「けど、そんな柚が小学生になったある日、ねっ!」
「うん、私が初めて、自分から友達になりたいって思える子と出会った」
「そうなんですか? その子はシャルの知ってる子ですか?」
それを聞いて、私と里香は顔を見合わせてクスッと笑った。
「ユズキ、リカ?」
「じゃあ、話の続きね、その子と出会って、友達になるまでの話」




