出会い編 人間界に舞い降りた天使?
「ねぇねぇ柚ちゃん、転校生ってどんな子かな~」
「あれ、今日だったっけ?」
「そうだよ、楽しみだな~」
今日は私たちのクラスに転校生が来る。男の子なのか女の子なのか、出身はどこなのか、何も知らされていない。当日のお楽しみということで、先生が内緒にしたのだ。けれど、私は割とどうでもよかった。
「別に私は……」
「え~なんでなんで?」
「だって、その子とはあんまり関わらないだろうし」
「またそんなこといって~」
この時点ではそう思っていた。
教室に入ると、皆かなりそわそわしている様子。どんな子が来るんだろうと転校生の話題で持ちきりだ。
「は~い、みなさん席について~」
先生が教室に入ってきた。
「はい、静かに! 今日からこのクラスに新しい仲間が加わります、みんな仲良くしましょう。さぁ、入ってきてください」
クラスメイトの注目がドアに集まる。まず目に入ったのは、さらさらとしたブロンドの髪、そしてシルクのような白い肌。そのあまりの可愛さに、私は目を奪われてしまった。
「アメリカから引っ越してきた、シャーロット・テイラーちゃんです」
転校生が外国人の子、ということにも少し驚いたけど、そんなのは二の次だ、だってこんなに可愛い子、今まで見たことない。
「Oh~、シャルのことだったですか!?」
私が自ら友達になりたいと思えた初めての子、それが自分のことだとわかり、少し驚くシャルちゃん。
「えへ、実はそうなんだ~」
「柚ったら、転校生なんて別に気にならない、とか言ってたくせにさ」
「だ、だって、目の前にあんな可愛らしい天使が現れたら~」
「シャルが天使?」
「うん、私の元に舞い降りた、とっても可愛い天使ちゃん」
「いや、柚の元にってわけじゃないから」
「いいじゃん、そういうことにしてくれても~」
「まったく~」
というわけで、ここからはシャルちゃんも交えて思い出話を続ける。
「じゃあシャーロットちゃん、自己紹介お願いできる?」
「はい。皆さん、おはよう、ございま~す! 私の名前はシャーロット・テイラーです、よろしく、お願いします」
「は~い、みんな拍手~」
この頃からシャルちゃんは、ある程度日本語を話すことができていた。今よりもちょっぴり片言ぎみだったけどね。
クラスのみんなは、初めての外国人の子にちょっと戸惑っている様子。私もそうだったんだけど、でもこれは逆にチャンスとも思えた。私がシャルちゃんの日本での最初の友達になれるかもしれないと。だけど、今まで自分から友達を作ろうとしなかった私にはどうすればいいかわからず、里香にすがる。
「……ねぇ里香ちゃん、なんて声かければいいかな?」
「転校生とは関わらないんじゃなかったの~」
「そ、それは……。でも、友達になりたい……」
「そっか。よ~し、あたしも協力する」
「ほ、本当?」
「柚ちゃんが誰かと友達になりたいなんて、初めてのことだしね」
「里香ちゃんありがと~」
「ただし、最初に声をかけるのは柚ちゃんだからね」
「うぅ~、が、がんばってみる」
さっそく次の休み時間、実行に移そうとするのだが。
「ほら、柚ちゃんから話しかけないと」
「えっ、でも、なんて声をかければ……」
中々声をかけられずにいた。
「……ね、ねぇ、里香ちゃ~ん」
「だ~め、柚ちゃんが最初に声をかける約束でしょ!」
結局、声はかけられなかった。
「まったく~」
「だ、だって~」
「そんなんじゃ他の子に取られちゃうかもよ、いいの?」
「……よくない」
「じゃあ、今度こそ昼休みにね」
そして昼休み、ついに意を決して話しかけた。
「シャ、シャーロットちゃん」
「Oh、ハ~イ」
「私たちと一緒に、お弁当食べない?」
「一緒に食べてくれるですか?」
「う、うん、シャーロットちゃんが良ければだけど」
「もちろんです」
とても緊張したけど、シャルちゃんを昼食に誘うことができた。
「柚ちゃん、やったね!」
里香が私の耳元でささやいた。そして、私たちは里香の提案で中庭の木の下にやってきた。
「誘ってくれてありがとうです、ふたりの名前、教えてほしいです」
「そういえば言ってなかったね、あたし里香」
「……私は柚季」
「Oh~、リカとユズキですね、覚えたです」
「ねぇ、シャーロットちゃんはアメリカの学校でなんて呼ばれてたの?」
「シャルかシャーリーと呼ばれてたです」
「じゃあ~、今日からシャルちゃんって呼んでも良いかな?」
「はい、OKです」
「やった~、よろしくね!」
「……あ、あの、私も呼んでいい?」
「Oh~もちろんですよ、ユズキ」
最初こそ緊張していたけど、シャルちゃんのふんわりとした雰囲気に、いつのまにかすっかり打ち解けていた。
「ねぇシャルちゃん、今日のお弁当は何?」
「今日はサンドイッチです」
「へぇ~おいしそうだね、なにサンド?」
「ハムレタスサンド、タマゴサンド、後ジャムサンドです」
「どれが一番好き?」
「ジャムサンドです!」
「シャルちゃんって、甘いのが好きなんだね~」
「Oh~、そうかもしれないで~す」
そう言いながらシャルちゃんは、ジャムサンドを半分にした。そして、それを私と里香にくれた。
「ユズキ、リカ、すごくおいしので食べてみてください」
「えっ、い、いいの?」
「でもこれ、シャルちゃんが一番好きって……」
「は~い、だからふたりに食べてみてほしいで~す」
「「ありがとう、シャルちゃん」」
ニッコリと微笑むシャルちゃん。せっかくなのでお言葉に甘えることにした。
「う~ん、おいし~」
「ほんとだ~、すっごくおいしいよ!」
ほどよい甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がる、果肉感もたっぷりでとてもフレッシュ、シャルちゃんが一番好きだというのも頷ける味だ。
「ねぇシャルちゃん、あたしのミニハンバーグ食べてみて」
「私の玉子焼きも食べて、すっごくおいしいよ」
「Oh~、ありがとうです」
お礼に私たちも好きなおかずをシャルちゃんに。
「Yummy! どっちもすごくおいしいです」
「でしょ~」
なんか、お互いに好きなおかずを交換し合っていた。
「そうそう、あの時のジャムサンドめちゃくちゃおいしかった~」
「確かに、あれは絶品だったね」
「あれはマムのお手製ジャムのサンドイッチです」
「えっ!? あれってケイトさんが作ったの?」
「どおりでおいしいわけだね」
あれがケイトさんの作ったものだということなら納得。シャルちゃんのお母さん、ケイトさんはとても料理上手なのだ。それこそプロ顔負けといっても過言じゃないくらいに。
キーンコーンカーンコーン♪
「あっ、もう昼休み終わりか~」
「たまにはこういう話もいいね」
「……私はちょっと恥ずかしかったかも」
「Oh~、シャルの知らなかったふたりのこと、知れて楽しかったです」
「だったらよかった~、ねっ柚」
「ま、まぁ~」
シャルちゃんが楽しんでくれたなら、話して良かったかな。
「それとユズキ、リカ。あの時シャルのこと誘ってくれてありがとうです。シャルは日本でふたりに出会えて本当によかったと思ってるです、So happy!」
「はぅ~、私もだよシャルちゃ~ん」
「あたしも~」
何はともあれ、私の天使ちゃんは本日も最高に可愛いのである。いや、可愛いを通り越して愛おしい。




