その視界には確かに映っていた。
翌日も雨はしとしとと続いていた。
人が群がる中、僕は廊下をまっすぐ進む。
そして教室に入り、彼女の前に行く。
「嘘ついたね?」
「あなたは……」
彼女、三森凛は固まる。
「なんでそんなことを?」
「聞いたよ。三枝さんを大切にできないから西村君と別れたって」
「それがどうしたの?」
彼女は何にも悪びれもせずに言う。
それが余計に僕の癇に障った。
「嘘でしょ?」
「……違うわよ。私は彼が許せなかっただけ」
「本当に?」
「ええ、彼が春香を大切にできないのは許せなかった」
彼女は続ける。
「私と付き合うために彼女と強引に別れたのに誠意が見えなかったから」
誠意?
この子は本気で言ってるのか?
「誠意か…」
「なによ?」
「僕にはそんなものはあり得ないと思うよ?」
「どういうこと?」
彼女は勘違いをしている。
「そんなものは三枝さんと強引に別れた時点でありはしないよ」
「そ、そんなことは……」
「ないよ。君は考えたことある?強引に別れられて許してほしいと謝罪してくる男を。そんなものは自己満足に過ぎないよ」
「だ、だけど謝ったら」
「許されないよ?」
僕ははっきり告げる。
「彼女は傷ついたまんま。君や彼では絶対に癒すことはできない」
「……」
彼女は黙ってしまう。
分かっていたくせに彼女は彼に無茶を言っていた。
その理由は……
「君がそこまでして彼に誠意を求めたのは罪悪感でしょ?」
「!?」
彼女の表情がこわばる
「そんなことないわ!」
彼女は叫ぶ。
教室は静かになる。
音は遠く聞こえ現実味がなくなる。
「嘘だ!」
僕も叫び返す。
こんなのは僕のキャラじゃない。
分かってる。
でも、我慢できなかった。
「教えてあげるよ。誰より一番三枝さんに顔向けできないのは君だよ」
その言葉で彼女は表情を崩す。
「……知ってる」
彼女は小さく肯定する。
僕はそんな彼女を背に教室を去る。
そうして妙に現実感のないまま僕は教室に戻っていた。
「あ、探したよ佐藤君!」
「三枝さん……」
「もう、どこ行ってたの?」
「ちょっとね、野暮用だよ……」
きっと彼女には気づかれていた。いつもと違う僕に。
「……どこ行ってたの?」
「だから、野暮用で……」
「嘘だよね?」
「……」
僕は答えられない。今度は僕が問い詰められていた。
「野暮用だよ」
「そんな顔で嘘つかないで!」
僕は窓を見てそこで初めて自覚する。
僕の表情はとても苦しそうだった。
「三枝さんには関係ないよ」
僕はただそれだけ告げて彼女の横を通り過ぎていく。
その視界には確かに映っていた。
僕と食べる予定のはずだった昼食がぎっしり詰まった袋が。
……ほんと、バカだな。
そう呟いた自分の声は、思ったより弱かった。
それでも——
読んでいただき、ありがとうございます。
気に入っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。




