僕は怒っていた。
梅雨。
それは絶対来るもの。
油断ならない季節。
そして、三枝さんは気に入らないみたいだった。
「むう…」
非常階段裏。
僕の昼食を食べながらむくれていらっしゃる。
「どうしたの?そんなに眉間にしわを寄せて」
「佐藤君。髪とは何かな?」
「神?」
「違うよ!髪の毛!」
「ああ、そっちね。なんか怪しい食べ物の宗教にでも入ったのかなって思ったよ」
「人をなんだと思ってるの!」
……大食い動物。
とは言えず黙っていた。
「はあ、佐藤君はいいよね。身だしなみに興味なさそうで……」
それは心外だ。僕だって寝癖くらい…
「寝癖とかは常識だからね?」
「……」
うん。そうともいうかもね……
「私が言ってるのは髪の毛をセットしたりすることだよ」
「え?」
驚きの事実だった。
「三枝さん食べ物意外に興味あったの?」
「当たり前でしょ?」
当たり前なのか。
「私、癖っ毛だから困るんだよ」
「へえー」
とても興味のそそらない話だった。
「ほら、こことか変でしょ?」
そう言って髪の毛の一部を刺してくるがまったく変化が分からなかった。
「何か変わってる?」
「はあ、佐藤君はこれだから…」
何か呆れられているが、不服だ。
「ちょっとよく見せて」
「へ?」
僕は三枝さんの髪の毛を近づいて観察する。
うん?この匂い…
「シャンプー僕と同じなんだね?」
「!?」
「三枝さんもわかってるね?ダボ派とはね」
うん、うん。
あれはいいものだ。
「変態!!」
「へ?ぐへ!?」
三枝さんから腹パンをもらう。
「な、なぜに?」
「人の髪の匂いを嗅ぐからだよ!」
「す、すみません」
弁解の余地もなかった。
「はあ、本当に変わってないの?いつも通り?」
「いつも通りだよ」
彼女はそれに気分を良くしたのか、ふふんと告げる。
「私の朝のヘアセットの努力の結晶だよ!」
女子は大変だなー
と、しか感想が出てこない。
僕もたいがいひどい奴である。
「まあ、可愛いかもね…少しは」
「少しは余計だよ!」
「はいはい」
俺の気持ちは届かなかった。
頑張って褒めたのに…
「春香……」
後ろから今にも泣きそうな声がした。
そこには西村がいた。
「なに?どうしたの?大我?」
その様子をおかしく思った彼女は彼に近寄っていく。
「凛がもう別れるって…」
「え、なんで?」
「あなたは春香を大切にしなかったからって……」
また急だな。
「なにそれ……」
「春香……」
彼は三枝さんに抱き着こうとする。
それをそれを見て僕は三枝さんと彼の間に入る。
なので、僕が抱きしめられることになった。
「悪いが俺で我慢してくれ」
「うっ、う、なんでー?」
彼は泣きながら聞いてくる。
僕は少し強めにいう。
「三枝さんに甘える資格は西村君にはないからかな」
「うおーん」
更に泣く彼。
「佐藤君?」
僕は少し怒っていた。
「なに?」
「なんで怒ってるの?」
「……さあね」
分かっていた。
僕は怒っていた。
甘える彼と甘えを許す三枝さんに。
そして、彼女に。
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