空は青く平行線上だ。 澄み渡っていてみんなに平等だ。きっと僕にも彼女にも。
あの日から時間は戻った。
いや、正しくは時間は進んでいる。
僕が戻っただけだ。
僕は一人静かに屋上に行く。
前と同じ。
何も変わらない。
ただ彼女がいないだけだ。
それだけなのだ。
だけど、それは確かな存在だった。
名前のない妙な関係だった。
元に戻った今でも分からない。
何て言うのかなあれは。
僕には答えがなかった。
僕は前と同じく校庭を眺める。
そこにはたくさんの人がいる。
たった一人ではない。
そう変わりなどたくさんある。
そのはずなのだ。
「ほんと、いなくても食いしん坊だな……」
彼女は食べた。
僕の感情も記憶も。
そうして侵食してきた。
太陽が僕を強く攻め立て、照らす。
僕はそれに少し気が滅入り物陰に移動する。
そうして元通り一人で昼食を食べようとしていた。
するとドアが開く音がして人が入ってくる。
状況は全く一緒だった。
同じ場所。
同じ天気。
同じ人物たち。
「春香……お前から呼び出すなんてどうしたんだ……」
彼は少しやつれていた。
「大我に言わなきゃいけないと思ったから」
「何を?……」
彼女は堂々と胸を張って告げる。
「私はあなたを許さない」
「……」
彼は少し呆気に取られていた。
だがすぐに静かに返事する。
「知ってる……」
彼は少し視線を彼女からずらして告げる。
そんな彼を見て続ける。
「でも」
彼女は視線を物陰に向ける。
「私は、もういいの……」
雲は太陽を隠し、あたりは暗くなる。
「春香?」
彼女は少し低い声で告げた。
「私の心は治らないし傷はあるまま。でも、それはきっと埋まらない……埋められない」
彼はただ物悲しそうに彼女を見つめる。
「それでも、決めたの」
「決めた?……」
「うん」
彼女は大きな声で言う。
「次に行く!」
空は雲が流れ太陽がパッと明るく顔を出す。
その景色は目が離せなかった。
不思議なことにその景色からは匂いがした。
暖かくて安心する太陽の匂いだ。
「だからあなたも考えて進んでほしい。それが元カノからのあなたへの最後のお願い」
「……」
彼は何も言わない下を向いているため表情は見えなかったけど…
彼の手は確かに強く握られていた。
「私は甘かった……」
後悔するように懐かしむように告げる。
「だから彼はあなたに、彼女に、そして私に怒った……」
浅く息を吐き続ける。
「本当は彼に謝りたい。でも彼はきっと向き合ってはくれない。だから。私から言うの」
一息おいて告げる。
「ごめんねって」
彼は静かに頷く。
「そうか…分かった……頑張れよ」
物陰に告げて去っていく。
空は青く平行線上だ。
澄み渡っていてみんなに平等だ。
きっと僕にも彼女にも。
はあ、本当に三枝さんは強引だ……
逃げないつもりだったのに……
彼女は強引に速やかに逃げ場をふさぐ。
僕は物陰から告げる。
「いいよ」
ただ一言告げる。
だけど彼女は満足そうに笑って物陰に告げる。
「また奢ってね」
僕は少し言い淀みながら言う。
「いいよ……君になら」
その言葉に返事は一言。
でも物陰から彼女の表情は見えない。
「変なの」
ただそれだけ。
でも、その言葉だけで十分だ。
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