それが一ノ瀬瑠璃との出会いだった。
「佐藤君、食べないの?」
「……食べるよ、ただ……」
なんで君は僕のカレーパンと自分の卵焼きを交換してるの?
「対価が見合ってないよね?」
「うん?」
彼女は首を傾げる。
「そんなことないでしょ?」
「何をもってしてそう言ってるの……」
「え、だってゾウと蟻では食べる量が違うでしょ?」
ああ、自分がゾウだって自覚はあるんだね……
「それ何も解決になってなくない?」
「むしゃむしゃ」
もう僕のカレーパン食べてるし……
そうしていつものやり取りをしていると屋上の扉が勢いよく開く。
そこからは一組の男女が入ってきた。
「待ってくれ!瑠璃!」
男が先に入ってきた女の子を呼び止める。
彼女は振り返らず足をゆっくり止める。
「瑠璃……」
男はゆっくり彼女に近づく。
「来ないで!」
女の子は大きく叫ぶ。
男はそれに反応して止まる。
「……分かってくれないか?」
「……無理だよ……」
彼女は振り返ることもなく答える。
「俺だって瑠璃は大切だ。でも……」
彼は言い淀みながら告げる。
「瑠璃は大切な妹だから…」
彼は切実そうに訴えた。
「お兄ちゃんは私が好きじゃないの?」
「好きだよ…ただ、好きの種類が違う…それだけだよ」
「お姉ちゃんは違うの?だから付き合ったの?……」
「ああ」
女の子の表情は分からない。
でもその背中からは何物にも耐えかねないつらさが垣間見えていた。
「だから瑠璃……」
「嫌!どっか行って!」
拒絶の言葉。
それが男の胸を男を刺す。
「分かった……」
男は頭を冷やす期間が必要だと判断したのかもしれない。
おとなしく引き下がり屋上から去っていく。
女の子と僕たちは取り残された。
さて、この状況の始末どうとってくれるんだよ……
非常に気まずい。
「佐藤君、佐藤君」
彼女が耳に顔を寄せて話してくる。
「声かけなよ」
「え!?なんで僕?」
「男の子でしょ?頑張って、君ならきっとできるよ!」
男以上に食べるくせにこんな時だけは男を立てるな!
僕は仕方なく声をかける。
「あ、あのー大丈夫?」
「……はい……大丈夫です…」
女の子の返事は弱々しく。
嘘なのが分かる。
僕はない頭で必死に考えた。
そしてたどり着いた。
「これいる?」
飴ちゃんを差し出す。
(まさかこれを出すことになるとは……)
対三枝さんようの緊急お菓子。名付けてさえ菓子。
こんなとこで活躍するなんてね。
「!?」
何が彼女の地雷を踏みぬいたのかは不明だが確かに強く反応する。
次の瞬間勢いよく飴ごと手を握られる。
「私をもらってください!」
「へ?」
それが一ノ瀬瑠璃との出会いだった。
そして彼女との出来事の始まりだった。
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